たとえ一緒になれなくても

水城ひさぎ

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なんとなく

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「藤本茉莉さん、はじめまして。今日から一緒に仕事をさせていただく、菅原郁すがわらいくです。よろしく」

 朝礼を終え、部長の咳払いで散った女子社員の奥にいた青年は、まっすぐ私に向かってくるなり爽やかな笑顔を見せた。

 長身で細身、前髪を流したツーブロックのヘアスタイルがよく似合う。部下になる私にも礼儀正しい、文字通りの好青年という第一印象。

 人は見かけによらないというけれど、他の女子社員のようにイケメンというだけで手放しには喜べないが、柔らかな物腰に悪い気はしなかった。

「藤本です。よろしくお願いします」

 頭を下げると、菅原さんはすぐに手のひらを上に向けて腕を伸ばし、オフィスの奥にあるガラス張りの個室の方へ視線を促す。

「早速ですが、染谷さんが着手されていた件の資料はすべて目を通してきました。今から打ち合わせしましょう」
「わかりました」

 そう返事をする頃には歩き出している。

 途中デスクの前を通り、資料をまとめたファイルとノートパソコンをつかんで菅原さんに続く。

 菅原さんの動きにはそつがない。イケメンでスマートで、仕事も出来るとあれば、彼を放っておく女子社員も上司もいないだろう。

 私たちが歩けば、オフィス内もざわつく。それほど菅原さんには華がある。

 興味本位な視線を飛ばしてくる社員の中には仁さんの姿もある。

 しばらく好奇の目にさらされるのは覚悟しないといけないだろう。

 ガラス張りの個室に入るとすぐにロールカーテンを引き、テーブルの上へパソコンを設置してファイルを広げる。

「藤本さんの動きは無駄がないですね」
「いつものことですから」
「考えるより先に身体が動くタイプ?」

 菅原さんは愉快げに微笑んで、椅子に座るとロールカーテンの引かれていないガラスドアの奥へ目を向ける。

「仁と仲良いんですか?」
「え?」
「藤本さんはまるで周囲に関心がなさそうにしてるのに、仁とはアイコンタクトしてましたね」
「仁さんにはお世話になってますから」

 菅原さんの視線の先を追うと、電話に集中している仁さんの姿がある。

「仁さんって呼んでるんですね」
「ええ、まあ。仁さんとは付き合いが長いですし、尊敬していて」
「じゃあ俺も、藤本さんに信頼される仕事ぶりを見せないといけませんね」
「仁さんは認めてましたよ」

 個室に設置されたコーヒーメーカーで淹れたホットコーヒーを差し出す私を見上げて、菅原さんは苦笑する。

「仁に認められたって仕方ないですよ」
「仕方ないことはないでしょう? チームワークが必要な職場だと思います」
「染谷さんはよほど一方的な仕事をされてきたのかな。どちらかといえば、俺もそのタイプかもしれない。察するに、それでも君は期待以上の仕事をしてくれる」
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