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寝室までの距離
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「それではかわいくて仕方ないね、湊くん」
篭谷稔は、グラスを傾けて、穏やかに微笑んだ。
バーの別の場所では、同僚らが仕事の疲れを忘れて盛り上がっている。俺はというと、彼らから離れた場所で、篭谷先輩と静かに酒を飲んでいた。
「憎たらしい時もありますよ」
「またまたそんなこと言って。婚約したばかりで同棲とは羨ましいよ。とても可愛らしいお嬢さんだよね、彼女」
「先輩は会ったことありましたか?」
沙耶を紹介したことはないのに、と驚きながら問う。
「会社の前で見かけたことがあるよ。ほら、山口くんが彼女のことを知ってるから。上條病院のご令嬢なんだろう?」
「少し違いますよ」
「違う?」
きょとんとする先輩に、俺はどうにもならない違和感を覚えて尋ねた。
「それより、朔が沙耶を知ってるって?」
「ああ。なんでも、山口くんの姉だか妹さんだかが、彼女の友だちだとかで」
「姉だか妹だか?」
「そう。山口くんは双子だからね。といっても、姉だか妹だかには似てないらしいが」
そう言って、篭谷先輩がバーカウンターの方へ視線を向けると、ちょうど後輩の山口朔が何気にこちらを見たところだった。
「山口くん、ちょっとこっちで飲まないか?」
篭谷先輩が声をかけると、朔は「俺?」と不思議そうに自分を指さした後、ワインの入ったグラスを持ってこちらへとやってきた。
今日は十数人の同僚と、バーを貸し切りにして飲みに来ていた。忘年会と言えば忘年会だが、こういった集まりは定期的に行われている。俺は世話になっている篭谷先輩に誘われれば来るぐらいだ。
朔は一つ年下の後輩で、そんなに親しいわけではない。篭谷先輩に可愛がられている部下の一人として認知している。
朔にとっての俺もそうだろう。たいして話をしたことがないのにも関わらず、俺のいる席へ呼ばれたことに困惑は隠せない様子だ。
「まあ、座れよ」
篭谷先輩に促されて、朔は先輩の隣に好んで座った。俺の隣の方が広く空いているが、きっと俺の横では落ち着かないのだろう。
「今ね、君の噂話をしてたんだよ」
篭谷先輩がそう切り出すと、朔は目を丸くする。
「噂……、ですか?」
「山口くん、上條さんのこと知ってるって前に話してくれただろう?」
「え、あ、はい。それが何か?」
「君も可愛い子だって言ってたよね?」
「あ……、はあ、まあ……」
俺は眉をひそめた。朔が後頭部に手を当てて、少し照れたようにはにかんだからだ。
いくら店内が薄暗いといっても、朔の表情ぐらいはわかる。しかし、先輩は何も気にしてないようだ。俺の肩に手を置いて、朔に言う。
「湊くんがお見合いしたことは聞いただろう? お相手がね、その上條沙耶さんなんだよ。いずれ結婚するらしいんだ」
先輩は「な?」と俺の方を見たから全く気づかなかっただろうが、そう聞かされた時の朔の表情を、俺は見逃さなかった。
驚きの中に、明らかな動揺を浮かべた朔の目は、一瞬だけ俺の瞳を捉えたが、すぐに平静を取り戻すように伏せられた。
ショックが大きい時は声も出ないのだ。俺は朔を見てそう思った。少なくとも、朔は沙耶に好印象を持っているのだろう。
「山口くんの双子の……」
「妹ですか?」
「そう。妹さんが上條さんの友だちなんだよね?」
「ええ……。親しくしてるって言ってましたよ。妹は実家に暮らしてて、あんまり会わないですけど」
朔は、なんでそんなことを聞くのだろう、と半信半疑な様子で答えた。
「妹さんの名前、なんだっけ? 湊くんもいずれ、君の妹さんに会うこともあるだろう」
「え、ええ。でも湊先輩、結婚なんてまだ先の話だって前にしてなかったですか? あ、……篭谷先輩にそう話してるのを聞いただけですけど……」
朔の戸惑った表情を見て、俺は薄笑いを浮かべた。
「本当に結婚したい相手に出会うと、簡単に気が変わるんだよ。君はまだそういう女性に会ったことがないからわからないかもしれないが」
「湊くん、意地悪なことを言ったらいけないよ。山口くんだって、好きな女性の一人や二人いるだろう?」
篭谷先輩が俺をたしなめると、朔は苦笑いし、「二人はいないですけどね」と落胆の表情でつぶやいた。
「で、婚約者をマンションに残して、こんな時間まで飲んでて大丈夫かい?」
篭谷先輩は朔の気持ちの変化に鈍感だ。いや、敏感に気づくタイプなら、すでに彼の心が沙耶の存在によって揺らいだことに気づいているだろう。
「ええ。彼女も忘年会で遅くなるって言ってたので。近くで飲んでるみたいだし、あんまり遅くなるようなら、このまま迎えに行きますよ」
「へえー。湊くんも変わるもんだね。君が女性を迎えに行くなんて話、初めて聞いたよ」
「相手次第ですよ」
「よほど惚れてるんだな」
「彼女にはそれだけの価値がありますからね」
「価値…」
とつぶやいたのは、朔だった。そして、俺と目が合うと、とっさに何か言わなくてはと思ったのだろう。興味のないことを口にする。
「そう言えば、妹も今日は忘年会だって言ってましたよ。あ、親から聞いたんですけど」
「山口くんの妹さんは、上條さんとどんな知り合い?」
と篭谷先輩が尋ねると、朔は「上條さんと同じ会社に働いてます」と言う。そこで俺ははじめて朔の妹に興味が湧いた。
「名前、なんだって? 今夜沙耶に聞いてみるよ」
「じゅん、です。山口純。きっとすぐにわかりますよ。一番の仲良しだって言ってましたから」
「純……?」
俺はある女性の顔を思い出して、頬が引きつるのを感じていた。そのある女性は、沙耶が純ちゃんと呼んでいる女性に他ならないだろう。
「知ってますか? 湊先輩」
「まあ、名前ぐらいはね。そうか。俺はどうやら、山口と名のつく人間とはウマが合わないみたいだな」
「……おいおい、湊くん」
篭谷先輩は呆れかえるが、朔はあまり俺に期待していないのだろう。沙耶と俺が結婚するという話を聞いた時よりも平然として、「いいんですよ、篭谷先輩」と冷静な笑みを浮かべた。
「それではかわいくて仕方ないね、湊くん」
篭谷稔は、グラスを傾けて、穏やかに微笑んだ。
バーの別の場所では、同僚らが仕事の疲れを忘れて盛り上がっている。俺はというと、彼らから離れた場所で、篭谷先輩と静かに酒を飲んでいた。
「憎たらしい時もありますよ」
「またまたそんなこと言って。婚約したばかりで同棲とは羨ましいよ。とても可愛らしいお嬢さんだよね、彼女」
「先輩は会ったことありましたか?」
沙耶を紹介したことはないのに、と驚きながら問う。
「会社の前で見かけたことがあるよ。ほら、山口くんが彼女のことを知ってるから。上條病院のご令嬢なんだろう?」
「少し違いますよ」
「違う?」
きょとんとする先輩に、俺はどうにもならない違和感を覚えて尋ねた。
「それより、朔が沙耶を知ってるって?」
「ああ。なんでも、山口くんの姉だか妹さんだかが、彼女の友だちだとかで」
「姉だか妹だか?」
「そう。山口くんは双子だからね。といっても、姉だか妹だかには似てないらしいが」
そう言って、篭谷先輩がバーカウンターの方へ視線を向けると、ちょうど後輩の山口朔が何気にこちらを見たところだった。
「山口くん、ちょっとこっちで飲まないか?」
篭谷先輩が声をかけると、朔は「俺?」と不思議そうに自分を指さした後、ワインの入ったグラスを持ってこちらへとやってきた。
今日は十数人の同僚と、バーを貸し切りにして飲みに来ていた。忘年会と言えば忘年会だが、こういった集まりは定期的に行われている。俺は世話になっている篭谷先輩に誘われれば来るぐらいだ。
朔は一つ年下の後輩で、そんなに親しいわけではない。篭谷先輩に可愛がられている部下の一人として認知している。
朔にとっての俺もそうだろう。たいして話をしたことがないのにも関わらず、俺のいる席へ呼ばれたことに困惑は隠せない様子だ。
「まあ、座れよ」
篭谷先輩に促されて、朔は先輩の隣に好んで座った。俺の隣の方が広く空いているが、きっと俺の横では落ち着かないのだろう。
「今ね、君の噂話をしてたんだよ」
篭谷先輩がそう切り出すと、朔は目を丸くする。
「噂……、ですか?」
「山口くん、上條さんのこと知ってるって前に話してくれただろう?」
「え、あ、はい。それが何か?」
「君も可愛い子だって言ってたよね?」
「あ……、はあ、まあ……」
俺は眉をひそめた。朔が後頭部に手を当てて、少し照れたようにはにかんだからだ。
いくら店内が薄暗いといっても、朔の表情ぐらいはわかる。しかし、先輩は何も気にしてないようだ。俺の肩に手を置いて、朔に言う。
「湊くんがお見合いしたことは聞いただろう? お相手がね、その上條沙耶さんなんだよ。いずれ結婚するらしいんだ」
先輩は「な?」と俺の方を見たから全く気づかなかっただろうが、そう聞かされた時の朔の表情を、俺は見逃さなかった。
驚きの中に、明らかな動揺を浮かべた朔の目は、一瞬だけ俺の瞳を捉えたが、すぐに平静を取り戻すように伏せられた。
ショックが大きい時は声も出ないのだ。俺は朔を見てそう思った。少なくとも、朔は沙耶に好印象を持っているのだろう。
「山口くんの双子の……」
「妹ですか?」
「そう。妹さんが上條さんの友だちなんだよね?」
「ええ……。親しくしてるって言ってましたよ。妹は実家に暮らしてて、あんまり会わないですけど」
朔は、なんでそんなことを聞くのだろう、と半信半疑な様子で答えた。
「妹さんの名前、なんだっけ? 湊くんもいずれ、君の妹さんに会うこともあるだろう」
「え、ええ。でも湊先輩、結婚なんてまだ先の話だって前にしてなかったですか? あ、……篭谷先輩にそう話してるのを聞いただけですけど……」
朔の戸惑った表情を見て、俺は薄笑いを浮かべた。
「本当に結婚したい相手に出会うと、簡単に気が変わるんだよ。君はまだそういう女性に会ったことがないからわからないかもしれないが」
「湊くん、意地悪なことを言ったらいけないよ。山口くんだって、好きな女性の一人や二人いるだろう?」
篭谷先輩が俺をたしなめると、朔は苦笑いし、「二人はいないですけどね」と落胆の表情でつぶやいた。
「で、婚約者をマンションに残して、こんな時間まで飲んでて大丈夫かい?」
篭谷先輩は朔の気持ちの変化に鈍感だ。いや、敏感に気づくタイプなら、すでに彼の心が沙耶の存在によって揺らいだことに気づいているだろう。
「ええ。彼女も忘年会で遅くなるって言ってたので。近くで飲んでるみたいだし、あんまり遅くなるようなら、このまま迎えに行きますよ」
「へえー。湊くんも変わるもんだね。君が女性を迎えに行くなんて話、初めて聞いたよ」
「相手次第ですよ」
「よほど惚れてるんだな」
「彼女にはそれだけの価値がありますからね」
「価値…」
とつぶやいたのは、朔だった。そして、俺と目が合うと、とっさに何か言わなくてはと思ったのだろう。興味のないことを口にする。
「そう言えば、妹も今日は忘年会だって言ってましたよ。あ、親から聞いたんですけど」
「山口くんの妹さんは、上條さんとどんな知り合い?」
と篭谷先輩が尋ねると、朔は「上條さんと同じ会社に働いてます」と言う。そこで俺ははじめて朔の妹に興味が湧いた。
「名前、なんだって? 今夜沙耶に聞いてみるよ」
「じゅん、です。山口純。きっとすぐにわかりますよ。一番の仲良しだって言ってましたから」
「純……?」
俺はある女性の顔を思い出して、頬が引きつるのを感じていた。そのある女性は、沙耶が純ちゃんと呼んでいる女性に他ならないだろう。
「知ってますか? 湊先輩」
「まあ、名前ぐらいはね。そうか。俺はどうやら、山口と名のつく人間とはウマが合わないみたいだな」
「……おいおい、湊くん」
篭谷先輩は呆れかえるが、朔はあまり俺に期待していないのだろう。沙耶と俺が結婚するという話を聞いた時よりも平然として、「いいんですよ、篭谷先輩」と冷静な笑みを浮かべた。
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