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たとえ一緒になれなくても
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郁さんと別れてから二ヶ月後、彼は急な転勤で私の前から姿を消した。
仁さんから、あいかわらず元気にやってるようだ。近いうちに部長になるんじゃないか? と聞いた。
それはただのうわさ話で、遠い誰かの栄転話を話題にしてるに過ぎない。その程度のものだった。
「そっか。彼氏さんとは別れちゃったんだね。好きだったのに、うまくいかないものだね」
萌乃香のアパートで、私はお気に入りのレモンチューハイを飲む。
「結婚はタイミングってよく聞くけど……」
「ほんとそうだね。結婚できるチャンスがあるときは、逃さないようにしなきゃね」
萌乃香は、元気出して、と私の肩を抱く。
「茉莉、いなくなっちゃうとさみしいね。四月から異動だっけ?」
「うん、そう。新しい部署ができたんだって。30前の独身で、バリバリ仕事ができる人を集めてるって部長が」
苦笑する。絶対結婚しないと白羽の矢を立てられたようなものだ。
「わぁ、でもそれって凄い。茉莉のがんばりが認められてるんだね」
「そう思わなきゃ、やってられない」
「なんでもいいんだってー。自分を認めてもらえる場所って必要だもん」
「萌乃香ー、ありがとう。引っ越しても、連絡取り合おうね」
仕事もプライベートもこんなに話せる友人はいない。
「うんうん。また一緒に飲もうー! 明日は休みでしょ?」
「あー、明日は新しいアパートの引越しがあるの。だからほどほどに」
「そうだね、ほどほどに」
私たちは目を合わせて笑うと、缶チューハイで乾杯をした。
郁さんと別れてから二ヶ月後、彼は急な転勤で私の前から姿を消した。
仁さんから、あいかわらず元気にやってるようだ。近いうちに部長になるんじゃないか? と聞いた。
それはただのうわさ話で、遠い誰かの栄転話を話題にしてるに過ぎない。その程度のものだった。
「そっか。彼氏さんとは別れちゃったんだね。好きだったのに、うまくいかないものだね」
萌乃香のアパートで、私はお気に入りのレモンチューハイを飲む。
「結婚はタイミングってよく聞くけど……」
「ほんとそうだね。結婚できるチャンスがあるときは、逃さないようにしなきゃね」
萌乃香は、元気出して、と私の肩を抱く。
「茉莉、いなくなっちゃうとさみしいね。四月から異動だっけ?」
「うん、そう。新しい部署ができたんだって。30前の独身で、バリバリ仕事ができる人を集めてるって部長が」
苦笑する。絶対結婚しないと白羽の矢を立てられたようなものだ。
「わぁ、でもそれって凄い。茉莉のがんばりが認められてるんだね」
「そう思わなきゃ、やってられない」
「なんでもいいんだってー。自分を認めてもらえる場所って必要だもん」
「萌乃香ー、ありがとう。引っ越しても、連絡取り合おうね」
仕事もプライベートもこんなに話せる友人はいない。
「うんうん。また一緒に飲もうー! 明日は休みでしょ?」
「あー、明日は新しいアパートの引越しがあるの。だからほどほどに」
「そうだね、ほどほどに」
私たちは目を合わせて笑うと、缶チューハイで乾杯をした。
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