あなたと恋ができるまで

水城ひさぎ

文字の大きさ
9 / 20
理不尽な要求

3

しおりを挟む



 彰さんからのメールに返事してないことを思い出したのは、日曜日の午後だった。

 しばらくスマホ画面を眺めて、ほおづえをつく。気の利いた返事が思い浮かばない。

 会わないで済むならこのままお別れを告げればいいし……、会って話したいことがあるなんて、重要な話だって言うなら無視もできない。

「うーん。大知くんに相談してみようかな……」

 彼はまだ、マッチングアプリを利用してることすら知らないだろう。

 一度は真っ暗になったスマホ画面が、ピカッと光る。うわさをすればじゃないけど、大知くんからメールが届く。

『兄と食事に行くことになったので、今日は行けそうにないです。来週また行きます』

 お兄さんと食事か……。じゃあ、仕方ない。

 ちょっとがっかりしてる私に気付いて、笑ってしまう。週末以外も会いたいんだって言う勇気もないのに。

『来週末は実家に行くの。大知くんも行く?』

 私の彼氏だって言える男になりたいと、さみしそうにした彼の顔が浮かんで、気づいたら誘っていた。

『えっ、いいんですかっ?』

 速攻で返信がある。

『兄夫婦も来ると思うけど』
『全然大丈夫です! 楽しみにしてます』
『じゃあ、土曜日の10時に待ち合わせしましょ』
『金曜日、泊まりに行きます。いろいろ楽しみです』

 にっこにこの大知くんが想像できて、恥ずかしくなってしまう。

『じゃあ、またね』
『はい。また』

 最後はあっさりした返事が返ってきた。ちょっと物足りなくも感じながら、ふたたび、彰さんのメールを開く。

 会って話したいことがある。という文字を何度も繰り返し読んで、散々悩んだ挙句、シンプルに尋ねてみた。

『話したいことって、なんですか?』
『会って話します。いつ会えますか?』

 思ったよりはやく、返信が来て、びっくりした。彼は、私のメールを待ってたのかもしれない。

『平日ぐらいしか、時間がないんです』
『じゃあ明日、鳴宮なるみや駅で待ち合わせしましょう』
『明日ですか?』

 気の早い話だ。よほどの重要な話だろうか。

『急ですか?』
『あ、いえ……』
『このところ、あなたのことばかり考えています。はやく会ってお話したいんです』

 前向きなメールに、後ろめたい気持ちになる。

『わかりました。じゃあ、鳴宮駅で19時に』

 そう返信しながら、やっぱりもう会えないって、はっきり言った方がいいかもしれない、なんて考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写と他もすべて架空です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...