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第二部/3組目・英雄の子孫と獣人兄弟
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しおりを挟む……2部屋目突破の1時間ほど前。
ソレイユとリュンヌの双子は、エリックの『命令』により部屋の端での待機を命じられ移動をしていた。
「……ソレイユ。アイツが僕らを部屋の隅に追いやったってことは…」
「あぁ。多分、本気であの指示通りにするつもりだろうな。…あのクソガキが1人でマスかいてイク無様な姿、見てやりたかったぜ」
エリックが遠ざかったからと嘲笑うソレイユ。
しかしそれに対しリュンヌは大きなため息をついた。
「はぁ…それより心配なのは『ペナルティ』の方だよ。一応このダンジョンでの死者は確認されてないって話ではあるけど…それでも何が起こるか…」
「少なくとも死にはしないんだろ?…それならなんとかなる。あとは…」
と、ソレイユが話している途中、2人の足が同時に止まった。
そして『命令』の効力は移動の次の行程へと移る。
「っと、『目と耳を塞いでろ』だったか…厄介な」
頭に付いた狼の耳は下を向き、その手は顔の横に付いた人の耳を塞ぐ。
(あのクソガキが早漏で、すぐに終わってくれると助かるんだがな……)
そんなことを考えながら、ソレイユとリュンヌの瞼は強制的に閉じられるのであった。
…………
………………
ーーパキンッ
(ん?)
体感にして数十分。
閉じていた耳にも聞こえた小さな音と、体の内側から感じた『違和感』にソレイユは目を開けた。
「…動ける…?」
「命令が終わった、のかな…?」
どうやらリュンヌも同じ状況らしく、困惑したようにソレイユと顔を合わせる。
「部屋の仕掛けが作動した、ってことか?ペナルティは?」
「分からない。今のところ体がやけに軽いこと以外には異変は………」
と、自分の持ち物や体を調べていたリュンヌはある一点を見つめてゴクリと息を飲む。
「リュンヌ?」
「……ソレイユ。胸元、確認してみて」
「は?」
真剣な表情をしたリュンヌに押され、ソレイユは渋々ながらも鎧の留め金を緩め、服の裾を引っ張り胸元を覗き込む。
するとそこには……
「……呪印が、ない…?」
その胸元からは…あの忌々しい『隷属の呪印』が、忽然と消え失せていた。
「ど、どういう事だ!?あの呪印が無くなるなんて…アレを消すには、高位の聖職者に高い金積んで解呪してもらわないとダメなんじゃなかったか?」
「俺に言われても分からないよ……考えられるとしたら、例の『ペナルティ』だけど……」
しかしこれではペナルティどころか『神の祝福』だとリュンヌは頭を抱える。
「他に何か異変があれば推測も出来るんだけど……あ!」
この異変の詳細を確かめようと身の回りを調べていたリュンヌが声を上げる。
その手に握られていたのは、僅かながらも護りの魔法が掛けられている愛用の盾だ。
「リュンヌ?」
「……『鑑定』…うん、間違いない」
自らの装備を鑑定したリュンヌは確信したように大きく頷く。
「分かったのか?」
「おそらくだけど…この『ペナルティ』は、『魔法の効果を良いもの悪いもの問わず全て無効化する』って事だと思う」
それなりの冒険者であれば、効果の差はあれど魔法が付与された装備…付加効果装備を持つのは当たり前のこと。
だがその全てが無効化されたとするなら…これ以上のペナルティは無いだろう。
「なるほど。呪印…呪いもある種の魔法だから無効化されたってことか」
あくまでもリュンヌの仮説ではあるが、おそらく間違いないだろうとソレイユは判断した。
(あの忌々しい呪印が無くなったなら…あとは……)
脳裏をよぎるのは『エリックへの復讐』。
奴隷として買われた時から十数年、手酷い扱いを受け続けてきた怒りや恨みはつもりにつもっている。
「……ソレイユ。気持ちは分かるけど、急に動くことは……」
「分かってる。……今はまだ、奴隷のフリをしてやるさ」
『だが時が来ればその時には……』
双子の狼は互いに視線を合わせると、『エリックの奴隷』として主の元へと向かうのであった。
………
…………
………………
ーーー3部屋目ーーー
『絶頂しないと出られない部屋』を突破した3人は、次の部屋で『宝箱』と対峙していた。
「あからさまに怪しいな…」
狭い部屋の中央にこれみよがしに置かれた宝箱。
誰が見てもトラップを疑うだろう。
もちろんエリックも罠を疑い、ソレイユに調べるよう命令する。
「ソレイユ、それを調べろ。ミミックなら即焼き払う」
「…かしこまりました」
ソレイユは足元にも注意しながら宝箱へと歩み寄り、『罠探知』で宝箱を調べる。
だがその頭の中はエリックへの復讐方法でいっぱいだった。
(あれでも貴族だ。殺すのだけは不味い。…1番有効なのは、アイツのプライドをへし折る事だが……)
ーーカチャッ
幸いにも仕掛けられていた罠はさしたる難度でもなく、ソレイユはそれを片手間に解除してしまう。
そして宝箱の蓋をゆっくりと開き、中から取り出したのは……金属の鎖で造られた美しい『チョーカー』だった。
「…アクセサリーのようです。他には何も入ってません」
「リュンヌ、鑑定しろ」
「はい、エリック様」
次にリュンヌがソレイユからチョーカーを受け取り『鑑定』を行う。
そのチョーカーを調べた瞬間リュンヌは僅かに目を見開いたが、すぐに表情を元のそれに戻してしまった。
「これは…ミスリルの鎖で出来たチョーカーのようです。何やら付加効果も付いているようですが…俺の『鑑定』ではその効果までは分かりかねます」
「チッ、役立たずめ…それはお前が持っていろ。帰ったら折檻だからな!」
「…申し訳ございません」
不機嫌そうに舌打ちをするエリックに深々と頭を下げるリュンヌだが、その表情は『主人』を嘲るように笑っていた。
(このチョーカーは…復讐の決め手になる)
実は『鑑定』によりこのチョーカーの真の効果を把握していたリュンヌ。
しかし呪印が消失したのを良い事に、エリックには嘘をついていた。
そしてエリックが背を向けたのを確認するとすぐにソレイユを手招きし、耳打ちで『チョーカーの真の効果』を共有する。
このチョーカーの正式名称は『服従の鎖』。
その名前から推察される通り、これを他者から装着させられるとその人物に逆らえなくなる…つまり、『隷属の呪印』と同じ効果を発揮する。
まさに2人の復讐にはおあつらえ向きなアイテムだった。
(問題はタイミングだな。俺たちの呪印が消えた事を悟られる前に決着をつけないと……)
(あれでも魔法の実力だけは本物だから、どこかで隙を見て…俺たち2人の手でこのチョーカーを……)
先を行くエリックの背中を見つめ、2人は復讐の機会を伺うのであった。
ーー3部屋目 宝箱部屋 突破ーー
----------------------------
エリック 人間・魔道士
Lv.48 性別:男 年齢:17
HP:172/198
MP:60/200
絶頂回数:射精1回、尻穴1回
感度:等倍
状態:[処女]、[非童貞]、触手寄生(MPドレイン)
----------------------------
----------------------------
ソレイユ 獣人(狼)・双剣士
Lv.38 性別:男 年齢:26
HP:223/275
MP:65/82
絶頂回数:0
感度:等倍
状態:[処女]、[童貞]
----------------------------
『隷属の呪印』消失
----------------------------
リュンヌ 獣人(狼)・軽戦士
Lv.38 性別:男 年齢:26
HP:251/310
MP:40/51
絶頂回数:0
感度:等倍
状態:[処女]、[童貞]、火傷(軽)
----------------------------
『隷属の呪印』消失
余談
この世界の獣人は人の耳とケモ耳で合計4つの耳を持ちます。
人が聞ける音域は人の耳で、それ以外の音はケモ耳で聞き分けています。
余談2
2部屋目のペナルティは『バフデバフ関わらず魔法の効果を全て解除する』というもの。
これにかかれば隷属の呪印も淫紋も死の呪いも綺麗さっぱり消え去ると同時に、多大な魔力を秘めた杖はただの棒に、伝説の聖剣はただの剣になります。
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