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朝になったら
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郁さんもずいぶんと飲んだのに、涼やかにほほえむ。
「おまえだけはやめてくれって思うよ、俺は」
「嫉妬だね、それは。大丈夫、大事にするよ」
「負け知らずの男は余裕だな」
「そんなこともないさ」
仁さんはほんの少し郁さんとジッと目を合わせたあと、私の方を向いて「じゃ、行くわ」と言う。
「はい。気をつけて帰ってくださいね。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。おまえたちも気をつけてな」
そう言って帰っていく仁さんと居酒屋の前で別れ、私も郁さんに向き直る。
「郁さんも今日はありがとうございました。私、ここで大丈夫ですから」
妙な間ができるのも怖くて、そそくさと帰ろうとすると、腕をつかまれる。
「郁さん、あの……」
「誰が帰すって言った?」
「……話すことは今日はなくて」
「今日は? ……そうか。少しは俺のことで悩んでるって思っていいようだね」
郁さんは嬉しそうに口元をゆるめて破顔する。
卑怯だ。
こんな時ばかり、あどけない少年のようになるなんて。
「郁さんが来るなんて知らなかったので、まだ何も考えてなくて。必ず近いうちにお返事はしますので」
腕をつかむ彼の手を離そうと身を引くが、すぐに引き寄せられてしまう。
「帰さないよ。俺はまだ話があるから」
耳元でささやかれたら身がすくむ。
胸が焦がれるような衝動が身体を走り抜けていく。
こんな感情忘れていた。そう思うぐらい胸がドキドキする。
「君のアパート行く? それとも俺の?」
ぞくりと身を震わす私の耳たぶに郁さんの唇が這い、甘いささやきは続く。
「選んで。選ばないと帰さないから」
「私もう、ほんとに眠たくて。鍵、置いておくので勝手に帰ってください」
「だいぶ飲んでたからな、君も。少し飲み直したら寝るよ、俺も」
居酒屋から帰る途中に立ち寄ったコンビニで、缶チューハイとおつまみを購入した。それらをテーブルに置き、郁さんはあぐらをかく。
「ほんとに少しだけですよ。今日は仕方なく部屋にあげただけですから」
「君が選んだんじゃないか。自分のアパートがいいって」
「誤解を招く言い方はやめてください。郁さんの部屋に行けるわけないって言ったんです」
憤慨しつつ、グラスを用意してしまう私も私だ。彼がここにいることを容認してしまう。
「でも、君は追い返したりしなかった。そういう態度見せられると男は期待するよ」
おつまみのサラミとさきいかの袋を開く郁さんの前にグラスを置く。
仁さんに結構飲まされた。その上、郁さんがいるものだから、余計なことは言えないと、黙々と飲んでいたのが災いしている。
正直、さっきから眠たくて仕方ない。
「ひとくちだけ、付き合います」
「無駄に気の利くところがかわいそうなぐらい健気だね、君は」
「ちっとも褒められてる気がしません」
「褒めてないからね」
郁さんはくすっと笑い、ホワイトサワーをグラスに半分ずつ注ぐ。
そしてグラスを持ち上げ、テーブルの上に置かれたままのもう一つのグラスに「乾杯」と静かに重ね、チビチビ飲む。
郁さんもだいぶ飲んでいる。無理に飲んでいるようにも見えた。
「おまえだけはやめてくれって思うよ、俺は」
「嫉妬だね、それは。大丈夫、大事にするよ」
「負け知らずの男は余裕だな」
「そんなこともないさ」
仁さんはほんの少し郁さんとジッと目を合わせたあと、私の方を向いて「じゃ、行くわ」と言う。
「はい。気をつけて帰ってくださいね。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。おまえたちも気をつけてな」
そう言って帰っていく仁さんと居酒屋の前で別れ、私も郁さんに向き直る。
「郁さんも今日はありがとうございました。私、ここで大丈夫ですから」
妙な間ができるのも怖くて、そそくさと帰ろうとすると、腕をつかまれる。
「郁さん、あの……」
「誰が帰すって言った?」
「……話すことは今日はなくて」
「今日は? ……そうか。少しは俺のことで悩んでるって思っていいようだね」
郁さんは嬉しそうに口元をゆるめて破顔する。
卑怯だ。
こんな時ばかり、あどけない少年のようになるなんて。
「郁さんが来るなんて知らなかったので、まだ何も考えてなくて。必ず近いうちにお返事はしますので」
腕をつかむ彼の手を離そうと身を引くが、すぐに引き寄せられてしまう。
「帰さないよ。俺はまだ話があるから」
耳元でささやかれたら身がすくむ。
胸が焦がれるような衝動が身体を走り抜けていく。
こんな感情忘れていた。そう思うぐらい胸がドキドキする。
「君のアパート行く? それとも俺の?」
ぞくりと身を震わす私の耳たぶに郁さんの唇が這い、甘いささやきは続く。
「選んで。選ばないと帰さないから」
「私もう、ほんとに眠たくて。鍵、置いておくので勝手に帰ってください」
「だいぶ飲んでたからな、君も。少し飲み直したら寝るよ、俺も」
居酒屋から帰る途中に立ち寄ったコンビニで、缶チューハイとおつまみを購入した。それらをテーブルに置き、郁さんはあぐらをかく。
「ほんとに少しだけですよ。今日は仕方なく部屋にあげただけですから」
「君が選んだんじゃないか。自分のアパートがいいって」
「誤解を招く言い方はやめてください。郁さんの部屋に行けるわけないって言ったんです」
憤慨しつつ、グラスを用意してしまう私も私だ。彼がここにいることを容認してしまう。
「でも、君は追い返したりしなかった。そういう態度見せられると男は期待するよ」
おつまみのサラミとさきいかの袋を開く郁さんの前にグラスを置く。
仁さんに結構飲まされた。その上、郁さんがいるものだから、余計なことは言えないと、黙々と飲んでいたのが災いしている。
正直、さっきから眠たくて仕方ない。
「ひとくちだけ、付き合います」
「無駄に気の利くところがかわいそうなぐらい健気だね、君は」
「ちっとも褒められてる気がしません」
「褒めてないからね」
郁さんはくすっと笑い、ホワイトサワーをグラスに半分ずつ注ぐ。
そしてグラスを持ち上げ、テーブルの上に置かれたままのもう一つのグラスに「乾杯」と静かに重ね、チビチビ飲む。
郁さんもだいぶ飲んでいる。無理に飲んでいるようにも見えた。
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