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すれ違う祈り
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登校すると、2ーBの教室の入り口に人だかりが出来ていた。
珍しい。飛流姉妹がいるA組ならともかく、B組には学生の興味を集める生徒などいない。
「ちょっと前ごめん、通るよ」
人をかき分けて進むと、「木梨が来た」と誰かが言った声が聞こえた。
途端、俺の周囲の学生が一気に身を引いて散り散りになっていく。
突然のことにびっくりしたが、飛流姉妹のことで阿部とその取り巻きが何か嫌がらせでもしているのだろうぐらいにしか思わなかった。
何事もなかったように教室に足を踏み込んだ俺は、目に飛び込んできた人物を見てさらに驚いた。
「よお、勝負に勝ったっていうのに朝から暗いな、木梨凪」
窓際の俺の席に腰かけて、足を組む輝がうっすら笑う。
「樋野先輩、なんで……」
慌てて駆け寄って、周囲の視線を感じて声を押し殺す。
「なんでここに」
「あんたの浮かれた顔を見に来たつもりだが、どうもそうでもないみたいだな」
「だからって教室に来るなんて」
「勝負に負けた身としては、部室に近づくのはどうかと遠慮したんだ」
どこが遠慮しただ、と内心思う。ことを荒立てるのが好きなようにしか見えない。
「あ……、いや、そういうつもりじゃないですから、話がある時は部室の方が都合がいいです」
「ふぅん、飛流那波と部室で二人きりになることに怖気付いたか?」
「そんなことないです」
「聞いたぜ、あんたのこと」
「えっ?」
必要以上に驚き飛び上がる肩を、愉快げに輝が押さえつける。
「那波の様子がおかしかったからな、問い詰めてみた。で、あんたは那波の態度をどう受け取ったんだ?」
「飛流さんは先輩になんて?」
那波は輝になんでも話すのだと思うと、しょう然としてしまう。
「ここで言ってもいいのか?」
「え……、あ、あんまり良くはないかな」
気弱になる俺を見て、輝は、ははっと高らかに笑う。
「まあ、芽依を好きだと勘違いしてたみたいだからな、驚いてるってとこだろう」
「驚いてる? それだけかな」
「あまりいい返事は期待できないだろうな。那波なりに悩んでるようだ」
「困らせただけだったんだ……」
俺はふられたんだろう。
はっきりとした返事がもらえるなんて、そこまでは期待していなかったが、震えながら俺から逃げるように立ち去った彼女がいい返事をしてくれないことはすぐに理解した。
「まあ、そういうことだ。あんたが出来ることは、那波の思いを応援してやることだけだろう」
「飛流さんの思いって?」
「それは自分で気づけよ。誰にも何が正解かなんてわかりはしないんだ」
「……また置き去りだ」
ため息を吐き出すと、輝は無言で俺の背中を叩き、女子生徒の悲鳴に囲まれながら教室を出ていった。
登校すると、2ーBの教室の入り口に人だかりが出来ていた。
珍しい。飛流姉妹がいるA組ならともかく、B組には学生の興味を集める生徒などいない。
「ちょっと前ごめん、通るよ」
人をかき分けて進むと、「木梨が来た」と誰かが言った声が聞こえた。
途端、俺の周囲の学生が一気に身を引いて散り散りになっていく。
突然のことにびっくりしたが、飛流姉妹のことで阿部とその取り巻きが何か嫌がらせでもしているのだろうぐらいにしか思わなかった。
何事もなかったように教室に足を踏み込んだ俺は、目に飛び込んできた人物を見てさらに驚いた。
「よお、勝負に勝ったっていうのに朝から暗いな、木梨凪」
窓際の俺の席に腰かけて、足を組む輝がうっすら笑う。
「樋野先輩、なんで……」
慌てて駆け寄って、周囲の視線を感じて声を押し殺す。
「なんでここに」
「あんたの浮かれた顔を見に来たつもりだが、どうもそうでもないみたいだな」
「だからって教室に来るなんて」
「勝負に負けた身としては、部室に近づくのはどうかと遠慮したんだ」
どこが遠慮しただ、と内心思う。ことを荒立てるのが好きなようにしか見えない。
「あ……、いや、そういうつもりじゃないですから、話がある時は部室の方が都合がいいです」
「ふぅん、飛流那波と部室で二人きりになることに怖気付いたか?」
「そんなことないです」
「聞いたぜ、あんたのこと」
「えっ?」
必要以上に驚き飛び上がる肩を、愉快げに輝が押さえつける。
「那波の様子がおかしかったからな、問い詰めてみた。で、あんたは那波の態度をどう受け取ったんだ?」
「飛流さんは先輩になんて?」
那波は輝になんでも話すのだと思うと、しょう然としてしまう。
「ここで言ってもいいのか?」
「え……、あ、あんまり良くはないかな」
気弱になる俺を見て、輝は、ははっと高らかに笑う。
「まあ、芽依を好きだと勘違いしてたみたいだからな、驚いてるってとこだろう」
「驚いてる? それだけかな」
「あまりいい返事は期待できないだろうな。那波なりに悩んでるようだ」
「困らせただけだったんだ……」
俺はふられたんだろう。
はっきりとした返事がもらえるなんて、そこまでは期待していなかったが、震えながら俺から逃げるように立ち去った彼女がいい返事をしてくれないことはすぐに理解した。
「まあ、そういうことだ。あんたが出来ることは、那波の思いを応援してやることだけだろう」
「飛流さんの思いって?」
「それは自分で気づけよ。誰にも何が正解かなんてわかりはしないんだ」
「……また置き去りだ」
ため息を吐き出すと、輝は無言で俺の背中を叩き、女子生徒の悲鳴に囲まれながら教室を出ていった。
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