たとえ一緒になれなくても

水城ひさぎ

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冗談で?

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 不安は的中した。

 夏也に会って、前ほど喜べない自分がいることに気づいてしまう。

 何がいけなかったのだろう。

 プロポーズしてから、ことごとくボタンをかけ間違えたような気分になっている。

 同じ温度で、お互いに会いたいと思っていた過去が懐かしいような気さえした。

「茉莉、ちょっと痩せたか? 仕事が大変ってほんとだったんだなー。おつかれ」

 夏也は顔を合わせるなりそう言って、私の頭を優しくなでた。

「嘘だと思った? 忙しいの」

 ちょっとした言葉じりに反応するなんて可愛げがない。

 夏也も少しばかり眉をひそめて、「あ?」と言うと、珍しく髪をくしゃくしゃとかき乱す。

「別に疑ってねぇよ。茉莉はがんばってるんだなって思っただけだよ。そういうとこ、直した方がいいぞ」
「あ、うん……、ごめん」
「怒ってねぇよ」

 うつむく私を、両腕でしっかりと抱きしめてくる夏也が温かい。

 夏也は気が長くて優しい。キャプテン向きの性格で、みんなをリードする強さがある。

 だから私はいつだって、守られてる安心感の中に身を置いていた。

「会いたかったよ、茉莉。なんか俺たち、最近ちょっとおかしいよな」
「……うん、ごめんね」
「謝ることないだろ。だけどさ、ちょっとは俺の気持ちもわかってくれよ」
「うん……」

 切なそうな夏也の背中に腕を回して、胸に顔をうずめる。

 夏也の香りがする。

 いつもの彼の部屋、いつものソファー、いつもの腕の中も何も変わらない。

 こうして抱きしめ合って、もし感じるものが違うなら、変わったのは私だろう。

「やっぱりちょっとはショックだったんだ」

 夏也は息を漏らして笑う。

「茉莉の誕生日、食事して終わりとかないだろって。あれからずっと忙しいって会いに来ねぇし。もう会えねぇのかって正直不安だった」
「……連絡くれたらよかったのに」
「連絡したら会いに来た?」
「あたりまえじゃない」

 夏也を強く抱きしめる。

 彼を想う私の心を見つけたくて、強く。それなのにどことなく空虚で、燃え上がる想いが見えない。

「そうだな。俺もどうかしてたな。なあ、茉莉……」
「なに?」

 夏也から離れ、あごを上げて彼を見上げる。

 降りてくるのは彼の優しい唇。キスを受け止めて、強く引き寄せてくる彼に身をゆだねる。

 ひたいからほお、首筋にまでキスをする夏也の行為を身じろぎせずに受け入れる。

 その行為すべてを、どことなく他人事に感じている私がいる。

「なあ、茉莉。抱いたら元どおりになれるか?」

 私が感じる違和感は、夏也も感じてる。

「元どおりも何も、何も壊れてないのに」
「ほんとうか?」
「なんで疑うの?」
「俺、茉莉と別れるとか考えられないからさ。前みたいに笑ってほしい。前みたいに俺を好きだって、そう思わせる何かをくれよ」
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