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奪われるまでの距離
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目的の家の近くまで来ると、門の前で待つ浅田さんの姿が見えた。
「寒い中、すみません」
三月とはいえ、まだまだ夜は寒い。すぐに駆け寄って頭を下げると、「こんな時間にチャイムを鳴らされても困るからな」と、浅田さんはぶっきらぼうに答えた。
「無理言ってすみません。明日まで待っていられなくて」
重ねて謝罪する俺は、玄関ドアの方へ目を向ける。沙耶さんはまだ出てきていないようだ。
「上條さんは迷ってるよ」
浅田さんはやれやれと頭を撫で付ける。
「迷ってる?」
「山口くんは何も考えずに来たようだけどね、これから上條さんをどこへ連れて行くつもりだい?」
「どこ……って」
言われてみれば、沙耶さんに会うことが目的で、そこまで考えていなかった。
「身勝手で無鉄砲な人間ばかりを相手にすると疲れるね。しかしまあ、こうして山口くんが来てくれたんだから、俺としては今日連れ帰って欲しいんだが」
「沙耶さんはなんて?」
「自宅に帰る決心はしているようだが、出来たらその前に結城湊に会いたいようだね」
「湊先輩ですか……」
少し声のトーンが下がってしまう。沙耶さんの頭の中は湊先輩のことでいっぱいなんだろう。
「会わせたくない?」
「え、いえっ」
「顔に書いてあるよ」
「そんなことはないです。沙耶さんが会いたいなら……」
ふーん、と浅田さんはうなずく。
「まあ、会わせたところで、上條さんが嫌な思いをするだけかもしれないけどね。結城湊はきっと何も言わずにいなくなった彼女を責めるだけだろう」
「それは……」
違うとは言い切れない。湊先輩はいらいらしていた。沙耶さんの話に耳を傾ける余裕があるかは疑問だ。
「まあ、判断は君に任せるよ。上條さんは俺より、君になら秘めた思いを話すかもしれないからね。ただ……」
浅田さんは言葉を濁す。
「ただ?」
「もし君がアパートに彼女を連れて行くつもりなら、上條さんは嫌がるかもしれないね」
「え……」
「いや、君を嫌がってるわけじゃないとは思うよ。ただ彼女の話を聞くにも場所は考えないとね。あの辺りのレストランや喫茶店にいたら、すぐに結城が来るんじゃないか? かといって、君のアパートならゆっくり話せるかもしれないが、抵抗はあるだろうという話だ」
「確かに……、あまり綺麗ではないですが」
俺が恥ずかしげにつぶやくと、浅田さんは目を丸くして、わざとらしく声を立てて笑った。
「君は天然かい?」
「天然と言われたことは一度も……」
「では、鈍感か。いくら色気のない上條さんでも、男と二人きりで密室にいるのは不安なのさ」
「え……っ」
「君にその気はなくても、もしかしたらあやまちが起きるかもしれないだろう?」
「そんな、そんな心配するようなことはしないですよ。絶対です、絶対しません」
浅田さんはますます楽しげに笑う。
「そんな剣幕で俺に言われても困るよ。俺が言いたいのはさ、上條さんは少なくとも山口くんを男として意識してるってことだよ」
「え……」
さっきから浅田さんは、考えてもみなかったことばかり言うから、驚いてしまう。
「そうじゃなきゃ、あの世間しらずのお嬢さんは、ほいほいと君についていくさ」
「そうでしょうか」
「そうさ。山口くんにもらったカーネーションも、もう枯れているのに大切にしてるよ。その気持ちを裏切るようなことを君はしないと俺は思うから、今日連れて帰ってもいいと言ってるつもりだよ」
「沙耶さんがまだ花束を……」
胸がじんっと暑くなる。
「上條さんの恋人が誰になろうが興味はないけどね、次の恋はせめて、ゆっくりと気持ちを育んでいける相手がいいとは思うよ」
「次の恋ですか……」
「結城湊とはもう、絶望的なんだろうよ。上條さんはきちんと別れたいだけさ。彼との結婚を是が非でも続けたいわけじゃないだろうさ」
「湊先輩は別れるつもりなんてないと思います」
それだけは断言できた。湊先輩を毎日見てた俺にはわかる。
「それは君の口から上條さんに話してやれよ。君が言えるならね。何の打算もないなら、話してやれるはずさ」
「……話せますよ」
「そうか。じゃあ、上條さんにまた声をかけてくるよ。ちょっとそこで待っていてくれ」
浅田さんはそう言い置いて、玄関の中へと入っていった。
沙耶さんに何があったのだろう。
開いた玄関ドアに吸い込まれていく浅田さんの背中を見送りながら、俺は不安でならない。
沙耶さんがいつか湊先輩と別れさせられることになるとは知っていたが、彼女は頑張ってみるのだと言っていた。
彼女から別れを切り出すとはにわかには信じられない。先輩も少しも別れたがっていない。
俺はどうしたいのだろう。
沙耶さんへの思いを自分でも持て余していて、湊先輩から無理やり彼女を奪い取ろうとは思わないと思いながらも、彼女が少しでも俺を意識してくれるなら、恋人になりたいという願望はある。
曖昧な気持ちはいけない。こうして中途半端な親切が、彼女を苦しめているのかもしれないのだから。
俺は沙耶さんに言わなければいけないだろう。湊先輩に別れるつもりはないから、今からマンションに帰るべきだと。
浅田さんには「言える」と見得を切ったが、本当のところはどうなのだろう。自分でも自分の気持ちに責任が持てない。
「朔くん……」
気づくと、沙耶さんが一人で門の外へ出てくるところだった。
洋服も鞄も、土曜日に会った時のまま。違うのは髪型ぐらいか。いつもアップにしている髪が、今はサラサラと肩に流れている。
少し疲れているようで、儚げに微笑む沙耶さんが今日はやたらと頼りなげで、俺の胸はギュッと苦しくなる。
抱きしめてあげたくなる女性は沙耶さんだけだ。どうして湊先輩はこんなに可愛らしい彼女を守らないのだろう。
悔しい。彼女を守れる立場にない自分がもどかしい。
「ごめんね、朔くん……」
沙耶さんは力なく言う。
「謝ることなんてないですよ。沙耶さんが無事で良かった」
「純ちゃんも心配してるよね」
「ああ、そうだ。純に電話してやらなきゃ。今から俺のアパートに来るように言いますよ」
「今から? もう遅いよ」
「そんな心配はいりませんから。だから沙耶さん、今から俺のアパートに行きましょう」
純がいるなら安心なのだろう。沙耶さんはちょっと嬉しそうに微笑んで、小さくうなずく。
「浅田さんに挨拶は?」
「もうしてきたの。すごくお世話になったけど、自分で好きで巻き込まれただけだから気にするなって言ってくれたの」
「そうですか。じゃあ行きましょう」
俺は歩き出しながら、純に電話をかけた。純は連絡を待っていたのかと思うぐらい早く電話に出て、すぐに来ると言う。
電話をする俺の隣を歩く沙耶さんは、「朔くん、迎えに来てくれてありがとう」と、か細くつぶやいた。
目的の家の近くまで来ると、門の前で待つ浅田さんの姿が見えた。
「寒い中、すみません」
三月とはいえ、まだまだ夜は寒い。すぐに駆け寄って頭を下げると、「こんな時間にチャイムを鳴らされても困るからな」と、浅田さんはぶっきらぼうに答えた。
「無理言ってすみません。明日まで待っていられなくて」
重ねて謝罪する俺は、玄関ドアの方へ目を向ける。沙耶さんはまだ出てきていないようだ。
「上條さんは迷ってるよ」
浅田さんはやれやれと頭を撫で付ける。
「迷ってる?」
「山口くんは何も考えずに来たようだけどね、これから上條さんをどこへ連れて行くつもりだい?」
「どこ……って」
言われてみれば、沙耶さんに会うことが目的で、そこまで考えていなかった。
「身勝手で無鉄砲な人間ばかりを相手にすると疲れるね。しかしまあ、こうして山口くんが来てくれたんだから、俺としては今日連れ帰って欲しいんだが」
「沙耶さんはなんて?」
「自宅に帰る決心はしているようだが、出来たらその前に結城湊に会いたいようだね」
「湊先輩ですか……」
少し声のトーンが下がってしまう。沙耶さんの頭の中は湊先輩のことでいっぱいなんだろう。
「会わせたくない?」
「え、いえっ」
「顔に書いてあるよ」
「そんなことはないです。沙耶さんが会いたいなら……」
ふーん、と浅田さんはうなずく。
「まあ、会わせたところで、上條さんが嫌な思いをするだけかもしれないけどね。結城湊はきっと何も言わずにいなくなった彼女を責めるだけだろう」
「それは……」
違うとは言い切れない。湊先輩はいらいらしていた。沙耶さんの話に耳を傾ける余裕があるかは疑問だ。
「まあ、判断は君に任せるよ。上條さんは俺より、君になら秘めた思いを話すかもしれないからね。ただ……」
浅田さんは言葉を濁す。
「ただ?」
「もし君がアパートに彼女を連れて行くつもりなら、上條さんは嫌がるかもしれないね」
「え……」
「いや、君を嫌がってるわけじゃないとは思うよ。ただ彼女の話を聞くにも場所は考えないとね。あの辺りのレストランや喫茶店にいたら、すぐに結城が来るんじゃないか? かといって、君のアパートならゆっくり話せるかもしれないが、抵抗はあるだろうという話だ」
「確かに……、あまり綺麗ではないですが」
俺が恥ずかしげにつぶやくと、浅田さんは目を丸くして、わざとらしく声を立てて笑った。
「君は天然かい?」
「天然と言われたことは一度も……」
「では、鈍感か。いくら色気のない上條さんでも、男と二人きりで密室にいるのは不安なのさ」
「え……っ」
「君にその気はなくても、もしかしたらあやまちが起きるかもしれないだろう?」
「そんな、そんな心配するようなことはしないですよ。絶対です、絶対しません」
浅田さんはますます楽しげに笑う。
「そんな剣幕で俺に言われても困るよ。俺が言いたいのはさ、上條さんは少なくとも山口くんを男として意識してるってことだよ」
「え……」
さっきから浅田さんは、考えてもみなかったことばかり言うから、驚いてしまう。
「そうじゃなきゃ、あの世間しらずのお嬢さんは、ほいほいと君についていくさ」
「そうでしょうか」
「そうさ。山口くんにもらったカーネーションも、もう枯れているのに大切にしてるよ。その気持ちを裏切るようなことを君はしないと俺は思うから、今日連れて帰ってもいいと言ってるつもりだよ」
「沙耶さんがまだ花束を……」
胸がじんっと暑くなる。
「上條さんの恋人が誰になろうが興味はないけどね、次の恋はせめて、ゆっくりと気持ちを育んでいける相手がいいとは思うよ」
「次の恋ですか……」
「結城湊とはもう、絶望的なんだろうよ。上條さんはきちんと別れたいだけさ。彼との結婚を是が非でも続けたいわけじゃないだろうさ」
「湊先輩は別れるつもりなんてないと思います」
それだけは断言できた。湊先輩を毎日見てた俺にはわかる。
「それは君の口から上條さんに話してやれよ。君が言えるならね。何の打算もないなら、話してやれるはずさ」
「……話せますよ」
「そうか。じゃあ、上條さんにまた声をかけてくるよ。ちょっとそこで待っていてくれ」
浅田さんはそう言い置いて、玄関の中へと入っていった。
沙耶さんに何があったのだろう。
開いた玄関ドアに吸い込まれていく浅田さんの背中を見送りながら、俺は不安でならない。
沙耶さんがいつか湊先輩と別れさせられることになるとは知っていたが、彼女は頑張ってみるのだと言っていた。
彼女から別れを切り出すとはにわかには信じられない。先輩も少しも別れたがっていない。
俺はどうしたいのだろう。
沙耶さんへの思いを自分でも持て余していて、湊先輩から無理やり彼女を奪い取ろうとは思わないと思いながらも、彼女が少しでも俺を意識してくれるなら、恋人になりたいという願望はある。
曖昧な気持ちはいけない。こうして中途半端な親切が、彼女を苦しめているのかもしれないのだから。
俺は沙耶さんに言わなければいけないだろう。湊先輩に別れるつもりはないから、今からマンションに帰るべきだと。
浅田さんには「言える」と見得を切ったが、本当のところはどうなのだろう。自分でも自分の気持ちに責任が持てない。
「朔くん……」
気づくと、沙耶さんが一人で門の外へ出てくるところだった。
洋服も鞄も、土曜日に会った時のまま。違うのは髪型ぐらいか。いつもアップにしている髪が、今はサラサラと肩に流れている。
少し疲れているようで、儚げに微笑む沙耶さんが今日はやたらと頼りなげで、俺の胸はギュッと苦しくなる。
抱きしめてあげたくなる女性は沙耶さんだけだ。どうして湊先輩はこんなに可愛らしい彼女を守らないのだろう。
悔しい。彼女を守れる立場にない自分がもどかしい。
「ごめんね、朔くん……」
沙耶さんは力なく言う。
「謝ることなんてないですよ。沙耶さんが無事で良かった」
「純ちゃんも心配してるよね」
「ああ、そうだ。純に電話してやらなきゃ。今から俺のアパートに来るように言いますよ」
「今から? もう遅いよ」
「そんな心配はいりませんから。だから沙耶さん、今から俺のアパートに行きましょう」
純がいるなら安心なのだろう。沙耶さんはちょっと嬉しそうに微笑んで、小さくうなずく。
「浅田さんに挨拶は?」
「もうしてきたの。すごくお世話になったけど、自分で好きで巻き込まれただけだから気にするなって言ってくれたの」
「そうですか。じゃあ行きましょう」
俺は歩き出しながら、純に電話をかけた。純は連絡を待っていたのかと思うぐらい早く電話に出て、すぐに来ると言う。
電話をする俺の隣を歩く沙耶さんは、「朔くん、迎えに来てくれてありがとう」と、か細くつぶやいた。
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