46 / 59
第二部/3組目・英雄の子孫と獣人兄弟
1
しおりを挟む※3P、主従逆転、無理矢理、性悪受けなどの要素が含まれます。
苦手な方はご注意ください。
ーーブラスレッタの街・冒険者ギルド。
数日前に発せられた王からのお触れにより、ブラスレッタの冒険者ギルドはいつもの数倍賑わっていた。
『なぁなぁ、報奨貰えたら何にするんだ?』
『そりゃお前、一生遊んで暮らせる金と美人の奥さんをだな……』
『報奨で奥さんってどうなんだよ。…ってかそれより、異変ってなんだろうな?』
そんなくだらない会話が飛び交うギルド内部で、賑わう冒険者達を不機嫌そうに見つめる『身なりの良い魔法使い』がいた。
「くそっ、こんな凡俗共が群れるような低俗な場所…」
身を包む上質な防具とは正反対にその手に『古びた木の杖』を携えた魔法使いはまだ年若く、10代中頃を越えたばかりだろうか。
彼は苛立ちを隠すこともなく舌打ちをし、蔑むような目でギルドに集う冒険者達を一瞥する。
そんな彼の隣ではやや暗い顔をした茶色い毛並みの獣人が、ギルドの奥…カウンターの前に立つ同じ毛色の獣人を見つめていた。
「……おいリュンヌ。僕は先に宿に戻るぞ。こんなむさ苦しい場所、『英雄の子孫』たる僕には相応しくない」
しばらく待っていたのか、魔法使いの青年は痺れを切らしたように踵を返そうとする。
しかし隣にいた獣人の男は慌ててそれを引き止めた。
「エリックさま。どうか今暫しお待ちを。ソレイユもすぐに戻ってきますので…」
「煩い!獣人の分際で、僕に指図を……!」
獣人の男…リュンヌに引き止められたことに激昂し、思わず声を荒らげてしまう魔法使い…エリック。
その喧騒はギルド内に響き渡り、先程まで賑わっていた冒険者達も思わずそちらに注目してしまう。
『どうした?喧嘩か?』
『ん?あの服装、まさか貴族……』
『馬鹿言え、お貴族様がこんな所に……いや、あの杖、まさか…』
野次馬達の視線は2人から次第にエリック1人へと集中し、やがてエリックの携えた『杖』へと向かう。
見た目だけは何の変哲もない古ぼけた木の杖。
しかしその風貌は冒険者であれば誰もが知る『とある英雄の持ち物』で……
『……あ、あんた…まさか…あの英雄ルーヴェンの血筋の者かい…?』
震えるような声色で放たれた問いに、エリック……エリック・フォン・ルーヴェンは得意げな笑みを浮かべた。
「…その通り」
ーーコンッ
わざと音が鳴るようにエリックは杖の先で地面を小突く。
するとその動作に呼応するかのように杖から淡い光が放たれ、まるで後光のようにエリックの体を光り輝くものに見せた。
「かつて人の身でありながら『賢者』へと至り、時の王から爵位を賜った英雄、エルロンド・ルーヴェン。…僕はその正当な後継者であり次代の英雄。エリック・フォン・ルーヴェンだ!」
……その名乗りの通り、『英雄ルーヴェン』はエリックの祖先にあたる実在の英雄だ。
かつて『世界樹の枝』と呼ばれる杖を振るい、この国を襲った大災害を魔法で食い止め、その功績として当時の王から貴族の位を賜ったと言われている。
それ以外にも英雄ルーヴェンの逸話は数多あるのだが……今重要なのは『何故貴族でもあるエリックがわざわざ冒険者ギルドに来ているのか』という問題だろう。
その理由を知る数少ない人物…エリックの従者である狼の獣人・ソレイユとリュンヌは野次馬に囲まれ上機嫌の主君を少し離れた箇所から見つめていた。
「騒がしいと思ったら……リュンヌ、これは?」
「いつものだよ。何も知らない冒険者達にチヤホヤされて喜んでるのさ」
主君であるエリックを嘲るかのような言葉だが、それをソレイユが咎めるようなことはない。
「…それより、『この街の異変』について何か分かった?」
「そうだな…水玉模様の牛とか磁石がくっつく爺さんとか興味深い話はたくさんあったが…1番それらしいのはこれだな」
ピラッ
群衆にちやほやされるエリックをよそにソレイユが取り出したのは『とあるダンジョン』について書かれた紙。
「数ヶ月前に突然現れたダンジョンらしいが…まだ誰一人として踏破出来ていないんだとさ」
「確かに怪しいね……それに未踏のダンジョンを制覇出来たら、お触れなんて関係なしに落ちぶれた貴族も一発で名を挙げられそうだ」
『落ちぶれた貴族』
その言葉にソレイユとリュンヌの双子は嫌そうな顔で主君…エリックを一瞥する。
かつての英雄、エルロンド・ルーヴェンの功績により立ち上げられた貴族としてのルーヴェン家。
しかしその子孫達にこれといった功績がなく、貴族達の中で段々とその地位を落としていた。
…エリックが王のお触れを受けてこの街にやってきたのもそこに起因する。
お触れ通りにこの街の異変を解決し、報奨として『貴族としての地位』を確固たるものにする事がエリックの目的だった。
「ふふん。この杖こそがかの世界樹の枝で………ん?おい、どうした2人とも」
杖片手に気取った態度をとるエリックだが、従者達の視線に気付いたのか不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。
「失礼しました。…ソレイユが幾つか情報を得ましたので、1度宿の方で……」
「そうか、分かった。…では諸君。この僕が『異変』を解決するのを、指をくわえて待っているといい」
そうして群衆に軽く手を振ると、エリックは双子を伴って街の高級宿へと向かうのであった。
…………
ーーブラスレッタ・高級宿。
エリック一行が滞在する宿は普通の冒険者では到底手の届かない高級な宿だ。
そしてその中でも一際広い一室で彼らは情報共有……ではなく、折檻が行われていた。
ーーバチィッ!
「っ、ぐぁあっ!!」
上半身の服を脱がされたソレイユが苦痛に声を荒らげながら宿の床に転がる。
エリックは椅子に座ったまま『それ』を冷たい目で見下ろしていた。
「え、りっく…さま…」
「人が多かったとはいえ、あんな場所で僕を待たせるなんていい度胸してるじゃないか。犬コロのくせに」
蔑むような言葉と共に手にした杖の先でソレイユの胸に刻まれた『刺青』をなぞる。
…この刺青は『隷属の呪印』。
ソレイユとリュンヌの双子がエリックに従う奴隷である事を意味する証であると共に、反抗を許さぬ為の呪いでもあった。
「はぁ…はぁ…も、もうしわけ、ございませ、っ…ぅあぁ!」
ーーバチィッ!
杖越しに刺青へと魔力を流せば、ソレイユの体を激痛が襲う。
それをリュンヌは黙って見守ることしか出来ず、エリックの背後で唇を噛み締めていた。
「全く、出来の悪い『奴隷』を持つと苦労するよ。…外では一応『従者』ってことにしなきゃいけないのも気に食わないね」
「……っ…」
思わず反発しそうになるソレイユ。
しかしそれをギリギリの所で我慢し、床に額を擦り付けるようにして頭を下げた。
「……薄汚い、畜生の分際で…ご主人様に、ご迷惑をおかけしてしまい…もうしわけ、ございません…でした…」
「………ま、ちゃんと身の程を理解してるようだから今日はここで止めておくよ。僕もそこまで暇じゃないし」
自分より体格のいいソレイユが土下座する姿に気を良くしたのか、エリックは杖の矛先を背けてゆっくりと席を立った。
「じゃあ明日も早いし、僕は休むよ。…リュンヌ、後片付けよろしく」
「……かしこまりました」
背を向けるエリックに深々と頭を下げるリュンヌ。
やがて寝室の扉がぱたんと閉まると、すぐにソレイユの元へと駆け寄った。
「ソレイユ…!」
「っ、はぁ…あの、クソガキ…容赦なく痛めつけやがって…」
怪我はないが痛みの余韻は残っているらしく、ソレイユはなんとか体を起こして立ち上がる。
「…俺たちのことを玩具みたいに扱いやがって…この呪印さえなけりゃ、あんな奴……」
「……ソレイユ」
悔しそうに寝室の扉を睨みつける兄に、リュンヌは悲しそうに目を伏せる。
「…とりあえず、今日は休もう?明日は例のダンジョンに潜る予定だから少しでも体力を回復させておかないと」
「………あぁ…そう、だな…」
2人はその胸に呪いの印と怒りの炎を抱えたまま、高級宿の床で身を寄せ合うようにして休息をとる。
そして翌日…英雄の子孫は2人の従者を連れて、ブラスレッタの街道からほど近い『謎のダンジョン』へと足を踏み入れるのであった。
----------------------------
エリック 人間・魔道士
Lv.48 性別:男 年齢:17
HP:198/198
MP:200/200
絶頂回数:0
感度:等倍
状態:[処女]、[非童貞]
----------------------------
----------------------------
ソレイユ 獣人(狼)・双剣士
Lv.38 性別:男 年齢:26
HP:275/275
MP:82/82
絶頂回数:0
感度:等倍
状態:[処女]、[童貞]、隷属の呪
----------------------------
兄。少し荒っぽい口調。
----------------------------
リュンヌ 獣人(狼)・軽戦士
Lv.38 性別:男 年齢:26
HP:310/310
MP:51/51
絶頂回数:0
感度:等倍
状態:[処女]、[童貞]、隷属の呪
----------------------------
弟。少し穏やかな口調。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる