たとえ一緒になれなくても

水城ひさぎ

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なんとなく

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「染谷さんに褒められたことはありませんから」
「そう? 口では言わないだけで、君を認めてたと思うよ。それを感じ取れなかったなら残念だけど、つまり君は口で言って欲しいタイプなんだろう」

 初対面なのにずいぶんとずけずけ物を言う人だといぶかしむ。

 相手が何を考えているのかわからないよりは数段マシだが、それにしても気分は良くない。

「めんどくさい女ですみません」

 菅原さんの隣に腰を下ろし、飲みたい気分でもなかったがコーヒーを口にする。

 ちらっと視線を動かすと、ほおづえをついて愉快げにこちらを見る彼と目が合う。

「仁がやたらと藤本さんを褒めるから、どうしても俺の期待値があがる。人間らしくて安心したよ」
「ロボットか何かだって思ってたんですか」

 ますます気を害するが、彼は大真面目に言う。

「感情的にはならない人かとは思ってた。きっとそういう面を見せられないパートナーと仕事するのは君には苦痛だったかもしれないね」
「わかったようなこと言わないでください」
「いや、仁がそう言ってただけ」
「仁さんが?」

 急に毒気を抜かれたように、肩に入っていた力が抜ける。

「藤本さんの良き理解者であり、最高のパートナーになれるよう俺も務めるよ。それだけ君のことは買ってるつもりなんだ」
「もちろん仕事に自信はあります」
「そうでなくては俺もやってられない。じゃあそろそろ本題に入ろうか。君の作成した資料はとてもわかりやすいし無駄がない。コーヒーを淹れるのは少し下手なようだけど」

 ふっ、と笑う菅原さんはエリートかもしれないが、ひとくせある。いや、エリートだからか。

「インスタントに上手も下手も」

 ぶつぶつ言いながらファイルから資料を取り出す私に、菅原さんはさらに声を立てて笑う。それがまた爽やかで憎らしい。

「あまり完璧じゃない方が魅力的だよ」
「はい?」
「なんだろう。藤本さんはとびきり美人じゃないけど、とても素敵な人だね」

 思わず眉が上がる。冷静に、と思うのに、菅原さんの言葉にはいちいち引っかかりを覚えてしまう。

「ひとこと余分なところが菅原さんの持ち味だってことはわかりました」
「仲良くやっていけそう?」
「仲良くやる必要は感じませんが、菅原さんに認めてもらえる仕事になるよう頑張りますから」
「うん、そこは安心してる」

 急に目尻を下げて素直にうなずく菅原さんに、またもや毒気を抜かれたが、とても初めて仕事をするパートナーとは思えないほど、その後のミーティングはすんなりと進んだ。
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