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ねじれた愛をあばく時
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コーヒーが運ばれてくると、手持ち無沙汰にしていた颯太が先に口を開く。
「以前から、綾城さんのことは知ってたんです」
「以前と申しますと?」
「ボレロで会う前からです。さわやま病院の受付でお見かけして、看護師さんとの会話を立ち聞きしてしまいました。喫茶店へ行くようだったから、すみれちゃんにボレロへ行かせたんです」
それを聞いて、私はゆっくりとうなずいた。
「赤ちゃん連れで入るような喫茶店ではない気がしていたので、納得しました」
「そうですよね。叶羽には大変な思いをさせたかな。でも、あなたと話すきっかけが欲しかった」
「きっかけ作りに奥さまを利用するのは、感心しませんけれど、それで、どこで私を?」
颯太の説明では、私を知った理由が鮮明じゃない。苦言を呈しつつ、尋ねた。
「すみれちゃんが華道に興味を持ってるって話は、うそじゃありません。それで、いろいろ調べてるうちに綾城堂を知りました。そんな頃、たまたま、綾城堂の近くであなたをお見かけして、美しい人だなと思っていました。それが、半年以上前になるのかな」
「ずいぶんと前から……」
「はい……。なんとか会えないかと、ご自宅の方に行ってみたんです。最近気づいたんですが、間違えて、西園寺さんちをのぞいてたみたいです。なかなか会えないなって思ってたんですが、当然ですよね」
「そうですか」
苦笑する颯太の表情をうかがいながら、静かにうなずく。
聞いてもないのに、わざわざ、西園寺家を間違えてのぞいたと告白した。伊吹と何度か顔を合わせた彼は、私がそのことを知ってると思って、先回りしてごまかした。西園寺家をのぞいていた事実を隠したかったのだろうか。
真実と嘘を織り交ぜて話してる可能性がある。そんな風に疑ってみるものの、彼はあまりにもじょうぜつだ。隠したいことはあっても、私をだます気はないのかもしれない。
「綾城さんちの前には、いつも、あのー、しかつめらしい顔した運転手がいますよね。自宅から出てくるあなたに接触するのは無理かなって断念しかけた頃、病院であなたをお見かけした。これはチャンスだと思ったんです」
彼の話を真実として受け止めるのなら、伊吹が颯太の車を見なくなったのは、私に会うのをあきらめたからだというのか。彼の話に矛盾はない気がするが、しっくり来てるわけでもない。
たまたま私を見かけ、たまたま好意を抱き、自宅までやってくるなんて、何かの執着があるようにしか思えない。
「経緯はわかりました。しかし、奥さまがいらっしゃるのにと、不思議でなりません」
「言ったでしょう。好きだから一緒にいたい。結婚してるかどうかなんて、関係ないんです」
颯太はわずかに身を乗り出す。
何かの執着は、いっときの恋愛感情だろうか。
本当にこの青年は、私を好きなんだろうか。もし、本当だとしても、受け入れられるはずがないということを、なぜ気づかないのだろう。
「心の浮気は、奥さまを傷つけますよ」
「身体の浮気は傷つけないみたいな言い方だ」
「そういうつもりでは……」
「綾城さんは、婚約者を愛してるんですか?」
「え?」
心の底を見抜くような目を向けられて、どきりとした。
婚約者を愛しているのか……?
その質問の答えは、口にできない。
「家の都合で結婚するだけですよね。西園寺惣一郎を好きなわけじゃない。だったら、結婚なんてする必要ない」
私の心に土足で踏み込む彼に、困惑する。
「結婚は、するしないではなく、決められているのです」
「それが間違ってるって言ってるんです。婚約を解消してほしい。今日はそれを言いたくて、お誘いしました」
「それは無理です。結婚は、簡単なものではないでしょう?」
「以前から、綾城さんのことは知ってたんです」
「以前と申しますと?」
「ボレロで会う前からです。さわやま病院の受付でお見かけして、看護師さんとの会話を立ち聞きしてしまいました。喫茶店へ行くようだったから、すみれちゃんにボレロへ行かせたんです」
それを聞いて、私はゆっくりとうなずいた。
「赤ちゃん連れで入るような喫茶店ではない気がしていたので、納得しました」
「そうですよね。叶羽には大変な思いをさせたかな。でも、あなたと話すきっかけが欲しかった」
「きっかけ作りに奥さまを利用するのは、感心しませんけれど、それで、どこで私を?」
颯太の説明では、私を知った理由が鮮明じゃない。苦言を呈しつつ、尋ねた。
「すみれちゃんが華道に興味を持ってるって話は、うそじゃありません。それで、いろいろ調べてるうちに綾城堂を知りました。そんな頃、たまたま、綾城堂の近くであなたをお見かけして、美しい人だなと思っていました。それが、半年以上前になるのかな」
「ずいぶんと前から……」
「はい……。なんとか会えないかと、ご自宅の方に行ってみたんです。最近気づいたんですが、間違えて、西園寺さんちをのぞいてたみたいです。なかなか会えないなって思ってたんですが、当然ですよね」
「そうですか」
苦笑する颯太の表情をうかがいながら、静かにうなずく。
聞いてもないのに、わざわざ、西園寺家を間違えてのぞいたと告白した。伊吹と何度か顔を合わせた彼は、私がそのことを知ってると思って、先回りしてごまかした。西園寺家をのぞいていた事実を隠したかったのだろうか。
真実と嘘を織り交ぜて話してる可能性がある。そんな風に疑ってみるものの、彼はあまりにもじょうぜつだ。隠したいことはあっても、私をだます気はないのかもしれない。
「綾城さんちの前には、いつも、あのー、しかつめらしい顔した運転手がいますよね。自宅から出てくるあなたに接触するのは無理かなって断念しかけた頃、病院であなたをお見かけした。これはチャンスだと思ったんです」
彼の話を真実として受け止めるのなら、伊吹が颯太の車を見なくなったのは、私に会うのをあきらめたからだというのか。彼の話に矛盾はない気がするが、しっくり来てるわけでもない。
たまたま私を見かけ、たまたま好意を抱き、自宅までやってくるなんて、何かの執着があるようにしか思えない。
「経緯はわかりました。しかし、奥さまがいらっしゃるのにと、不思議でなりません」
「言ったでしょう。好きだから一緒にいたい。結婚してるかどうかなんて、関係ないんです」
颯太はわずかに身を乗り出す。
何かの執着は、いっときの恋愛感情だろうか。
本当にこの青年は、私を好きなんだろうか。もし、本当だとしても、受け入れられるはずがないということを、なぜ気づかないのだろう。
「心の浮気は、奥さまを傷つけますよ」
「身体の浮気は傷つけないみたいな言い方だ」
「そういうつもりでは……」
「綾城さんは、婚約者を愛してるんですか?」
「え?」
心の底を見抜くような目を向けられて、どきりとした。
婚約者を愛しているのか……?
その質問の答えは、口にできない。
「家の都合で結婚するだけですよね。西園寺惣一郎を好きなわけじゃない。だったら、結婚なんてする必要ない」
私の心に土足で踏み込む彼に、困惑する。
「結婚は、するしないではなく、決められているのです」
「それが間違ってるって言ってるんです。婚約を解消してほしい。今日はそれを言いたくて、お誘いしました」
「それは無理です。結婚は、簡単なものではないでしょう?」
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