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第二部/1組目・淫魔殺しの聖職者
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しおりを挟むーーー1部屋目ーーー
ダンジョン入口の転移魔法陣により1部屋目へと飛ばされたフロイド。
しかし特に驚く事もなく冷静にダンジョンへ足を踏み入れた彼を最初に襲ったのは……天井から降り注ぐ、色とりどりで大量のスライム達だった。
(初手で奇襲か。…なるほど。並大抵の冒険者であればこれは回避し切れぬだろう)
『だが、手緩い』
声には出さず、口だけを動かすとフロイドは深呼吸をしながら拳を握る。
そして……
「…………フンっ!!」
ーーゴォッ!!
『ぴぎっ…!?』
ほんの一瞬。
フロイドが呼気を吐き出した瞬間、その全身から魔力で構成された『衝撃波』が放たれる。
全方位目掛けて放たれたその衝撃波は降り注ぐスライム達を全て吹き飛ばし…それこそ体液の1滴にも触れることなく、スライム達の奇襲を完全に無効化させた。
べちっ
『むいっ!』
『う、うにょーん…』
ダンジョンの壁に打ち付けられ何やら情けない鳴き声を放つスライム達。
何匹かはフロイドの放った衝撃波で絶命してしまったようだが、まだ八割近くのスライムが生き残っている。
知能の低いスライム達はそれでも『同時に襲いかかれば』とフロイドに果敢に襲いかかろうとした。
が……
ーーパァンっ!
次の瞬間にはフロイドの拳がスライムの体を貫き、割れた風船のような音を立てながらその柔らかな粘液の体を弾けさせる。
その拳は魔力のベールで覆われており、フロイドはスライム達の粘液に触れることなく一匹、また一匹と的確にスライム達を排除していった。
ヒュッ パァンっ!
「これで…最後だ!」
『ぷぎぃー!』
そしてフロイドがダンジョンに入ってからおよそ8分。
優に10匹以上は居たスライム達は見事に全滅し、フロイドは軽く息を吐いてカソックの乱れを整えていた。
「…ふん、この程度か」
無傷で1部屋目を攻略したフロイドは、そのまま淡く輝く魔法陣へと歩を進める。
……過去類を見ない圧倒的なフロイドの強さ。
その様子をモニタリングしていたダンテとキールはそれぞれ違った反応を見せていた。
「ふむ…最初の衝撃波、あれは敢えて威力を下げることで魔力の浪費を防いでいたようだな。そしてそこからの流れるような連撃…素晴らしい」
「れ、冷静に観察してる場合じゃないですよぉ~!」
1部屋目のトラップ、『スライムシャワー』が完全な不発に終わったことに焦るキールとは違い、ダンテは何処か楽しそうですらあった。
「ほら見ろキール、2部屋目はトラップルームだぞ」
「トラップか…それなら1つぐらいは……あ」
画面越しに2部屋目に入ったフロイドを観察していた2人。
しかし……
ーーシュルルッ!
『遅い!』
スパァンっ!
フロイドは壁から現れた触手を全て拳で打ち払い、
ーーガコンっ
『とぅっ!』
スライムプールの落とし穴を飛び越え、
ーーキィンッ
『っ!解呪!!』
更には強力な呪いであるはずの淫紋トラップも、解呪魔法で即座に跳ね返してしまった。
……罠を回避するのではなく実力で突破するその姿はまさに良く言えば勇猛、悪く言えばゴリ押し。
終始そのような流れでフロイドはどんどんダンジョンの奥へと進み、過去最高記録である5部屋目も軽々と突破していった。
「…多少は消耗しているようだが、それでもこの勢いだと踏破してしまいそうだな」
「ダンテさま…ほ、本当にテコ入れしないんですか?」
「むぅ…そろそろ1組位は踏破者を出してもいいとは思っていたが……」
早くも7部屋目に到達したフロイドの姿を一瞥し、ダンテはぽつりと呟く。
「……あれだけの力の持ち主をこのまま返すのは惜しいな」
フロイド程の実力者であれば、きっとこれまでで最上の精力を搾り取れるだろう。
そう判断したダンテは最初の決定を翻し、対フロイド用にテコ入れする事を決める。
「キール、あいつを呼べ。最後の部屋に控えさせる」
「えぇ!ほ、本気ですか?だって、淫魔殺し相手に淫魔をぶつけるなんて………」
主の命令にまだ不安げなキール。
しかしダンテは僅かに口角を上げると、画面の向こうで戦い続けるフロイドを見つめ……
「それでダメならこちらの完全敗北で構わない。……『淫魔殺しの聖職者 対 聖職者殺しの淫魔』、とても興味深いな」
珍しく、やる気に満ちた表情を見せるのであった。
ーー1~8部屋目 突破ーー
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フロイド 人間・ウォーリアモンク
Lv.72 性別:男 年齢:36
HP:599/690
MP:185/240
状態:精神デバフ無効、HPMP自然回復、
悪魔特攻、淫魔超特攻
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