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どうして別れたんですか?
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遠坂くんは、私の一挙手一投足を逃さまいとするかのように、まばたきもせず私を見つめていた。
大きめの目だから気づかなかったけど、意外と切れ長なんだって、そんなことが気になった。
改めて考えることでもないが、遠坂くんはカッコいい。順調に出世していく素質の持ち主だし、頑張って今の立場を保持している私を優に超えていくだろう。
結婚相手として考えるには十分すぎるぐらいの人だ。
「いたら、あきらめるの?」
どこか他人事のように尋ねた。
遠坂くんは困って眉を寄せる。
「それはわかりません。潔くなくて、すみません」
頭を下げる彼を見ながら、ワインを飲み進める。
瑛士のことを話してしまおうか。
そう思う反面、話してどうするのか、という気持ちも生まれている。
うまく考えがまとまらず、頭が働かない。飲み慣れないワインなんて飲んだからかも、と後悔し始める。
「先輩?」
ぼんやりしていたのだろう。遠坂くんが心配そうに私に呼びかける。
「疲れてますよね」
「ごめんね。ぼーっとしちゃって。話そうか迷ってて」
「話してください。もしかしたら何か変わるかもしれませんし」
背中を押された気がして、深い決意もなく口を開く。
「好きな人は、いるの」
そんなこと言って何になるの? って思いながら、私は続ける。
「高校生のときにちょっとだけ付き合ってた人で、この間ね、再会したの」
彼は眉をひそめたまま私の話に耳を傾けている。
「でも、なんでもないの。再会して、やっぱり好きな雰囲気の人だなって思って。あこがれてるっていうのかな。現実味のない恋なの」
「なんか、すみません」
「あやまらなくていいの。聞きたくなかったよね」
「そんなことはないです。花野井先輩のこと、綺麗って言ったけど、恋愛してない人だなんて思ってるわけじゃないですから」
遠坂くんの中の私に対するイメージが壊れたんじゃないかって心配したことも、彼はフォローしてくれる。
「きっとね、彼のことはずっと忘れられないと思うの」
そのぐらい、私にとって瑛士は大切な存在だった。
「好きでいるだけじゃ、つらくないですか」
「遠坂くんにそういう気持ちさせてる?」
「俺は違います。先輩を好きでいることで保ってることもありますから」
「だったら、私も同じ」
どのぐらい瑛士が大切なのか、説明する必要も、理解してもらう必要もないんだって思う。
「彼のことしか興味ないままこの年になっちゃったから、今さら学生の時みたいな恋はできないの」
「うらやましいですね、なんか。先輩にそんなに思われてるなんて」
「好きな人っていうより、大切な人かも。きっとずっと、大切な人」
「じゃあ、完敗だ。先輩、恋も結婚もする気ないですよね」
遠坂くんは苦笑いする。
私がずっと恋愛から遠ざかっていた理由を、納得してくれたみたい。
私の初恋は叶って、終わって、最後の恋になったんだって。きっとわかってくれた。
「ずっと仕事が楽しくて、やりがいもあったから」
「俺は結構、必死です」
「それは私もそう」
「これからも先輩は、仕事を頑張っていきたいんですね」
それは正しいけど、正解ではない。
腕時計で時間を確認した遠坂くんが、そわそわと身じろぎする。もう帰りたいのだろう。
「ねぇ、遠坂くん」
腰を浮かしかけた彼に、思い切って言う。
「私ね、結婚したいなって。結婚、考えようかなって思ってるの」
「先輩……」
「ごめんね。席立とうとしたのに」
「すみません。俺、冷静にならなきゃって思って」
ずっと冷静そうに見えたのに、意外で驚く。
「行って」
うながすと、彼はもう一度「すみません」と言って席を外した。
恋より先に結婚を選択するなんて、きっと変。だけど、それが正直な気持ちだった。
瑛士より好きになれる人に出会えるとは思ってない。でも、結婚したいと願うなら、結婚してもいいかなって思える人を探すしかなくて。
「虫のいい話」
ぽつり、とつぶやいて、夜景に視線をずらす。ロマンチックな光景を目にしても、どこか盛り上がれない心が、恋のできない私を投影している。
どっと疲れが押し寄せてくる。
遠坂くんの好意に甘えて、自分の弱さを彼で補おうとした自分が恥ずかしくて、ため息が出た。
大きめの目だから気づかなかったけど、意外と切れ長なんだって、そんなことが気になった。
改めて考えることでもないが、遠坂くんはカッコいい。順調に出世していく素質の持ち主だし、頑張って今の立場を保持している私を優に超えていくだろう。
結婚相手として考えるには十分すぎるぐらいの人だ。
「いたら、あきらめるの?」
どこか他人事のように尋ねた。
遠坂くんは困って眉を寄せる。
「それはわかりません。潔くなくて、すみません」
頭を下げる彼を見ながら、ワインを飲み進める。
瑛士のことを話してしまおうか。
そう思う反面、話してどうするのか、という気持ちも生まれている。
うまく考えがまとまらず、頭が働かない。飲み慣れないワインなんて飲んだからかも、と後悔し始める。
「先輩?」
ぼんやりしていたのだろう。遠坂くんが心配そうに私に呼びかける。
「疲れてますよね」
「ごめんね。ぼーっとしちゃって。話そうか迷ってて」
「話してください。もしかしたら何か変わるかもしれませんし」
背中を押された気がして、深い決意もなく口を開く。
「好きな人は、いるの」
そんなこと言って何になるの? って思いながら、私は続ける。
「高校生のときにちょっとだけ付き合ってた人で、この間ね、再会したの」
彼は眉をひそめたまま私の話に耳を傾けている。
「でも、なんでもないの。再会して、やっぱり好きな雰囲気の人だなって思って。あこがれてるっていうのかな。現実味のない恋なの」
「なんか、すみません」
「あやまらなくていいの。聞きたくなかったよね」
「そんなことはないです。花野井先輩のこと、綺麗って言ったけど、恋愛してない人だなんて思ってるわけじゃないですから」
遠坂くんの中の私に対するイメージが壊れたんじゃないかって心配したことも、彼はフォローしてくれる。
「きっとね、彼のことはずっと忘れられないと思うの」
そのぐらい、私にとって瑛士は大切な存在だった。
「好きでいるだけじゃ、つらくないですか」
「遠坂くんにそういう気持ちさせてる?」
「俺は違います。先輩を好きでいることで保ってることもありますから」
「だったら、私も同じ」
どのぐらい瑛士が大切なのか、説明する必要も、理解してもらう必要もないんだって思う。
「彼のことしか興味ないままこの年になっちゃったから、今さら学生の時みたいな恋はできないの」
「うらやましいですね、なんか。先輩にそんなに思われてるなんて」
「好きな人っていうより、大切な人かも。きっとずっと、大切な人」
「じゃあ、完敗だ。先輩、恋も結婚もする気ないですよね」
遠坂くんは苦笑いする。
私がずっと恋愛から遠ざかっていた理由を、納得してくれたみたい。
私の初恋は叶って、終わって、最後の恋になったんだって。きっとわかってくれた。
「ずっと仕事が楽しくて、やりがいもあったから」
「俺は結構、必死です」
「それは私もそう」
「これからも先輩は、仕事を頑張っていきたいんですね」
それは正しいけど、正解ではない。
腕時計で時間を確認した遠坂くんが、そわそわと身じろぎする。もう帰りたいのだろう。
「ねぇ、遠坂くん」
腰を浮かしかけた彼に、思い切って言う。
「私ね、結婚したいなって。結婚、考えようかなって思ってるの」
「先輩……」
「ごめんね。席立とうとしたのに」
「すみません。俺、冷静にならなきゃって思って」
ずっと冷静そうに見えたのに、意外で驚く。
「行って」
うながすと、彼はもう一度「すみません」と言って席を外した。
恋より先に結婚を選択するなんて、きっと変。だけど、それが正直な気持ちだった。
瑛士より好きになれる人に出会えるとは思ってない。でも、結婚したいと願うなら、結婚してもいいかなって思える人を探すしかなくて。
「虫のいい話」
ぽつり、とつぶやいて、夜景に視線をずらす。ロマンチックな光景を目にしても、どこか盛り上がれない心が、恋のできない私を投影している。
どっと疲れが押し寄せてくる。
遠坂くんの好意に甘えて、自分の弱さを彼で補おうとした自分が恥ずかしくて、ため息が出た。
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