たとえ一緒になれなくても

水城ひさぎ

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朝になったら

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 かわいらしいピンクの唇は柔らかくて甘い。

 何度もすり合わせるように口づけて、もの欲しそうに薄く開く唇を幾度かついばむ。

 焦らしているのは俺なのに、なぜだか焦らされているみたいな気分になる。だから深く口づけたというのに、悔しい気持ちになる。

 茉莉はキスがうまい。

 誰に教えてもらったのかと考えたら、いらだちもする。それでも彼女のキスにおぼれているのは悪くない。

「もうちょっとあごをあげて」

 素直にあごをあげる彼女が愛おしい。

 上向く唇にかみつくようなキスをした。あごから鎖骨にかけて、綺麗なラインを描く首すじに口づけていく。

 彼女の身体を照らす朝の日射しがとても贅沢だ。

 形の良いふくよかな胸を下から押し上げるようにつかむ。

 やわらかくてため息が出る。

 そのくせ身体のラインは細く、くびれた腰が魅惑的だ。

「綺麗だ……」

 無意識について出た言葉で、茉莉が目元を赤らめるからグッと胸がつまる。

 ああ、まずいな……。

 焦る思いを落ち着かせながら、真っ白な胸の上部に唇を落とし、舌を這わせながら吸いついていく。

「郁さん……」
「ん?」
「あんまり焦らさないで……」
「そんなことを言ったら意地悪するよ、俺は」

 ああ、かわいすぎるだろ。

 赤くなって両手で顔を覆う茉莉の身体を見下ろす。

 綺麗だ、と連呼したくなる。

 触れるのがもったいないなんて言わない。触れることを許してくれた彼女が愛おしすぎて、簡単には終わらせたくないのだ。

 桃を食むように、白い肌に吸いついた。荒い息が鼻から抜けていく。それは彼女も同じだ。恍惚とした表情で、潤む瞳で俺を見つめる茉莉が愛おしい。

 茉莉の身体を敏感にしたのは夏也だ。この数年、こんなにも綺麗な身体を独り占めしてきたのも。

 妙な嫉妬が俺を狂わせる。

 茉莉を知り尽くした男ですら与えられなかった快楽を覚えさせたい。そんな風に俺は貪欲になる。

「どうしてほしい?」

 鋭く茉莉を見つめる。俺の真剣な目に戸惑うのか、彼女は目をそらして唇に指をあてる。

 そんな仕草もかわいい。

「郁さんの好きにしてください」

 ほんの少し恥ずかしそうに声を震わせるから、はっ、と甘い息が漏れる。

「どんな風にされると一番気持ちいい?」

 茉莉の髪をかきあげて、耳たぶを甘がみしながら問いかける。

 彼女は俺の手をつかみ、恥ずかしそうに胸元へ寄せていく。

 手のひらにおさまりきらない胸を両手で包む。ゆっくりともみしだきながら、キスを繰り返す。

「やわらかくて気持ちいい。茉莉も気持ちいいか?」

 恥じらいながら、俺の手中で乱れる彼女はひどく色っぽい。

 仕事中はちょっと固くて、気難しい表情をすることが多いのに、今はどうだ。

 恋人に見せる表情で、我を忘れて乱れていくのだから、俺もこらえ切れなくなる。

「郁さん……っ」

 たまらず手をつき出した彼女と手を重ね、指をからませていく。

「待って、郁さん……」

 息を整えたそうな余裕のない彼女の足を押し開き、「待てない」と自身をうずめる。

 ベッドの上で波打つ彼女の腰をつかみながら、にやりと笑う。

 意地悪に見えただろう。

「そんなに激しくしないで……っ」

 なんて、甘えるような声をあげる彼女にますますやめられなくなる。

 ああ、やめたくない。
 彼女を溺れさせたいのに、俺が溺れていく。
 俺を愛してくれ。

 心の中で叫ぶ。なりゆきで抱かれたのではなく、愛し合いたくて抱かれているのだと信じさせてほしい。

 彼女の身体の上に崩れ落ちる。

 息を整えようと俺たちの合わさった胸が上下する。その動作すら愛おしい。

「俺の目を見て」

 閉じられた茉莉のまぶたにキスをする。

 ゆっくりと開かれたそこにある可愛らしい瞳が俺をとらえた瞬間、ふわっと笑みが浮かぶ。

 かわいい。

 茉莉の魅力を見た気がした。

 こんな表情、愛した男にしか見せないだろうと思えた。

 茉莉をぎゅっと抱きしめる。

 汗ばむこめかみにキスをしながら、強く強く抱きしめる。

「もう彼氏には抱かれるな。俺にだけ抱かれていてくれ……」

 独占欲が出た。

 茉莉は何も言わないが、そっと俺を抱きしめ返してくれた。

 それだけでじゅうぶんだ。

 このままの関係を続けていくためには、これ以上欲張ったらいけない。

 このままでいいんだ。

 そう納得するように言い聞かせて、ぐったりとベッドに横になる茉莉を抱きしめて目を閉じる。

 身体を寄せ合い、眠りに落ちる瞬間は、この上なく幸せなものに思えた。
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