たとえ一緒になれなくても

水城ひさぎ

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冗談で?

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 菅原さんの指摘は半ば、憶測でありながらも真実だった。

 夏也と過ごす時間に違和感を覚えるのは、彼がプロポーズをうやむやにしたことが原因なんじゃない。

 プロポーズした私の気持ちを少しもわかろうとしてくれなかった。そこにずっと引っかかっているのだ。

 仕事が嫌になったから結婚したいなんて甘えてる。そう叱ってくれたら、私は今でも夏也に本心を話すことができていたのだろうか。

 はからずも、菅原さんに本心を漏らしてしまうなんて、なんて浅はかだったんだろうと後悔する。両手に顔をうずめて、はあー、と大きなため息をつく。

「どうした? 茉莉。郁に叱られたか?」

 突然話しかけられて驚き振り返る。

「仁さんっ」

 いつの間にか、仁さんが後ろに立っている。

「郁はご機嫌だったけどね。あいつ、茉莉とからむ時はやけに生き生きしてるよな」
「後輩をからかうのが趣味なんでしょう」
「へえ。よっぽど茉莉を気に入ってるんだな」

 仁さんは近くのデスクから椅子を持ってくると、私の隣へ腰を下ろす。

 ほとんどの男性社員は営業に出てしまって、オフィス内は閑散としている。

 菅原さんも例外じゃない。小料理屋〝紫陽花〟で食事を終えた後、そのまま営業へ出かけたのだ。

「気に入ってなんか」
「やたらと長い時間ふたりで出かけただろう? みんな心配してたぞ。茉莉が珍しく資料作成ミスったから大目玉じゃないかって」
「先にミスしたのは菅原さんです。間違った情報を私に伝えて、私の確認不足が招いたことなので叱られてはないです」
「なんだ、ミスまで仲良くか。まだひとつきも経ってないのにやたらとチームワークがいいって評判だよ」

 そんな風にうわさされているのかと、少々驚く。

 どちらかというと菅原さんはワンマンで、私は必死に与えられた仕事をこなしているだけだ。

「誰と組んだって、菅原さんなら営業成績トップだと思います」
「まあ、そうだろうな。なんであんな完璧な男が同期なんだろう」
「私は仁さんの方が素敵だと思います」
「そんなこと言って、みんな本命は郁なんだよなぁ」

 仁さんは苦々しく笑って、少し離れた席で集まる三人の女子社員へ視線を注ぐ。

 なんだろう? と思っていると、女子社員のひとりが急に振り返る。彼女らはひそひそ何やら話した後、三人そろって私の方へやってくる。

「茉莉先輩、先輩も一緒にやりません?」
「え、何を?」

 若い女子社員が唐突に切り出す。仁さんも何を言い出したのだろうと興味津々な様子で眺めている。

「菅原さんですよー。菅原さん、他の部署じゃ、郁さん、って呼ばれてるんです。だから私たちもって」
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