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二度あることは三度ある?
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「打ち合わせ、何時から?」
コピー機から排出される用紙を眺めていると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、クリアファイルを手にする御園さんが立っていた。
いつからいたのだろう。打ち合わせ用の個室だから、誰もいないと思って、周囲に気を配り忘れていた。
「10時よ。御園さんもコピー使う? もうすぐ終わるから、ちょっと待って」
「急いでないから大丈夫よ。それはそうと、考えごと? ぼんやりしてたわよ」
「あー、……ちょっとお腹が痛いなぁって。だいぶ良くなったんだけど」
下腹部をおさえると、御園さんは口角をあげた。笑んだのだろうが、とてもわかりにくい。
「うまくいったのね」
「うまく? ……あっ、違う。違うの。って……違わないんだけど」
何の話か気づいて、赤らむほおを自覚しながら、パタパタと顔の前で手を振る。
「どっちなのよ」
どうしてこう、御園さんは冷静なのだろう。
好奇心だけで尋ねられてる嫌な感じもなければ、無関心そうに見えて実は心配してくれてる印象も受ける。
だからつい、私も正直になる。
「生理になっちゃって。朝、お薬飲んできたから、やっと効いてきたみたい」
「彼とはダメだったの?」
「それなんだけどね……」
金曜の夜の出来事を、かくかくしかじかと話す。
そうしてるうちに、酔っていたとはいえ、無謀な週末を過ごしたものだと、自分の言動が恥ずかしくなってくる。
御園さんは無表情で聞いてるけれど、話し終えると、「よかったじゃない」と言ってくれた。
後悔しそうになっていた私の心を救ってくれる。
「花村さんはもっと自信を持っていいと思う。そのきっかけになるなら、間違ってないわよ」
「経験してみたら、結局、経験があるだけで、彼氏に大切にされたわけじゃないのにって思っちゃって」
「本当に好きな人のために、別の男に処女を奪ってもらう人もいるって言うじゃない」
「えっ、ほんと?」
「好きな人に処女は無理って言われるより、よっぽどいいわよ」
それもそうかもしれない。
妙に説得力のある話し方をする御園さんの意見に、どうも私は簡単に左右されてしまうみたい。
「でも、後悔したって仕方ないよね。カッコいい人だったし、ラッキーだったって思っておく」
「その調子よ。2回目の約束もしたんでしょ? 彼氏になるかもしれないじゃない」
そうだろうか。蓮の部屋に泊まって、朝食ぐらい一緒にと思ったけれど、彼は眠たそうになかなかベッドから起きて来なくて、連絡先だけ交換して帰ってきた。
「向こうは遊びだって割り切ってる感じだったから」
「遊び相手が花村さんだなんて、ぜいたくな男だわ」
私を高く評価してくれてる彼女は、ずいぶんと不服そうに言う。
「彼はモテるのよ」
私じゃなくてもいいぐらい、蓮は女性に困らないだろう。
「あ、ごめんね。コピー終わったけど、用紙切れしちゃったみたい」
「そのままでいいわ。私が補充しておく」
早速、新しいコピー用紙の包装をはがす御園さんに尋ねる。
「打ち合わせ、個室使う?」
「花村さんたちが使っていいわよ。高木さんとだけなら、席でじゅうぶん」
「いつもありがとう」
「どういたしまして」
そう言って、御園さんは今度ははっきりと笑みを浮かべた。
「打ち合わせ、何時から?」
コピー機から排出される用紙を眺めていると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、クリアファイルを手にする御園さんが立っていた。
いつからいたのだろう。打ち合わせ用の個室だから、誰もいないと思って、周囲に気を配り忘れていた。
「10時よ。御園さんもコピー使う? もうすぐ終わるから、ちょっと待って」
「急いでないから大丈夫よ。それはそうと、考えごと? ぼんやりしてたわよ」
「あー、……ちょっとお腹が痛いなぁって。だいぶ良くなったんだけど」
下腹部をおさえると、御園さんは口角をあげた。笑んだのだろうが、とてもわかりにくい。
「うまくいったのね」
「うまく? ……あっ、違う。違うの。って……違わないんだけど」
何の話か気づいて、赤らむほおを自覚しながら、パタパタと顔の前で手を振る。
「どっちなのよ」
どうしてこう、御園さんは冷静なのだろう。
好奇心だけで尋ねられてる嫌な感じもなければ、無関心そうに見えて実は心配してくれてる印象も受ける。
だからつい、私も正直になる。
「生理になっちゃって。朝、お薬飲んできたから、やっと効いてきたみたい」
「彼とはダメだったの?」
「それなんだけどね……」
金曜の夜の出来事を、かくかくしかじかと話す。
そうしてるうちに、酔っていたとはいえ、無謀な週末を過ごしたものだと、自分の言動が恥ずかしくなってくる。
御園さんは無表情で聞いてるけれど、話し終えると、「よかったじゃない」と言ってくれた。
後悔しそうになっていた私の心を救ってくれる。
「花村さんはもっと自信を持っていいと思う。そのきっかけになるなら、間違ってないわよ」
「経験してみたら、結局、経験があるだけで、彼氏に大切にされたわけじゃないのにって思っちゃって」
「本当に好きな人のために、別の男に処女を奪ってもらう人もいるって言うじゃない」
「えっ、ほんと?」
「好きな人に処女は無理って言われるより、よっぽどいいわよ」
それもそうかもしれない。
妙に説得力のある話し方をする御園さんの意見に、どうも私は簡単に左右されてしまうみたい。
「でも、後悔したって仕方ないよね。カッコいい人だったし、ラッキーだったって思っておく」
「その調子よ。2回目の約束もしたんでしょ? 彼氏になるかもしれないじゃない」
そうだろうか。蓮の部屋に泊まって、朝食ぐらい一緒にと思ったけれど、彼は眠たそうになかなかベッドから起きて来なくて、連絡先だけ交換して帰ってきた。
「向こうは遊びだって割り切ってる感じだったから」
「遊び相手が花村さんだなんて、ぜいたくな男だわ」
私を高く評価してくれてる彼女は、ずいぶんと不服そうに言う。
「彼はモテるのよ」
私じゃなくてもいいぐらい、蓮は女性に困らないだろう。
「あ、ごめんね。コピー終わったけど、用紙切れしちゃったみたい」
「そのままでいいわ。私が補充しておく」
早速、新しいコピー用紙の包装をはがす御園さんに尋ねる。
「打ち合わせ、個室使う?」
「花村さんたちが使っていいわよ。高木さんとだけなら、席でじゅうぶん」
「いつもありがとう」
「どういたしまして」
そう言って、御園さんは今度ははっきりと笑みを浮かべた。
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