強欲御曹司の溺愛

水城ひさぎ

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強欲な甘い過去

本当のライバル

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 どうして、エマさんは嘘をついたのだろう。

 佑磨さんと付き合ってたこと隠したって、そんなの、すぐにわかってしまうのに。

 佑磨さんは交際を簡単に認めて、後ろめたい関係はないと言ってくれたんだから、エマさんだって下手な嘘はつかないで、付き合ってたけど気にしないでって、言ってくれたらよかったのに。

 でも、言えないか……。変に嘘をつかれて、余計に気になってしまったけど。

「つばさ、お待たせ。ごめんなさいね、急に呼び出して。伝えたいことがあったの」

 待ち合わせのカフェに、エマさんは少し遅れてやってきた。

 それほど待ってないのだと伝えると、彼女は私の前に座り、朗報よ、とにっこり笑う。

「ママが週末、つばさに会いに来るっていうから、はやく知らせたいと思って」
「え、本当ですか? 遥香さんにお会いできるんですか?」
「もちろんよ。つばさに直接会わないと、ドレスは完成しないもの」
「夢みたいです……」

 世界的デザイナーの本宮遥香に会えるなんて。あの試着会へ出かけてから、どんなに思い描いても叶わない夢がどんどん叶っていくみたい。

「素敵な結婚式になるように、全力でバックアップさせてもらいますね」

 純粋な笑みを浮かべるエマさんはとてもいい人だし、綺麗だし、好きだなって思う。

 聞いてもないのに佑磨さんとはなんでもないなんて言うから、ちょっと気になってネットで調べてしまったのは、後悔だ。しかも、それを佑磨さんに気づかれてしまった。

 この胸のモヤモヤを生み出したのは私自身で、エマさんを悪く思うのは違うとも思う。

「結婚式にはエマさんも出てくれますか?」
「呼んでいただけるなら、もちろん」

 彼女はそう即答した。

 佑磨さんとの間にわだかまりはないのだろうか。あるから、嘘をついたんじゃないかって勘繰ってしまったけど。

「エマさんは、私をどう思ってるんでしょうか……」

 直接、佑磨さんとの関係を尋ねる勇気はなくて、つぶやくように言ってしまう。

「どうって、かわいい人だって思ってるわよ? 佑磨がすぐに結婚を決断したのは意外だったけど、つばさに会ってみて、納得しちゃった」
「意外って、佑磨さんには結婚願望がなかったんですか?」
「結婚観なんて知らないけど、彼ね……あー、やめておく。佑磨に知られたら怒られちゃいそう」

 エマさんは何か言いかけて、やめてしまう。余計に気になる。

「知られるって、もしかして……。えっと、あの、もしかして、エマさんと佑磨さんがお付き合いしてたこと、黙ってるように言われてるなら、私、大丈夫です。気にしてないです」

 ちゅうちょしつつ、意を決して口にした。

 エマさんとはこれからも仲良くしたいなって思うから、嘘を受け入れたままは嫌だったのだ。

 するとエマさんは、あちゃーって顔をする。そんな表情もかわいらしい人だ。

「知っちゃったの? ネットにも載ってるし、バレバレか」

 彼女はぺろりと舌を出す。全然、深刻そうじゃない。やっぱり、わだかまりなんてないのだろう。

「どうして、うそついたんですか?」

 尋ねると、彼女は肩をすくめた。

「あれは、付き合ってたなんて言わないと思って。深い意味はないの。いずれ、つばさの耳にうわさが入るかもって思ったから、先に否定しておこうと思ったの」

 付き合ってたけど、付き合ってたとはいえない程度の関係だと、彼女は言う。

 少なくとも、エマさんは佑磨さんが好きだったのだろう。そんな気がする。

「週刊誌に撮られちゃったし、よく、付き合ってたんでしょって言われるから、違うっていつも答えてるの」
「そう、だったんですか……」
「ごめんね、余計な心配かけちゃった。佑磨はお友だちの一人よ。恋人としては、だめ。一緒にいても、全然、幸福じゃなかった」
「え……」
「あ、また余計な話」
「大丈夫です。聞きたいです」

 思わず、そう言っていた。

 私と佑磨さんの関係と、エマさんと彼の関係は違うものだって、はっきりさせたかったのかもしれない。

「聞きたいの? じゃあ、言っちゃおうかな。私ね、つばさが羨ましいの。佑磨にはずっと好きな人がいるのに、つばさとはすぐに結婚しちゃうんだなって思って。すごく愛されてて羨ましい」

 エマさんはストレートな性格の人だ。

 好きなものは好き。だめなものはだめ。うらやましいって素直に言える人。だから、すべての言葉に嘘はないのだろう。

 彼女の中で、佑磨さんと付き合ってた過去は、ないに等しいものなのだ。そう確信できた。

「佑磨さんがずっと好きだった人、近くにいるんでしょうか」
「どうかなー。私もね、よく知らないの。ほら、私、ずっと海外にいるし、佑磨とよく遊んだのも大学時代の話。でもね、彼の心にはいつも誰かがいるみたいだった」

 だから、別れたんだろうか。

 窓の外へと視線を向けたエマさんは遠い目をする。

「ううん、きっともっと前。高校時代に私と佑磨を結婚させたいって話が持ち上がったときも、佑磨には好きな人がいるみたいだった。和希は何か知ってるみたいだったけど、ほら、あの人、いつも何考えてるかわからないから、尻尾もつかませないの」

 エマさんはこちらへ視線を戻し、にこりと微笑む。

「佑磨はつばさを選んだんだから、気にしないで。初恋の人ぐらい、誰だっているでしょう? つばさにも」
「あ、はい、きっと……たぶん」
「なーに、あいまい」

 くすくす笑って、エマさんは私の顔をのぞき込む。

「つばさにライバルがいるとしたら、私じゃなくて、その女の子。私じゃ、ライバルにもなれなかったの」
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