たとえ一緒になれなくても

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朝になったら

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「俺はどっちがいいとかわからないけどさ、5年も茉莉を大事にしてた彼氏は否定しないし、郁が遊び半分でからかってるとも思ってない」
「仁さん……、私だってわかってます」
「頭で考えてどうにかなる問題でもないだろうけどさ、茉莉は気持ちに正直でいたらいい。後悔なんてするときはする。だったら後悔してもいい相手を選べばいいと、俺なら思う」

 後悔してもいい相手……。

 郁さんを見上げる。

「後悔させないさ」

 苦笑する郁さんの横顔を見つめる。

 夏也とは付き合いが長いから、彼の考えてることは手に取るようにわかる。だけど郁さんのことはわからない。

 彼の言葉を信じるだけ。
 彼は嘘をついてるかもしれない。それでもいいと思えるなら……。

 違う、とすぐさま頭の中で否定する。
 郁さんをもっと知ればいい。

 彼の思いが真実だとわかるまで、知ればいい。

「とにかく飲むか。せっかく三人で飲むんだ。楽しい話しようぜ」

 そう言って仁さんは、郁さんのビールが運ばれてくると、「おつかれっ」と乾杯をやり直した。



「仁さん、今日はありがとうございました。ちょっと元気出ました」
「ん? 俺は何もしてないよ。飲みに連れてくぐらい誰でもできるだろ。でもまあ、茉莉はにこにこしてる方がいいからな。元気出たならよかったよ」

 仁さんは軽く私の腕を叩いて、にやっと笑う。

 明るい彼に救われるのは何度目だろう。

 仁さんも夏也と同じようにこの5年、私のそばにいてくれた人のひとり。彼が大切な人には変わりない。

 私は隣にいる郁さんを見上げる。

 きっと郁さんの気持ちに応えられないと決めたら、彼は私から去るだろう。

 恋愛感情でつながる関係はどちらかが手放せば簡単に終わる。

 ずっとそばにいられる存在とそうではない存在の差は明らかだった。

「仁さんとはいつまでも、いい先輩と後輩の関係でいたいです」
「究極の失恋ってやつだな。まあいいか。俺もそう思ってるよ」
「失恋?」

 何の話? と首をかしげると、仁さんは郁さんに視線を移す。

「ちゃんと茉莉、送っていけよ。ちゃんとの意味、わかるよな?」
「さあね。仁に忠告されて、はいはいって言うほど、俺たちは子どもじゃないからね」
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