34 / 44
強欲な甘い過去
付き合ってない
しおりを挟む
どうしてエマさんが? そう思ったけど、彼女はすぐにその答えを口にした。
「リトルグレイスの美梨さんに見せてもらったの。正確に言うと、美梨さんがおばあちゃまに見せて、それをママに送ったの。ママも褒めてたわ。勉強したの?」
「ファッション関係の大学で、デザインの勉強をしたぐらいなんですけど」
「そうなの。ねぇ、もっとデザインの勉強してみない? 私もビジネスパートナーを探してるのよ。佑磨の奥さまとなら、信頼してやっていけると思うわ」
「えっと……」
急な話で、思うように考えがまとまらず、困惑してしまう。
「ずいぶん、勝手な話するんだな。つばさをあんまり困らせるなよ」
佑磨さんが助け船を出してくれる。
「佑磨、あなた、すごくもったいないことしてるのよ。つばさ、仕事はやめるんでしょう? だったら、デザインの勉強をさせるといいわ」
「デザインか」
佑磨さんは私の書いた落書きを手に取る。なんだか、恥ずかしい。趣味で書いてる程度のものなのに。
「これ、つばさが書いたのか?」
「はい……。時々、思いついたものを」
「そうか」
そっけなく彼は言って、ファイルを閉じると天ヶ瀬さんに渡した。
私の落書き、どうなっちゃうんだろう。
「佑磨、ほんとによ、ほんとに考えておいてね。海堂リゾートの未来の社長夫人がデザインするアクセサリーは、絶対に大注目されるから」
「つばさの気持ちが先だ」
「それはそうだけど……」
「エマはせっかちすぎる。それより、ドレスのデザイン画を見せてくれないか。遥香さん、早速、書いてくれたんだろう?」
催促されて、ようやく、エマさんは本題のスケッチブックを取り出す。
「そういう佑磨も、せっかち」
ぼやきつつ、スケッチブックを開いて見せてくれる。
遥香さんが私のためにデザインしてくれたと思うだけでテンションがあがるのに、そこに描かれたデザインの美しさに、すぐに目は釘付けになる。
「わあ、素敵。Aラインですか?」
「ええ、そうよ。試着会でプリンセスラインを着てくれてたでしょう? とてもよく似合ってたから、あれをベースにアレンジもいいと思ってるんだけど、今回はご提案だから」
「ハルカ・モトミヤと言えば、プリンセスラインですもんね。でも、違う形もすごく好きです」
「ありがとう。お色直しのドレスもいろいろ考えてるの。世界で一つだけの、とっても素敵なドレスを作るわ」
「すごくぜいたくで、ドキドキします」
これも全部、佑磨さんのおかげ。
佑磨さんを見上げると、彼も満足そうに笑み、「気に入るドレスになるまで、いくらでも要望を出していい」と言ってくれる。
「ぜいたくしていいのよ、結婚式だもの。あとはね、マーメイドラインも素敵だと思うわ」
「マーメイドは……どうかな。あんまり身長高くないから」
「不安に思うのね」
「やっぱり、ふんわりしたドレスの方が好きです」
「オッケー」
エマさんはスケッチブックに私の要望を書き込む。
それから、いくつかの質問が続いた。
前もって、天ヶ瀬さんを通して私の要望は遥香さんに伝えていた。その確認を兼ねつつ、デザイン画をもとに、新たな要望を伝えていく。
「それじゃあ、実際にドレスを見てみる? 試着会では着れなかったドレスを着てみても大丈夫よ」
「いいんですか? あ、でも、佑磨さんはもうお仕事に戻らないといけないですよね?」
「そうだな、戻るよ。エマ、つばさを頼む。和希をまた寄越すから、帰りは送ってもらえ」
佑磨さんはそう言うと、天ヶ瀬さんと一緒に会議室を出ていった。
「ねー、つばさ。おばあちゃまの試着会で佑磨と出会ったって本当?」
佑磨さんがいなくなった途端、好奇心を隠すことなくエマさんが尋ねてくる。
「あ、はい。出会ったってほどのものじゃなくて、ほんの少し顔を合わせただけなんですけど」
「そうなの? それで、すぐに結婚? よっぽど、忘れられない出会いだったのね」
感心するように言われるから、気恥ずかしくて、私も尋ねた。
「エマさんと佑磨さんは幼なじみなんですよね?」
「うーん、幼なじみっていうより、親戚みたいな感じかな」
「親戚?」
「海堂のおじいさんとおばあちゃまは昔からの知り合いだし、海堂家が家族で集まることがあれば、昔からうちも呼ばれてて。兄妹みたいに育ったの」
「そうだったんですね」
エマさんには友人というより、家族という意識の方が強いのだろう。どちらにしろ、私が思ってる以上に、彼らの付き合いは深いみたい。
「佑磨が幼なじみだって言ったの?」
「あっ、ううん。天ヶ瀬さんが。佑磨さんのためなら、なんでも協力くださる仲だって。すごく信頼関係があるんだなって思ってて」
そう答えると、エマさんは何かを考えるように、あごに手をあてた。
「和希か。それをいうなら、和希も同じなんだけど。まるで、私たちが特別な関係みたいに、つばさに伝えたのね。あ、ねー、変に誤解されたら嫌だから、先に言っておくけど、私と佑磨はなんにもないからね」
「えっ……」
そんなこと、考えてもなかったけど。
エマさんの目は、思うより真剣だ。
そっか。これから、いろんなパーティーに参加しなきゃいけなくなるとは聞いたけど、出会う女性の中には、佑磨さんの元カノがいる可能性もあるのだろう。
そういった機会が多いエマさんは、これまでも、佑磨さんとの関係を疑われてきたのだろうか。聞いてもないのに、彼との関係を話してくる。
「高校生の時だったかな。海堂のおじいさんが私と佑磨を結婚させたいって言い出したんだけど、結局、フィアンセにはならなかったわ。だからね、佑磨とは今でもいいお友だちなのよ」
「リトルグレイスの美梨さんに見せてもらったの。正確に言うと、美梨さんがおばあちゃまに見せて、それをママに送ったの。ママも褒めてたわ。勉強したの?」
「ファッション関係の大学で、デザインの勉強をしたぐらいなんですけど」
「そうなの。ねぇ、もっとデザインの勉強してみない? 私もビジネスパートナーを探してるのよ。佑磨の奥さまとなら、信頼してやっていけると思うわ」
「えっと……」
急な話で、思うように考えがまとまらず、困惑してしまう。
「ずいぶん、勝手な話するんだな。つばさをあんまり困らせるなよ」
佑磨さんが助け船を出してくれる。
「佑磨、あなた、すごくもったいないことしてるのよ。つばさ、仕事はやめるんでしょう? だったら、デザインの勉強をさせるといいわ」
「デザインか」
佑磨さんは私の書いた落書きを手に取る。なんだか、恥ずかしい。趣味で書いてる程度のものなのに。
「これ、つばさが書いたのか?」
「はい……。時々、思いついたものを」
「そうか」
そっけなく彼は言って、ファイルを閉じると天ヶ瀬さんに渡した。
私の落書き、どうなっちゃうんだろう。
「佑磨、ほんとによ、ほんとに考えておいてね。海堂リゾートの未来の社長夫人がデザインするアクセサリーは、絶対に大注目されるから」
「つばさの気持ちが先だ」
「それはそうだけど……」
「エマはせっかちすぎる。それより、ドレスのデザイン画を見せてくれないか。遥香さん、早速、書いてくれたんだろう?」
催促されて、ようやく、エマさんは本題のスケッチブックを取り出す。
「そういう佑磨も、せっかち」
ぼやきつつ、スケッチブックを開いて見せてくれる。
遥香さんが私のためにデザインしてくれたと思うだけでテンションがあがるのに、そこに描かれたデザインの美しさに、すぐに目は釘付けになる。
「わあ、素敵。Aラインですか?」
「ええ、そうよ。試着会でプリンセスラインを着てくれてたでしょう? とてもよく似合ってたから、あれをベースにアレンジもいいと思ってるんだけど、今回はご提案だから」
「ハルカ・モトミヤと言えば、プリンセスラインですもんね。でも、違う形もすごく好きです」
「ありがとう。お色直しのドレスもいろいろ考えてるの。世界で一つだけの、とっても素敵なドレスを作るわ」
「すごくぜいたくで、ドキドキします」
これも全部、佑磨さんのおかげ。
佑磨さんを見上げると、彼も満足そうに笑み、「気に入るドレスになるまで、いくらでも要望を出していい」と言ってくれる。
「ぜいたくしていいのよ、結婚式だもの。あとはね、マーメイドラインも素敵だと思うわ」
「マーメイドは……どうかな。あんまり身長高くないから」
「不安に思うのね」
「やっぱり、ふんわりしたドレスの方が好きです」
「オッケー」
エマさんはスケッチブックに私の要望を書き込む。
それから、いくつかの質問が続いた。
前もって、天ヶ瀬さんを通して私の要望は遥香さんに伝えていた。その確認を兼ねつつ、デザイン画をもとに、新たな要望を伝えていく。
「それじゃあ、実際にドレスを見てみる? 試着会では着れなかったドレスを着てみても大丈夫よ」
「いいんですか? あ、でも、佑磨さんはもうお仕事に戻らないといけないですよね?」
「そうだな、戻るよ。エマ、つばさを頼む。和希をまた寄越すから、帰りは送ってもらえ」
佑磨さんはそう言うと、天ヶ瀬さんと一緒に会議室を出ていった。
「ねー、つばさ。おばあちゃまの試着会で佑磨と出会ったって本当?」
佑磨さんがいなくなった途端、好奇心を隠すことなくエマさんが尋ねてくる。
「あ、はい。出会ったってほどのものじゃなくて、ほんの少し顔を合わせただけなんですけど」
「そうなの? それで、すぐに結婚? よっぽど、忘れられない出会いだったのね」
感心するように言われるから、気恥ずかしくて、私も尋ねた。
「エマさんと佑磨さんは幼なじみなんですよね?」
「うーん、幼なじみっていうより、親戚みたいな感じかな」
「親戚?」
「海堂のおじいさんとおばあちゃまは昔からの知り合いだし、海堂家が家族で集まることがあれば、昔からうちも呼ばれてて。兄妹みたいに育ったの」
「そうだったんですね」
エマさんには友人というより、家族という意識の方が強いのだろう。どちらにしろ、私が思ってる以上に、彼らの付き合いは深いみたい。
「佑磨が幼なじみだって言ったの?」
「あっ、ううん。天ヶ瀬さんが。佑磨さんのためなら、なんでも協力くださる仲だって。すごく信頼関係があるんだなって思ってて」
そう答えると、エマさんは何かを考えるように、あごに手をあてた。
「和希か。それをいうなら、和希も同じなんだけど。まるで、私たちが特別な関係みたいに、つばさに伝えたのね。あ、ねー、変に誤解されたら嫌だから、先に言っておくけど、私と佑磨はなんにもないからね」
「えっ……」
そんなこと、考えてもなかったけど。
エマさんの目は、思うより真剣だ。
そっか。これから、いろんなパーティーに参加しなきゃいけなくなるとは聞いたけど、出会う女性の中には、佑磨さんの元カノがいる可能性もあるのだろう。
そういった機会が多いエマさんは、これまでも、佑磨さんとの関係を疑われてきたのだろうか。聞いてもないのに、彼との関係を話してくる。
「高校生の時だったかな。海堂のおじいさんが私と佑磨を結婚させたいって言い出したんだけど、結局、フィアンセにはならなかったわ。だからね、佑磨とは今でもいいお友だちなのよ」
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる