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ねじれた愛をあばく時
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大野寺駅を訪れるのは、半年ぶりのことだった。
綾城邸の最寄駅から二駅先にある大野寺駅は、地元の人が利用する生活感の漂う駅だ。さほど大きな駅ではなく、駅前には、こじんまりとした商店街があるだけ。
大野寺駅前商店街には、懇意にしている呉服屋がある。結婚をひかえ、惣一郎さんと一緒に着物の仕立てに訪れたのが、半年前のことだ。その頃と、変わった様子は何もない。
駅前のカフェといったら、一つしかなく、迷うことなく向かった。
古い喫茶店を取り壊し、オーナーの娘夫婦が新しくオープンさせたレトロなカフェが、商店街の北にある。
カフェ・オルトーがオープンしたのは、一年ほど前だったか。まだ新しい店内で、惣一郎さんと一緒にコーヒーを飲んだ。
あまり、デートらしいデートをしたことがなく、何を話したらいいのかわからなくて、なんとなく窓から見える景色を眺めていたのを覚えている。
私たちは結婚についてや、結婚後の生活についてたくさん話し合ってきたが、恋人とじゃれ合うような、たわいのない会話を楽しんだりはしてこなかったように思う。
惣一郎さんと会えなくなって、そろそろ、ふた月になるのだろうか。
月日が過ぎるのは、早い。だんだんと、優しかった彼の記憶が薄れ、罪悪感と寂寥感だけが、心の隅に張り付いて残るのだろうと思った。
「中、入りますか?」
後ろから声をかけられて初めて、カフェ・オルトーの前で立ち尽くしていたのに気づいた。振り返ると、颯太が穏やかな笑顔で立っていた。
「来ないかと思ってました。意外と、行動的なんですね」
予想がはずれたと、颯太はわずかに苦笑した。
「岩山さんのお話を聞いてみたいと思いましたので」
「聡明な人だとは思っていました。美しいし、強い方のようだし、妻にするには申し分ないですね」
私が率直な思いを口にすると、納得するように彼はそう言った。
「中へ入りましょうか。岩山さんには上品な奥さまがいらっしゃるのに、なぜこんなことをなさるのか、真実を話していただきたいのです」
今度は私が店内へ誘った。
西園寺家をのぞき込んでいた理由。綾城堂に現れた理由。颯太の真意が知りたかった。
「やだな。まるで、好意もないのに誘惑してるみたいじゃないですか」
おどけるように言う。
「違うんですか?」
「違いますよ。奥手な方なので、緊張しすぎて怖い顔してたかな」
「思い詰めていらっしゃるように見えました。何かあってのことなら、ご相談に乗りますよ」
「優しいですね、綾城さんは。お付き合いできたら、それはそれで、ラッキーだな」
くすりと自嘲ぎみに笑うと、颯太はカフェの扉を開けた。中へ入り、窓際の席に座る。コーヒーのおいしいカフェだからと、オルトーオリジナルのブレンドコーヒーをふたつ注文してくれる。
大野寺駅を訪れるのは、半年ぶりのことだった。
綾城邸の最寄駅から二駅先にある大野寺駅は、地元の人が利用する生活感の漂う駅だ。さほど大きな駅ではなく、駅前には、こじんまりとした商店街があるだけ。
大野寺駅前商店街には、懇意にしている呉服屋がある。結婚をひかえ、惣一郎さんと一緒に着物の仕立てに訪れたのが、半年前のことだ。その頃と、変わった様子は何もない。
駅前のカフェといったら、一つしかなく、迷うことなく向かった。
古い喫茶店を取り壊し、オーナーの娘夫婦が新しくオープンさせたレトロなカフェが、商店街の北にある。
カフェ・オルトーがオープンしたのは、一年ほど前だったか。まだ新しい店内で、惣一郎さんと一緒にコーヒーを飲んだ。
あまり、デートらしいデートをしたことがなく、何を話したらいいのかわからなくて、なんとなく窓から見える景色を眺めていたのを覚えている。
私たちは結婚についてや、結婚後の生活についてたくさん話し合ってきたが、恋人とじゃれ合うような、たわいのない会話を楽しんだりはしてこなかったように思う。
惣一郎さんと会えなくなって、そろそろ、ふた月になるのだろうか。
月日が過ぎるのは、早い。だんだんと、優しかった彼の記憶が薄れ、罪悪感と寂寥感だけが、心の隅に張り付いて残るのだろうと思った。
「中、入りますか?」
後ろから声をかけられて初めて、カフェ・オルトーの前で立ち尽くしていたのに気づいた。振り返ると、颯太が穏やかな笑顔で立っていた。
「来ないかと思ってました。意外と、行動的なんですね」
予想がはずれたと、颯太はわずかに苦笑した。
「岩山さんのお話を聞いてみたいと思いましたので」
「聡明な人だとは思っていました。美しいし、強い方のようだし、妻にするには申し分ないですね」
私が率直な思いを口にすると、納得するように彼はそう言った。
「中へ入りましょうか。岩山さんには上品な奥さまがいらっしゃるのに、なぜこんなことをなさるのか、真実を話していただきたいのです」
今度は私が店内へ誘った。
西園寺家をのぞき込んでいた理由。綾城堂に現れた理由。颯太の真意が知りたかった。
「やだな。まるで、好意もないのに誘惑してるみたいじゃないですか」
おどけるように言う。
「違うんですか?」
「違いますよ。奥手な方なので、緊張しすぎて怖い顔してたかな」
「思い詰めていらっしゃるように見えました。何かあってのことなら、ご相談に乗りますよ」
「優しいですね、綾城さんは。お付き合いできたら、それはそれで、ラッキーだな」
くすりと自嘲ぎみに笑うと、颯太はカフェの扉を開けた。中へ入り、窓際の席に座る。コーヒーのおいしいカフェだからと、オルトーオリジナルのブレンドコーヒーをふたつ注文してくれる。
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