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ずっと愛してた
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絵美が彼に何やら断りを入れて、席を立ち上がる。私も席を立ち、ラウンジを出た。
ラウンジから離れたロビーに移動すると、絵美もやってくる。彼女の表情は晴れ晴れとしてる。それに相反する顔を、私はしてるだろう。
「どう? カッコいいでしょ、彼」
「あ……うん」
「なによ、その反応。よっぽど、大知くんはカッコいいのね」
不安はすっかりぬぐいさって、彼女はおどけるようにすねてみせる。かなりの好感触なんだろう。
絵美に真実を話す必要ないのかもしれない。だけど、このままふたりがうまくいけば、いつかはショウさんを紹介される日が来る。その時、絵美はどう思うだろう。どうして黙ってたんだって、怒るかもしれない。隠すような関係だなんて勘ぐるかもしれない。
「あのね、絵美。ちょっと落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「ん、何?」
「あの人、ショウさんなんだよね?」
「うん、そうだよ」
ふしぎそうにする絵美の手首をそっとつかむ。深刻にする私に気付いて、彼女はふたたび不安げにした。
「……あの人ね、彰さんなんだよ」
ゆっくりと、そう吐き出す。
絵美の瞳が揺れた。それから、静かにまぶたを落とす。
「嘘つかれてるってこと?」
彼女が吐き出した声はとても冷静だった。
「最近、アプリ開いてなくて、確認してなかったけど……ちょっと待って」
かばんからスマホを取り出し、リンクスを開く。彰さんのプロフィール画面を確認する。
「ショウさんになってる……」
顔写真は変わらない。でも、ニックネームが、彰からショウに変わってる。絵美に画面を見せる。彼女も見覚えのある画面だったのか、無言でうなずいた。
「彰も、偽名なのかな? 詐欺じゃないよね?」
「それか、女の子漁りしてるってことだよね? 真剣に結婚考えてるって言ってたのに」
「本気か、聞いてみよ」
悲しそうにまつげを揺らす絵美の手を引き、ラウンジに向かう。反発する気力もないのか、彼女も黙ってついてきた。
ラウンジに踏み込もうとしたとき、手の中のスマホが震えた。メールが届いた。その差出人を確認した瞬間、ショウさんを見ていた。彼は、コーヒーカップを持ち上げて、ラウンジから見える中庭をのんびりと眺めている。
「どういうこと?」
「千秋?」
私はあわてて、メールを絵美に見せる。
「いま、彰さんからメールが来たの。また会いたいって」
「彼、メールしてないじゃない」
絵美も、ショウさんの様子を確認して、眉をひそめる。
「でも、あの人、絶対彰さんだから」
「じゃあ、このメール、誰が出してるの?」
「そんなの私が聞きたいよ」
私は、彰さんじゃない人とメールをしてたことになる。
絵美と目を合わせる。彼女の瞳にはもう、失望は浮かんでなくて、力強い光が宿っていた。
「今日はこのまま何にも知らないふりしてショウさんと食事して帰る。千秋はメールで彰さんを呼び出して。確かめよう。ショウさんと彰さんのこと」
こういうとき、絵美はやっぱり頼りになる。
「わかった。じゃあ彰さんに、明日、会いたいってメールする。場所は、ここにしよう。今日と同じ時間で」
うなずく絵美に後押しされながら、私は彰さん宛のメールを送信した。
絵美が彼に何やら断りを入れて、席を立ち上がる。私も席を立ち、ラウンジを出た。
ラウンジから離れたロビーに移動すると、絵美もやってくる。彼女の表情は晴れ晴れとしてる。それに相反する顔を、私はしてるだろう。
「どう? カッコいいでしょ、彼」
「あ……うん」
「なによ、その反応。よっぽど、大知くんはカッコいいのね」
不安はすっかりぬぐいさって、彼女はおどけるようにすねてみせる。かなりの好感触なんだろう。
絵美に真実を話す必要ないのかもしれない。だけど、このままふたりがうまくいけば、いつかはショウさんを紹介される日が来る。その時、絵美はどう思うだろう。どうして黙ってたんだって、怒るかもしれない。隠すような関係だなんて勘ぐるかもしれない。
「あのね、絵美。ちょっと落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「ん、何?」
「あの人、ショウさんなんだよね?」
「うん、そうだよ」
ふしぎそうにする絵美の手首をそっとつかむ。深刻にする私に気付いて、彼女はふたたび不安げにした。
「……あの人ね、彰さんなんだよ」
ゆっくりと、そう吐き出す。
絵美の瞳が揺れた。それから、静かにまぶたを落とす。
「嘘つかれてるってこと?」
彼女が吐き出した声はとても冷静だった。
「最近、アプリ開いてなくて、確認してなかったけど……ちょっと待って」
かばんからスマホを取り出し、リンクスを開く。彰さんのプロフィール画面を確認する。
「ショウさんになってる……」
顔写真は変わらない。でも、ニックネームが、彰からショウに変わってる。絵美に画面を見せる。彼女も見覚えのある画面だったのか、無言でうなずいた。
「彰も、偽名なのかな? 詐欺じゃないよね?」
「それか、女の子漁りしてるってことだよね? 真剣に結婚考えてるって言ってたのに」
「本気か、聞いてみよ」
悲しそうにまつげを揺らす絵美の手を引き、ラウンジに向かう。反発する気力もないのか、彼女も黙ってついてきた。
ラウンジに踏み込もうとしたとき、手の中のスマホが震えた。メールが届いた。その差出人を確認した瞬間、ショウさんを見ていた。彼は、コーヒーカップを持ち上げて、ラウンジから見える中庭をのんびりと眺めている。
「どういうこと?」
「千秋?」
私はあわてて、メールを絵美に見せる。
「いま、彰さんからメールが来たの。また会いたいって」
「彼、メールしてないじゃない」
絵美も、ショウさんの様子を確認して、眉をひそめる。
「でも、あの人、絶対彰さんだから」
「じゃあ、このメール、誰が出してるの?」
「そんなの私が聞きたいよ」
私は、彰さんじゃない人とメールをしてたことになる。
絵美と目を合わせる。彼女の瞳にはもう、失望は浮かんでなくて、力強い光が宿っていた。
「今日はこのまま何にも知らないふりしてショウさんと食事して帰る。千秋はメールで彰さんを呼び出して。確かめよう。ショウさんと彰さんのこと」
こういうとき、絵美はやっぱり頼りになる。
「わかった。じゃあ彰さんに、明日、会いたいってメールする。場所は、ここにしよう。今日と同じ時間で」
うなずく絵美に後押しされながら、私は彰さん宛のメールを送信した。
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