記憶をなくしても君は忘れない

水城ひさぎ

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禁じられた恋

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 しかし、ご両親の可能性は低いだろう、と光莉は考えていた。あの腕時計には拓海の指紋しかついてなかったのだ。わざわざ、指紋をふき取ってご両親がバッグにしまうとは思えない。

「わかった。聞いておくよ。同僚はどうする?」
「調べてみるしかないよな。名前ぐらいはわかるだろ?」
「ああ。見舞いに来たとき、名刺もらったから。それも確認してみるよ」
「じゃあ、あとは警察とシオンの店長か。どんな人だ?」
「前山さんも基哉さんたちも、記憶なくした俺に親切にしてくれててさ、いい人たちだよ。前山さんはさすがに写真はないけど、シオンなら……」

 そう言って、拓海はスマートフォンで『シオン』を検索する。

「あ、これ、この人たちだよ」

 シオンのホームページを開いた拓海は、デスクの上にスマートフォンを置く。

「ふたり?」

 シオンの店内で、笑顔を浮かべる千華と基哉がいる。

「兄妹でやってる店なんだよ。カウンターの奥にいるのが、店長の基哉さん」
「手前にいるのが、妹さん?」
「そう。妹の千華さん」
「ちょっといいか?」

 真中はスマートフォンを手に取ると、ディスプレイを触って画像を大きくする。

「何か気になる?」
「ちょっとな。この彼女、見たことある気がするんだよ。……あっ、思い出した。俺、夏に彼女を診察したよ」
「へぇ、神経内科で?」
「いや、夜間の外来。傷の手当てだよ」
「緊急で来たわけ?」
「ああ。まあ、詳しくは言えないけどさ、警察に通報するか悩んだから、よく覚えてる」

 思いがけない話だ。千華が警察と関わるようなケガをしていたなんて。

 理乃や拓海、そして、千華まで。身近な人々が次々と事件や事故に巻き込まれるなんて何かあるようにしか思えない。

「警察って、事件?」

 拓海も不可解に感じたのだろう、眉をひそめて尋ねる。

「俺からは言えない」
「守秘義務? 仕方ないよな。千華さんにそれとなく聞いてみるか」
「それはやめておけ。でも、そうだな。彼女になら聞いてもいいかもしれない」
「彼女って? 真中の恋人?」

 真中は苦笑して、「違うよ」と否定する。

「うちの看護師の新田にった。最初に警察に通報した方がいいかもって言い出したのは、新田なんだよ。彼女なら、詳しいことを知ってると思う」
「どうして、その新田さんって人が?」

 光莉が疑問をぶつけると、真中はなんでもないことのように言う。

「友だちらしいよ、その患者さんと。本当に自分でケガしたのかなって心配してたよ。気になるなら通報するって言ったんだけどね、様子見してみるって言ってたな。それから何日か経って聞いてみたら、もう大丈夫だって言ってたから、俺も無理強いはしなかったよ」
「その新田さん、今日はいるのか? いるなら、話を聞きたい」
「いると思うけどね、聞いてみるよ。彼女、内科にいるから」

 そう言うと、真中は早速、デスクの上にある受話器を持ち上げた。
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