君の世界は森で華やぐ

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君の世界は森で華やぐ 〜2〜

空の秘密 1

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***


「寛人さん、お昼食べましょう? ……何、書いてるの?」

 昼食の用意ができたからと、寛人さんを呼びに部屋へ行くと、彼は机に向かって下書きをしているところだった。

 後ろから、ひょこっとのぞき込むと、彼はくるりとスケッチブックをひっくり返し、私を仰ぎ見る。

「まだ完成じゃないから」
「途中でもいいのに」
「完成したら見せてあげるよ」
「どんなもの書いてるの?」

 隠すと余計に気になるじゃない、と下書きをのぞき込もうとする私を笑って、寛人さんは立ち上がるなり、私のほおに触れる。

「世界で一番好きなものだよ」
「世界で一番? じゃあ、力作ね」
「うん。部屋に飾ろうと思うよ」
「珍しい、飾るなんて。だったら、ギャラリーに置いてもらいましょうよ」

 寛人さんは自身の絵画を一つも家の中に飾っていない。それなのに、飾ってもいいぐらいの大作なら、よほど自信があるのだろう。

「必要ないよ」

 つないでくる彼の手を握り返す。

「そんなことない。寛人さんの絵画を、もっと多くの人に見てもらいたいの」

 寛人さんの作品は、明敬さんの手が加えられ、春宮建設の扱う建築物として、世の中にいくつも存在してる。

 だけど、それらの建築物が春宮寛人の作品だとは、誰も知らない。やっぱり、それではもったいないと思う。

「ほんとに、ゆかりちゃんはマネージャーみたいだね」

 空さんに誤解されたままの私がおかしいらしく、くすり、と彼は笑う。

「マネージャーでいいの。寛人さんの素晴らしさが世の中に伝わるなら」
「それじゃあ、秘書の仕事と変わらないよ」

 秘書が嫌だったから、春宮建設をやめたんじゃないの? とからかってるんだろう。

「全然違うから、いいの」
「ほかにしたいことないの?」
「それは考えないでもないんだけど」

 私に何ができるだろう。それは何度も考えた。だけど結局、何も浮かばないのだ。

「ゆかりちゃんは器用だけど、不器用そうだね」
「なーに、それ。でも、あたりかも。いろんな資格は持ってるけど、全然役立ててないの。今はね、寛人さんの側にずっといたい。だから、マネージャーになれるなら、それもいいかなって」
「マネージャーじゃなくても、ずっと一緒にいられるよ」
「あ……、うん」
「ここに住んだらいいのに。ずっと住んでていいんだよ」

 それは、プロポーズ?

 寛人さんを見上げると、彼は庭から望む大空を見上げていた。

「俺はいつでもここにいるから。有名になりたいなんて思わない。ずっと、ここにいたいんだ」

 そう言った彼の目には、自由に飛び回る鳥たちが見えていただろうか。
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