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寄り添う心に新たな出会い
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タクシーを降りると、受付へ向かった。さわやま病院へやってくるのは、ひと月ぶりになる。
惣一郎さんが亡くなって、一ヵ月。このひと月で、私は何か成し得ただろうか。ただ立ち止まっているのと何も変わらない日々を送ってきてはいないだろうか。今日は一歩前進の日になるといい。
「検診で婦人科にかかりたいのですが」
受付で、本来の目的を告げる。
「こちらは初めてですか?」
「初めてではないんですが、かかるのは数年ぶりなんです」
「それでしたら、後ろの再受付窓口で診察券と保険証を出してください」
事務的な受付の女性に言われるがまま、再受付窓口で受付を済ませる。
惣一郎さんのお見舞いに行くと言った手前、すぐには帰れない。
それならばと、ブライダルチェックを受けてみようと思ったのだ。高校生の頃、天音に勧められて婦人科で検診を受けたことはあったが、それきりだった。
「婦人科は三階です。エレベーターで上がっていただいて、正面のパーテーションの奥に婦人科の受付がありますから、こちらの札を出してください」
受付番号の書かれた札を受け取り、エレベーターに乗り込んだ。エレベーターのボタンには、診療科が書かれていた。産科は八階にあるみたい。
八階に行ける日が来るといい、なんて考えているうちに三階へ到着する。婦人科の受付で札を出し、問診票を記入した。待ち時間は一時間以上あるという。
病院の向かい側に喫茶店があったのを思い出して、一時間後に戻ると告げて、受付を離れた。
ふたたび、一階へ戻り、会計窓口の後ろを通って外へ出ようとしたとき、「綾城さんっ」と背後で声がした。振り返ると、看護師長の奥江さんが早足に向かってくるのが見えた。
「いま、つゆりさんがいらしてるって受付から連絡もらって」
綾城家とさわやま病院も、西園寺家と同様、縁が深い。小さな頃からお世話になっているというのもあり、奥江さんは何かと気づかってくれる。
「ずっと受けられてなかったので、今日は検診に」
「そうですか。待ち時間があって、ごめんなさいね」
「いいえ。目の前の喫茶店に行ってきますね。一時間ほどで戻ります」
「戻られたら、声かけてくださいね」
「いつもありがとうございます」
入り口で奥江さんと別れ、道路を渡った先の喫茶店『ボレロ』へ入る。
おしゃれなカフェというよりは、近所の住人が集うような、設備の古いさびれた喫茶店だ。中老のマスターと、娘だろう、落ち着きのある女性店員が、カウンター席の客と談笑している。
奥まった窓際の席につくと、女性店員が注文を取りにやってくる。紅茶を注文する。そのとき、赤ちゃんを抱いた女の人が店内へ入ってきた。
肩より少し伸びた髪をゴムで束ねた、くすみピンクのワンピースを上品に着こなす女性で、目を惹いた。
彼女も、病院の待ち時間をつぶしに来たのだろうか。そう思うほど、さびれた喫茶店には不似合いだった。
タクシーを降りると、受付へ向かった。さわやま病院へやってくるのは、ひと月ぶりになる。
惣一郎さんが亡くなって、一ヵ月。このひと月で、私は何か成し得ただろうか。ただ立ち止まっているのと何も変わらない日々を送ってきてはいないだろうか。今日は一歩前進の日になるといい。
「検診で婦人科にかかりたいのですが」
受付で、本来の目的を告げる。
「こちらは初めてですか?」
「初めてではないんですが、かかるのは数年ぶりなんです」
「それでしたら、後ろの再受付窓口で診察券と保険証を出してください」
事務的な受付の女性に言われるがまま、再受付窓口で受付を済ませる。
惣一郎さんのお見舞いに行くと言った手前、すぐには帰れない。
それならばと、ブライダルチェックを受けてみようと思ったのだ。高校生の頃、天音に勧められて婦人科で検診を受けたことはあったが、それきりだった。
「婦人科は三階です。エレベーターで上がっていただいて、正面のパーテーションの奥に婦人科の受付がありますから、こちらの札を出してください」
受付番号の書かれた札を受け取り、エレベーターに乗り込んだ。エレベーターのボタンには、診療科が書かれていた。産科は八階にあるみたい。
八階に行ける日が来るといい、なんて考えているうちに三階へ到着する。婦人科の受付で札を出し、問診票を記入した。待ち時間は一時間以上あるという。
病院の向かい側に喫茶店があったのを思い出して、一時間後に戻ると告げて、受付を離れた。
ふたたび、一階へ戻り、会計窓口の後ろを通って外へ出ようとしたとき、「綾城さんっ」と背後で声がした。振り返ると、看護師長の奥江さんが早足に向かってくるのが見えた。
「いま、つゆりさんがいらしてるって受付から連絡もらって」
綾城家とさわやま病院も、西園寺家と同様、縁が深い。小さな頃からお世話になっているというのもあり、奥江さんは何かと気づかってくれる。
「ずっと受けられてなかったので、今日は検診に」
「そうですか。待ち時間があって、ごめんなさいね」
「いいえ。目の前の喫茶店に行ってきますね。一時間ほどで戻ります」
「戻られたら、声かけてくださいね」
「いつもありがとうございます」
入り口で奥江さんと別れ、道路を渡った先の喫茶店『ボレロ』へ入る。
おしゃれなカフェというよりは、近所の住人が集うような、設備の古いさびれた喫茶店だ。中老のマスターと、娘だろう、落ち着きのある女性店員が、カウンター席の客と談笑している。
奥まった窓際の席につくと、女性店員が注文を取りにやってくる。紅茶を注文する。そのとき、赤ちゃんを抱いた女の人が店内へ入ってきた。
肩より少し伸びた髪をゴムで束ねた、くすみピンクのワンピースを上品に着こなす女性で、目を惹いた。
彼女も、病院の待ち時間をつぶしに来たのだろうか。そう思うほど、さびれた喫茶店には不似合いだった。
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