[R18]空き缶太郎のBL短編集 1冊目

空き缶太郎

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俺のNTR対策/幼なじみ+バイト先輩×おつむよわよわ大学生/総受け

2

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「……どうしてこうなった」


翌日。
俺は大学のカフェテリアで課題を進めながらもスマホ片手に項垂れていた。

事の発端は昨夜。
バイト先での犬飼先輩のあの提案だ。


『じゃあさ、おれと付き合ってみる?』

『……はぁ!?き、急に何を……』

『だからだよ!その幼なじみ君を打倒するための!…彼女じゃなくて彼氏なら、寝取るのを諦めるんじゃないかな?』

『り、理屈は分からないでも無いですけど…でも俺…』

『大丈夫大丈夫、ただのフリだから。…あ、でも怪しまれたらアウトだから、幼なじみ君に余計なこと言わないようにね』

『はぁ……』


……とまぁ、そんな具合で丸め込まれた俺は犬飼先輩と恋人関係(偽)になる事になった。

犬飼先輩は日頃からバイセクシャル…つまり男も女もOKであることを公言してる人だから、並の人よりこういう事に詳しいとは思ってた。

でもまさかこんな作戦を提案してくるとは思いもよらなかったよ…


(でも万一…アイツが先輩と同じ、男もイケるタイプだったら…)

ふと脳裏を過ったのはあのクソ幼なじみ…悠に寄り添う犬飼先輩。
過去のと同じように頬を染めて先輩は……

『雅人、ごめん。俺…やっぱり寝取られちゃった…♡』

「……いやぁ、無いわ」
「何がだ?」
「っ!?!?!?」

ーーガタガタッ

独り言を呟いた瞬間、背後から掛けられた声に驚き思わず立ち上がる。

バクバクと鼓動する胸を抑えながら振り向けば…そこには今最も会いたくなかったアイツ。

俺の幼なじみ、外面だけはいい寝取り性癖のヤリチンクソ野郎…佐々葉 悠だった。

「ゆ、ゆゆゆ悠!?な、なんでここに……」
「いや、ここ大学のカフェテリアだし。お前とは学科が違うとはいえ、俺もここの学生なんだから居てもおかしくないだろ」
「ぐぬぬ」

遅めの昼食なのかパスタ皿の乗ったトレイを持ち、俺の事を可哀想な目で見つめる悠。
そんな表情の幼なじみに俺は過去の恨み辛みがじわじわと蘇り、半ば八つ当たりのようにそっぽを向いた。

「…ふふっ、相変わらず面白い反応だな」
「こっちは大っ嫌いな奴が目の前に居るせいで1ミリも面白くないけどな!」

…俺のことなんか放っておいてくれればいいのに。

コイツは何度人の彼女を寝取っても、素知らぬ顔で俺の前に現れる。
それが俺にとってはたまらなく嫌だった。

「そういうなって。幼なじみだろ?」

ーーカタンっ

「幼なじみってそんな万能ワードじゃ……って、ちゃっかり同じテーブルに座ろうとするなよ!」

俺の座っていたテーブル、その向かい側トレイを置く悠を思わず怒鳴りつける。
が、当の悠本人は俺の言葉なんか聞こえてないかのようにお冷を飲んでいた。

「俺がどこ座ろうと勝手だろ?」
「くっ……てかお前、(先月俺から奪った)夏海ちゃんはどうしたんだよ。付き合ってるなら彼女と飯食えば……」
「ナツミ?…あぁ。あの子ならもう別れた」
「はぁ!?」

あっけらかんと放たれた言葉に俺は絶句する。

俺から告白するまでに1ヶ月、付き合ってから3ヶ月愛を育んできた、ポニテが可愛い夏海ちゃん。
それをこのクソ野郎は…ほんの数週間で寝取り、その後1ヶ月も経たずに捨てたということになる。

「こ、この…クソヤリチン…!」
「失礼な。ちゃんと円満に別れたぞ?」
「信じられるかっ!」

もうやだ!!
世の女の子達のためにもコイツ死ねばいいのに!!

俺は若干涙目になりながら、テーブルに広げていた教科書を片付け始め……


ーーぴろりんっ

「ん?」

不意にテーブルに置いていた携帯から通知音が鳴る。
ふと画面を見れば、それは犬飼先輩からのメッセージで…


『来週予定空いてる?デート行かない?』

「っー!!」

画面に表示されたメッセージを見た瞬間、俺は過去類を見ない速さで携帯を掴むと、速攻でポケットに突っ込んだ。

「…?おい。今…」
「お、お前がここで飯食うなら俺が他所に行くから!」
「雅人、待っ…!」
「もう声かけてくんなよ!!」

そして俺は課題や教科書を抱えてカフェテリアからダッシュで逃げ出す。

(犬飼先輩、メッセージのタイミング悪すぎ!)

そんな届かぬ悪態をつきながら、俺はとにかくこの場を離れるべく足を動かし続けたのであった。



……………………………


……………………………………



「……雅人…」

消え入るような声で走り去ってしまった幼馴染を呼び、悠は大きなため息を吐く。

(…一瞬だけ見えた。あれは…デートを誘う文面だった)

雅人の携帯に映った通知。
悠には一瞬しか見えなかったが、その内容の把握は出来ていたようだ。

(差出人の名前までは見えなかったが…相手は誰だ?いや、それ以前にそもそもペースが早すぎる)

悠の経験則では、雅人の恋人を寝取ってからまた新たな彼女が出来るまで最低でも一年以上は空くはずだった。

しかし…あの文面と雅人の反応から判断するに、何かイレギュラーが発生したことは容易に想像出来た。

ーーギリィ

「くそっ…俺が何のためにと…!」

思わずが溢れそうになり悠は慌てて口をつむぐ。

…だが幸いカフェテリアは人が少なく、悠の怒りに満ちた声を聞いたものは居ないようだった。

悠は一旦深呼吸すると冷めきってしまったパスタを口にする。

(……俺は子供の頃からずっとアイツの、雅人の傍に居たんだ。何処の誰だか知らないが…絶対に、渡しはしない)

雅人に恋人が出来る度にその本気を確かめるようにちょっかいをかけてきた悠。
しかしその実態は…悠が少し声をかければ簡単に乗り換える女ばかり。

それを何度か繰り返すうちに、いつしか悠にはある想いが芽生えていた。


『俺は絶対に雅人を捨てない』

『俺が一番雅人を幸せにしてやれる』


…その想いは独善と自惚れ。

だが悠はそれを信じて疑わず、雅人がいつか自分の方を向いてくれるその時まで…その隣に立つ女達を排除するつもりでいた。


(ひとまず、大学の中から探りを入れてみるか……)


悠はカフェテリアの窓から酷く冷たい視線を外に向けつつも、嫌な胸騒ぎに不快な思いを拭えないでいた。



 
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