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二度あることは三度ある?
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緊張する私がおもしろくて、からかったみたい。蓮はいつもこんな風に女の子といちゃついてるんだろう。
イケメンで高学歴で、女の子の扱いにたけてるなら、モテて当然だ。そういう男の子だから、突拍子もない私のお願いを聞いてくれたんだろうけど。
「佳澄さんって、本当に美人だよね。彼氏がいないなんて、嘘かと思うよ」
ソファーの背にひじをついて、私の顔をのぞき込んでくる。
先週、会えないって断ったの、まだ気にしてるんだろうか。別に会う男がいたんじゃないかって。
「蓮くんがそう思うだけで、全然モテないの」
男性と無縁だなんて恥ずかしくて、手持ちぶさたに長い髪の毛先をいじる。
モテたくて、体型維持や美容に気をつけてるわけじゃないけど、彼氏のひとりもできないなんて、決定的な何かが足りてないんだと気づき始めてる。何が足りないのかなんてわからないけど。
「出会いがないだけだよ」
「え……」
「俺はそう思うけど?」
足りない何かを、蓮は出会いだと言う。
「きれいな女の人、好きだよ、俺は」
ささやくように言って、ピアスをつけた耳たぶに触れてくる。まるで、きれいな宝石を愛でるように、好きって言うのだ。
「また抱きたいって思ってくれたんだよね」
もう二度とごめんだ、と思われなかっただけ、よかったのかもしれない。
「まあね」
どうとでも受け取れる都合のいい返事をする蓮が、私から飲みかけのコーヒーカップを取り上げてしまう。
「まだ飲み終わってないよ」
「コーヒーより俺がほしくない?」
「……蓮くんは、私としたいの?」
お願いしたからじゃなくて。
「したいから呼んだんだよ」
あやしく笑む蓮の瞳に吸い込まれるように顔を寄せたら、唇が合わさった。
誰も必要としてくれない私の体を、彼がほしいと言う。こんな関係は、今日限りだとしても、間違ってると思うけど、ひとりの女性として認められた気がして、あんどもしてる。
蓮がほしいって言ってくれるなら、彼の要求に応えたい、なんて思ってしまう。
「会社でね、恋愛の話されると困ってたんだけど……」
「うん」
「蓮くんが抱いてくれたから、後ろめたい気持ちとか持たなくても話せて」
「そう、よかったね」
「あ、うん。ありがとう」
よかったね、ってやっぱり言ってくれた。
「どんな話してるのか知らないけど、佳澄さんの職場っておもしろそうだね」
くすっと息をもらした蓮が、まばたきをした瞬間に色気を見せて、私の下唇を食んだ。
もう仕事の話はいいよ、って言われたみたい。
まぶたを閉じて、キスを受け止める。
ほどよい弾力のある唇が、私の唇に触れるごとに柔らかくなるようで、蓮とのキスは心地が良かった。
唇が離れると同時に小さな息をつく。蓮の肩に頭を預けると、彼はブラウスのボタンをはずしていく。
ブラウスを肩からおろし、そのまま背中にまわってきた手がブラジャーをはずす。なれた手つきに身を任せていると、感触を楽しむように胸に触れてくる。
この間は酔っていたし、部屋も薄暗かったけど、白昼で眺められると恥ずかしくてたまらない。
「蓮くん……」
「ん?」
何? って問うような目をするのに、顔の前をかすめて下がっていく唇が、胸の頂きに触れた。
キスと同様、緩急をつけて触れてくる唇が、貪欲になればなるほど、彼から甘い息がもれてくる。
私に夢中になる彼の袖をぎゅっとつかんで、その行為を受け止める。私は赤子の手をひねるより簡単に扱えるのだろう。
「ベッドに行こうか」
と手を引かれ、シーツの上へ体を横たえた。
服を脱いでいく蓮が、ほどよく鍛えられた体をさらしながら、私の体に覆いかぶさってくる。
二回目とはいえ、恥ずかしさのあまり、顔をそらす。しかしすぐにほおを押し戻されて、唇をついばまれる。
次第にキスは深くなる。とろけるように柔らかい唇を感じながら、彼の首の後ろに手をまわしていた。
キスの心地よさに酔いしれながら、彼の背中に指をはわすと、蓮は私の顔をのぞき込む。
「佳澄さんの体、すごくきれいだ」
「……あんまり見ないで」
「恥ずかしくない。きれいだよ」
そう言って、上半身を起こすと、私のひざを割る。
ハッと息をのんで、体に力が入る。それを敏感に感じとった彼は、「大丈夫だよ」って、ほおを優しくなでてくれる。
「いい?」
「……うん」
痛みの記憶がよみがえってきて、シーツをぎゅっと握りしめたら、蓮は私の様子をうかがいながら入ってきた。
……あ、大丈夫みたい。
はじめての時の痛みが嘘みたい。
短く息を吐いて私を見下ろす蓮を眺める。彼はうっとりと薄く唇を開いて、揺れている。
きれいなのは、蓮だろう。
こんなにカッコいい人に抱かれてるなんて、とどきどきしながら、彼の与えてくれるよろこびに、私も甘い息をはいた。
「佳澄さん……」
余裕なさそうに私の名を呼んだ蓮の息がだんだん荒くなっていく。何度か激しくゆれたあと、私の上に伏してくる。
そしてぎゅっと私を抱きしめ、照れくさそうに彼は笑った。
汗ばんだ背中に手をまわして、私も彼を抱きしめる。
愛おしい。
そんな感情が浮かぶから戸惑う。
行為に愛はなくて、体を重ねただけなのに、愛おしい気持ちになるなんて。
合わせた胸から伝わる、まだお互いに整わない息を感じながら、蓮とこうして過ごすのは最後なんだと、ぼんやりと考えてる。
さみしいとか、また抱いてほしいとか、そういう気持ちとは違って、今はただ、蓮と離れたくないって思ってる。
この感情は前回には得られなかったもので、肌が合うとか、そういうものなのかもしれない。
好きな人とだったら、どんなにかいいのだろう。次は、好きな人とこうして過ごせるのだろうか。
私にも、出会いがあれば……。
イケメンで高学歴で、女の子の扱いにたけてるなら、モテて当然だ。そういう男の子だから、突拍子もない私のお願いを聞いてくれたんだろうけど。
「佳澄さんって、本当に美人だよね。彼氏がいないなんて、嘘かと思うよ」
ソファーの背にひじをついて、私の顔をのぞき込んでくる。
先週、会えないって断ったの、まだ気にしてるんだろうか。別に会う男がいたんじゃないかって。
「蓮くんがそう思うだけで、全然モテないの」
男性と無縁だなんて恥ずかしくて、手持ちぶさたに長い髪の毛先をいじる。
モテたくて、体型維持や美容に気をつけてるわけじゃないけど、彼氏のひとりもできないなんて、決定的な何かが足りてないんだと気づき始めてる。何が足りないのかなんてわからないけど。
「出会いがないだけだよ」
「え……」
「俺はそう思うけど?」
足りない何かを、蓮は出会いだと言う。
「きれいな女の人、好きだよ、俺は」
ささやくように言って、ピアスをつけた耳たぶに触れてくる。まるで、きれいな宝石を愛でるように、好きって言うのだ。
「また抱きたいって思ってくれたんだよね」
もう二度とごめんだ、と思われなかっただけ、よかったのかもしれない。
「まあね」
どうとでも受け取れる都合のいい返事をする蓮が、私から飲みかけのコーヒーカップを取り上げてしまう。
「まだ飲み終わってないよ」
「コーヒーより俺がほしくない?」
「……蓮くんは、私としたいの?」
お願いしたからじゃなくて。
「したいから呼んだんだよ」
あやしく笑む蓮の瞳に吸い込まれるように顔を寄せたら、唇が合わさった。
誰も必要としてくれない私の体を、彼がほしいと言う。こんな関係は、今日限りだとしても、間違ってると思うけど、ひとりの女性として認められた気がして、あんどもしてる。
蓮がほしいって言ってくれるなら、彼の要求に応えたい、なんて思ってしまう。
「会社でね、恋愛の話されると困ってたんだけど……」
「うん」
「蓮くんが抱いてくれたから、後ろめたい気持ちとか持たなくても話せて」
「そう、よかったね」
「あ、うん。ありがとう」
よかったね、ってやっぱり言ってくれた。
「どんな話してるのか知らないけど、佳澄さんの職場っておもしろそうだね」
くすっと息をもらした蓮が、まばたきをした瞬間に色気を見せて、私の下唇を食んだ。
もう仕事の話はいいよ、って言われたみたい。
まぶたを閉じて、キスを受け止める。
ほどよい弾力のある唇が、私の唇に触れるごとに柔らかくなるようで、蓮とのキスは心地が良かった。
唇が離れると同時に小さな息をつく。蓮の肩に頭を預けると、彼はブラウスのボタンをはずしていく。
ブラウスを肩からおろし、そのまま背中にまわってきた手がブラジャーをはずす。なれた手つきに身を任せていると、感触を楽しむように胸に触れてくる。
この間は酔っていたし、部屋も薄暗かったけど、白昼で眺められると恥ずかしくてたまらない。
「蓮くん……」
「ん?」
何? って問うような目をするのに、顔の前をかすめて下がっていく唇が、胸の頂きに触れた。
キスと同様、緩急をつけて触れてくる唇が、貪欲になればなるほど、彼から甘い息がもれてくる。
私に夢中になる彼の袖をぎゅっとつかんで、その行為を受け止める。私は赤子の手をひねるより簡単に扱えるのだろう。
「ベッドに行こうか」
と手を引かれ、シーツの上へ体を横たえた。
服を脱いでいく蓮が、ほどよく鍛えられた体をさらしながら、私の体に覆いかぶさってくる。
二回目とはいえ、恥ずかしさのあまり、顔をそらす。しかしすぐにほおを押し戻されて、唇をついばまれる。
次第にキスは深くなる。とろけるように柔らかい唇を感じながら、彼の首の後ろに手をまわしていた。
キスの心地よさに酔いしれながら、彼の背中に指をはわすと、蓮は私の顔をのぞき込む。
「佳澄さんの体、すごくきれいだ」
「……あんまり見ないで」
「恥ずかしくない。きれいだよ」
そう言って、上半身を起こすと、私のひざを割る。
ハッと息をのんで、体に力が入る。それを敏感に感じとった彼は、「大丈夫だよ」って、ほおを優しくなでてくれる。
「いい?」
「……うん」
痛みの記憶がよみがえってきて、シーツをぎゅっと握りしめたら、蓮は私の様子をうかがいながら入ってきた。
……あ、大丈夫みたい。
はじめての時の痛みが嘘みたい。
短く息を吐いて私を見下ろす蓮を眺める。彼はうっとりと薄く唇を開いて、揺れている。
きれいなのは、蓮だろう。
こんなにカッコいい人に抱かれてるなんて、とどきどきしながら、彼の与えてくれるよろこびに、私も甘い息をはいた。
「佳澄さん……」
余裕なさそうに私の名を呼んだ蓮の息がだんだん荒くなっていく。何度か激しくゆれたあと、私の上に伏してくる。
そしてぎゅっと私を抱きしめ、照れくさそうに彼は笑った。
汗ばんだ背中に手をまわして、私も彼を抱きしめる。
愛おしい。
そんな感情が浮かぶから戸惑う。
行為に愛はなくて、体を重ねただけなのに、愛おしい気持ちになるなんて。
合わせた胸から伝わる、まだお互いに整わない息を感じながら、蓮とこうして過ごすのは最後なんだと、ぼんやりと考えてる。
さみしいとか、また抱いてほしいとか、そういう気持ちとは違って、今はただ、蓮と離れたくないって思ってる。
この感情は前回には得られなかったもので、肌が合うとか、そういうものなのかもしれない。
好きな人とだったら、どんなにかいいのだろう。次は、好きな人とこうして過ごせるのだろうか。
私にも、出会いがあれば……。
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