19 / 60
寄り添う心に新たな出会い
7
しおりを挟む
部屋の中央に、布団が二式敷かれている。俺がいつ来てもいいように、毎日敷いてくれている。
つゆりは布団の中で丸くなって眠っていた。
枕元の灯りに照らされる表情は、どことなく疲れていて、悲しげだ。一人でいると、惣一郎を失った悲しみと向き合ってしまうのかもしれない。
ひざを折り、彼女の頭をそっとなでる。すると、意外にも、パッと目を開く。
「あ……、起こしてしまったね」
あやまると、つゆりは上体を起こし、首を振った。
「お待ちしてるつもりでしたのに、眠ってしまって……」
「待っていてくれるのはうれしいが、待たなくていいんだよ。それより、何かありましたか?」
問うと、彼女はわずかに唇を震わせた。やはり、何かあったのだ。
「話してください。一人で悩むのは良くない」
「悩むわけではなくて……」
つゆりはつぶやくように言って、俺の方へひざを進めてくる。さみしいのだと思って、すぐさま抱きしめる。すると、彼女は俺の胸にしがみついて、顔をうずめてきた。
「惣一郎さんが……、帰ってきたんです。西園寺さまに呼ばれて、それで……。惣一郎さんがお骨になって……」
たどたどしく、つゆりは断片的な記憶を語る。
震える彼女を抱きしめる腕に力が入る。
「もう、言わなくていいです。西園寺家に帰ってきたのですね。それはいいことですよ。あのまま、病院の暗い部屋に閉じ込められている方が不幸なのです」
「わかっていたのに、ひどく驚いてしまって……」
「順序が間違っているから、そうなるのですよ。いろいろと呪いたくなります」
怒りすら湧く。
惣一郎の死や、武彦の提案で幸せになれたものなど一人もいない。
「呪うだなんていけないです。西園寺さまも苦しんでおられます」
「そうでしょう。そうでなければ、こんな愚策、思いつかないでしょう。もう、やめますか? こんな形で子を作るなんて、最初から無理だったんですよ」
怒りに任せて言い放つと、絶望感に満ちたつゆりがすがりついてくる。
「やめません。……私の希望まで奪わないでください」
思いもよらない言葉に、溜飲が下がる。
「希望になりますか? 惣一郎さんではなく、俺との子が」
愛していない男の子どもを育てられるのか。その心配は徒労だと、すぐに否定する。つゆりなら、立派に育ててくれるだろう。
「はい。……抱いてください。千隼さんがお疲れでないなら」
ほんのり、ほおが染まる。なんて、愛おしいのだろう。つゆりに求められる夜を拒むはずがない。
「疲れてなどいませんよ。つゆりを抱かない夜は考えられない」
ネクタイをゆるめ、素早くつゆりの唇を奪う。惣一郎がちらつく脳裏を、俺でいっぱいにするように、丁寧に口づけていく。
パジャマのボタンをはずし、胸もとを開く。闇の中に、わずかな灯りを受けた真っ白な肌が浮かび上がる。そのふくらみに手のひらをあて、優しく触れていく。
「千隼さん……」
恥ずかしそうに俺の名を呼ぶつゆりはもう、俺の腕の中で溺れるいつもの彼女だ。
「美しいです。どうしてこんなにも、美しいのか……」
パジャマをすべて脱がし、ふくらみの頂きに口づける。身をのけぞらせる彼女の腰を引き寄せて、ベルトをはずす。
ふたたび、唇を奪い、幾重にも重ねながら、自身を彼女にうずめる。性急すぎたかと思ったが、俺に何度も抱かれた身体はすぐに受け入れた。
甘い息を吐くつゆりの首筋にキスをして、なめらかな背中に指を這わせる。そのまま手を下にさげていき、腰をつかむ。
「千隼さ……んっ」
「もっと揺らして」
俺の肩に手を置き、腰を浮かせたつゆりは従順だった。
俺しか知らず、俺の言いつけを守り、俺と喜びを分かち合う。あと何度、つゆりを抱けるだろう。
子ができたら、つゆりは惣一郎と結婚する。
本当に、死者と結婚する気か。しかし、つゆりが冥婚を望み、それが幸せだと信じるなら、俺はやはり拒めないのだ。
それほど、つゆりを愛している。
何が起きても後悔しないように、今夜もまた隅々まで堪能し、彼女の望みを叶えるべく、愛を注ぎ込む。
つゆりは布団の中で丸くなって眠っていた。
枕元の灯りに照らされる表情は、どことなく疲れていて、悲しげだ。一人でいると、惣一郎を失った悲しみと向き合ってしまうのかもしれない。
ひざを折り、彼女の頭をそっとなでる。すると、意外にも、パッと目を開く。
「あ……、起こしてしまったね」
あやまると、つゆりは上体を起こし、首を振った。
「お待ちしてるつもりでしたのに、眠ってしまって……」
「待っていてくれるのはうれしいが、待たなくていいんだよ。それより、何かありましたか?」
問うと、彼女はわずかに唇を震わせた。やはり、何かあったのだ。
「話してください。一人で悩むのは良くない」
「悩むわけではなくて……」
つゆりはつぶやくように言って、俺の方へひざを進めてくる。さみしいのだと思って、すぐさま抱きしめる。すると、彼女は俺の胸にしがみついて、顔をうずめてきた。
「惣一郎さんが……、帰ってきたんです。西園寺さまに呼ばれて、それで……。惣一郎さんがお骨になって……」
たどたどしく、つゆりは断片的な記憶を語る。
震える彼女を抱きしめる腕に力が入る。
「もう、言わなくていいです。西園寺家に帰ってきたのですね。それはいいことですよ。あのまま、病院の暗い部屋に閉じ込められている方が不幸なのです」
「わかっていたのに、ひどく驚いてしまって……」
「順序が間違っているから、そうなるのですよ。いろいろと呪いたくなります」
怒りすら湧く。
惣一郎の死や、武彦の提案で幸せになれたものなど一人もいない。
「呪うだなんていけないです。西園寺さまも苦しんでおられます」
「そうでしょう。そうでなければ、こんな愚策、思いつかないでしょう。もう、やめますか? こんな形で子を作るなんて、最初から無理だったんですよ」
怒りに任せて言い放つと、絶望感に満ちたつゆりがすがりついてくる。
「やめません。……私の希望まで奪わないでください」
思いもよらない言葉に、溜飲が下がる。
「希望になりますか? 惣一郎さんではなく、俺との子が」
愛していない男の子どもを育てられるのか。その心配は徒労だと、すぐに否定する。つゆりなら、立派に育ててくれるだろう。
「はい。……抱いてください。千隼さんがお疲れでないなら」
ほんのり、ほおが染まる。なんて、愛おしいのだろう。つゆりに求められる夜を拒むはずがない。
「疲れてなどいませんよ。つゆりを抱かない夜は考えられない」
ネクタイをゆるめ、素早くつゆりの唇を奪う。惣一郎がちらつく脳裏を、俺でいっぱいにするように、丁寧に口づけていく。
パジャマのボタンをはずし、胸もとを開く。闇の中に、わずかな灯りを受けた真っ白な肌が浮かび上がる。そのふくらみに手のひらをあて、優しく触れていく。
「千隼さん……」
恥ずかしそうに俺の名を呼ぶつゆりはもう、俺の腕の中で溺れるいつもの彼女だ。
「美しいです。どうしてこんなにも、美しいのか……」
パジャマをすべて脱がし、ふくらみの頂きに口づける。身をのけぞらせる彼女の腰を引き寄せて、ベルトをはずす。
ふたたび、唇を奪い、幾重にも重ねながら、自身を彼女にうずめる。性急すぎたかと思ったが、俺に何度も抱かれた身体はすぐに受け入れた。
甘い息を吐くつゆりの首筋にキスをして、なめらかな背中に指を這わせる。そのまま手を下にさげていき、腰をつかむ。
「千隼さ……んっ」
「もっと揺らして」
俺の肩に手を置き、腰を浮かせたつゆりは従順だった。
俺しか知らず、俺の言いつけを守り、俺と喜びを分かち合う。あと何度、つゆりを抱けるだろう。
子ができたら、つゆりは惣一郎と結婚する。
本当に、死者と結婚する気か。しかし、つゆりが冥婚を望み、それが幸せだと信じるなら、俺はやはり拒めないのだ。
それほど、つゆりを愛している。
何が起きても後悔しないように、今夜もまた隅々まで堪能し、彼女の望みを叶えるべく、愛を注ぎ込む。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました
春浦ディスコ
恋愛
王立学院に勤めていた二十五歳の子爵令嬢のマーサは婚活のために辞職するが、中々相手が見つからない。そんなときに王城から家庭教師の依頼が来て……。見目麗しの第四王子シルヴァンに家庭教師のマーサが陥落されるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる