記憶をなくしても君は忘れない

水城ひさぎ

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君を守りたくて

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 何を思ったのか、拓海はいきなりテレビをつける。情報番組だろうか。ニュースキャスターと思われるスーツ姿の男性のアップが映し出される。

『ただいま、速報が入りました。速報です。先週の木曜、東京湾で遺体の入ったキャリーバッグが見つかった事件の速報です。えー、本日、正午ごろ、警察による東京湾での捜索で、遺体が所持していたと見られるバッグが見つかり、遺体が横浜市に住む20代の女性とみられることがわかりました。警察は引き続き、死体遺棄事件として捜査を進めていくものと思われます。繰り返します……』

 テレビ画面に東京湾らしき光景と警察官が映し出されている中、男性キャスターが淡々と情報を告げている。

「これ、理乃なんじゃ……」

 動揺して口もとを手で覆う光莉の横で、拓海は厳しい顔つきでテレビ画面を見つめている。

「もし松村なら、赤村が関わってる可能性もあるよな」
「どうして?」
「先週もこのニュースやってたんだ。その時は、遺体の入ったキャリーバッグが見つかったっていうニュースだったけどさ、事件に関わってるやつなら、遺体が松村のことだってすぐにわかる。警察が事情を聞きに来るのを見越して、あたかも、松村が生きてると思ってるような行動をしに、わざわざアパートを訪ねてきたとは考えられないか?」
「それは違うと思う」

 光莉はすぐにそう断言する。

「違う?」
「拓海にはまだ話してないけど、赤村さんが昨日来たのは、いろいろあったからで……」

 赤村の行動は、光莉と彼の妻が出会ったために起きたことだ。

「赤村から聞いた話、俺にも聞かせてくれるか?」
「うん」

 光莉は、赤村と理乃の関係、彼の妻宛に送られてきた手紙、その妻が理乃と勘違いして光莉に暴力をふるったことや、理乃の最近の足取りなど、要点をかいつまんで手短かに話す。

「松村は先月の12日までは間違いなく生きてたってことか」
「……そうだよね。11日には生きてたんだよね。私があのメールに気づいたとき、すぐに返信してたら、こんなことにはならなかったかもしれないよね」
「あのメール?」
「実は……、11日に『助けて』ってメールが来てて」

 光莉は、rino0506から始まるアドレスのメールを開いて拓海に見せる。

「松村から?」
「たぶん。理乃じゃないかなって思ってる」
「0506って、なんだろうな」
「理乃の誕生日だと思う」
「誕生日か。じゃあ、差出人が松村だとすると、11日に事件に巻き込まれた可能性があるよな」
「でも、赤村さんは12日に理乃からの電話を会社で受けてる」
「それ、赤村の嘘だったら? 11日にはすでに松村は亡くなっていて、12日に電話なんてなかった。アリバイづくりのために嘘をついてる可能性はあるよ。本当に会社に電話があったのか、調べる価値はあるよな?」

 そんなこと考えてもみなかった。赤村は理乃の上司で、無い電話をあったと報告するのは容易い気がする。

「そうだね。警察に話してみる」
「そうした方がいい。……ああ、そうだ。もし、赤村から連絡があっても出かけるなよ、光莉」
「うん、わかった」
「っていうか、俺がずっとそばにいるから。一人で出かけるなよ」

 安心させようとしてくれたのか、拓海は笑顔を見せるが、少し思い悩むように視線をさげる。

「何? どうしたの?」
「あ、いや……」
「いいよ、なんでも話して。何かの手がかりになるかもしれない」

 下から顔をのぞき込むと、彼は苦しそうに髪をくしゃりとつかむ。

「松村とは関係ないんだけどさ……、俺が川に落ちたのって、12日なんだよ。あの頃、松村も大変な目に遭ってたのかと思うと、なんかさ……」
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