冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

文字の大きさ
31 / 60
ひたひたと迫る厄災

7

しおりを挟む



 千隼さんの子を産みたい。だけど、その実現は、彼との永遠の別れを意味する。だったら、駆け落ちしてしまいたい。

 そうしてふたり、助け合って、ささやかでいいから幸せな家庭を築いて、子を育んでいけたら、どんなにいいか。

 しかし、それはただの願望で、現実味が少しもない。駆け落ちの提案は、あくまでも、なぐさめだ。千隼さんが苦労して築いてきた地位や人生を、どうして私のために捨ててくれなどと言えるだろうか。

 私を好きじゃなくてもいい。昔のよしみで情がある。その情だけで私を抱いてくれる彼の優しさに満足しないといけない。

 好き合ったらいけない、と彼は言った。私の気持ちに薄々気づいていて、牽制したのかもしれない。

 この気持ちを公にしたら、その情を持って、駆け落ちを現実のものにしようとするだろうから……。実のところ、そうはなりたくないから、牽制した。そう考えてしまう。

 キスはしても、私を好きとは言わない。身体を重ねていても、愛してるとは絶対に言わない。心の交わりを望まない彼が、その証拠だろう。

 千隼さんはどう思ってるのだろう。はやく子を作って、こんな生活終わらせたいと思ってるだろうか。

 彼を束縛したいのに、解放してあげたいなんて、矛盾した気持ちが、心の中に浮いては消えている。

 彼の子を授かれたら、それだけで生きていけると思っていた、ほんの少し前の私は今、ずいぶんと貪欲になった。

 そっとお腹をなでる。やっぱり、どんなに悩んでも、私が取るべき道は、千隼さんとの子を授かり、惣一郎さんと結婚する道だけなのだ。欲深になったら、きっと、バチがあたる。

「あら、つゆり、またお腹が痛いの?」

 母の天音が心配そうに、縁側に腰を下ろす私のお腹をのぞき込む。

「いいえ、大丈夫です」
「そう? 今朝から、気づくとお腹に手を当ててるわよ」

 そんなつもりはなかったけれど、無意識のうちに何度か触れていたのだろう。

「体の調子はとてもいいんです」

 心配しないで、と笑んで答える。

「なら、いいけれど。そういえば、先日、離れに惣一郎さんがいらしてた?」
「え……、えぇ……」

 天音が離れの様子を詮索してくるなんて、今までたったの一度もなかった。千隼さんとのことを、気づかれたのだろうか。下手な返事はできなくて、あいまいにうなずいてしまう。

「検査入院されてるお話も、あれきりでしょう? もうお元気になったの?」
「あまり、具合はよろしくないそうですけれど、以前よりも頻繁に会いに来てくれてます……」

 惣一郎さんは今、入院してることになってるだろうか。つじつまが合っているのか半信半疑のまま、言う。

「そう……。親交を深めるのはいいことだけれど、いつも正門から訪ねて来られる惣一郎さんにしては珍しいですよね。何か焦っておいでではないかと、心配してしまいますよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました

春浦ディスコ
恋愛
王立学院に勤めていた二十五歳の子爵令嬢のマーサは婚活のために辞職するが、中々相手が見つからない。そんなときに王城から家庭教師の依頼が来て……。見目麗しの第四王子シルヴァンに家庭教師のマーサが陥落されるお話。

処理中です...