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10年後の約束
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しおりを挟む9月11日
つかさ公園で、何年かぶりに松村理乃と再会した。松村は光莉と連絡が取りたいと言う。正直、驚いた。彼女は光莉と決して仲の良い関係には思えなかったからだ。
連絡先は知らないと言ったら、ホームページ見たらいいよ、と笑われた。光莉は本田光莉という本名でフォトグラファーとして活躍している。そのホームページにあるメールアドレスに連絡したらいいと、松村は言うのだ。
俺だってそのぐらい知っていたが、なかなか連絡できないでいた。光莉はアメリカでのびのびと活動している。彼女の作品はいくつも見た。明るくてまっすぐな光莉らしい、太陽のように情熱的で、または澄み切った空のように爽快な作品ばかりだ。未来を見つめる彼女の作品を見るにつけ、過去に縛られているのは俺だけだと思い知らされる。
連絡を取ったところで、今さらだと言われるのが怖い。そう松村に伝えたら、私も、と彼女は笑った。そして、私が光莉にメールできなかったら、月島くんから連絡してくれない? 口実があれば連絡しやすいでしょ? と言ってきた。弱気な松村は意外だったが、どうしても光莉に連絡したい何かがあるんじゃないかと思って、俺は了承した。
以下は、松村が俺のスマートフォンのメモアプリに直接入力した言葉だ。光莉に連絡する勇気が出なかったら、このままの文を光莉に送信してほしい。そう頼まれた。
"光莉へ
助けてください。こんなふうにいきなり連絡したら、光莉は迷惑するかな。
生まれて初めて、心の底から好きな人ができました。誰からも愛されない暮らしはずっと苦しくて、この気持ちを誰かにぶつけてないと生きてこれなかった。こんな私を甘やかしてくれるのは無責任な不倫男だけ。それでも、わかってくれる人が欲しくて不倫関係を続けていたけど、彼に会ってから、今までの自分は間違ってたって思えるようになったの。だから、彼とのことは誰にも知られないようにしてる。誰かに壊されたら嫌だから。
だけどね、その彼とお別れしなきゃいけなくなっちゃった。彼は私より妹さんが大切だから。妹さんを傷つけた私を許せなかったみたい。私は光莉からたくさん大事なものを奪ってきたよね。だからかな、今度は私が奪われる番みたい。
不倫相手とはうまくいってないし、別れることにしたの。そうしたらね、別に最初から本気じゃなかったんだからかまわないって、あっさり言われちゃった。奥さんが大事だったんだよね。だから悔しくて、奥さんに嫌がらせの手紙、書いちゃった。変わってないよね、私。
こんな私でも、彼のことはほんとうに好きで、彼と幸せになりたいって思ってる。だからもう一度、やり直したいって言ってみるつもり。今ね、待ち合わせしてる最中。よりが戻せるといいな。ダメだったら、泣くかな、私。やっぱり、ひとりはさみしい。
こんなとき、相談に乗ってくれる妹がいてくれたらよかったな。光莉なら、そんな妹になってくれた気がするけど、そういう関係になれなかったのは私のせいだよね。今さら、光莉に助けてって言うのは間違ってるかな。
理乃"
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