冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ねじれた愛をあばく時

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 テーブルの上に、ふたり分のコーヒーカップが置かれているのを見ながら、伊吹が言う。

「ええ、帰られたの」
「そっか。ちょうどよかった。私も、お友だちと駅で待ち合わせ」
「学校で待ち合わせするって言ってなかった? それに、千隼さんまで……」

 今朝、家を出るとき、どこに行くの? と伊吹が尋ねてきたから、知り合いに会うから大野寺駅まで行ってくる、と話したんだった。

 一方、伊吹は友だちとデパートに行くから高校で待ち合わせするんだと言っていた。

「それがさー、高校に向かってたら、急にひとり来れなくなって。だったら、大野寺駅で待ち合わせた方が早いねってなって。そうしたら、目の前に千隼さんの車が停まったから、声かけちゃった」

 どうやら、信号待ちで停まった千隼さんの車を見つけて、軽々しく声をかけたらしい。伊吹はあまり綾城堂へは来ないし、そこまでふたりに面識があったとは思えない。人懐こい彼女はおかまいなしなのだろう。

「大野寺駅まで歩いていくって伊吹さんが言うから、送ってきたんだよ」

 千隼さんがそう言う。伊吹はすぐに私の隣へ移動してくると、さっきまで颯太の座っていた席を彼に譲った。

「千隼さん……、申し訳ありません」
「全然。それより、つゆりさん、コーヒーあんまり飲んでないですか?」

 彼は冷めきったコーヒーに視線を向けている。

「あ、ええ、冷めちゃって」
「新しいの、頼みましょう。同じものでいいですか?」
「そのようなお気遣いは……」

 恐縮していると、伊吹が口をはさむ。

「私はいらないですよー。……あっ、ここのパンケーキ、めちゃくちゃおいしいからおすすめです!」
「そうなんですね。じゃあ、パンケーキも頼みましょう。つゆりさんはこのあと、ご用事は?」
「用事は特にないんですけれど。伊吹……、千隼さんに気を遣わせてはいけないわ」

 たしなめるが、伊吹は「千隼さんがいいっていうんだからいいのっ」と、ずうずうしい。千隼さんも、くすくす笑って、遠慮しすぎるのも良くないと言い出す始末だった。

 結局、パンケーキとコーヒーを注文し直した。コーヒーが運ばれてくる頃には、「友だちが駅に着いたってー」と、スマートフォンを見ながら、伊吹はカフェを出ていってしまった。

「落ち着きのない妹で、ごめんなさい」
「いいえ、楽しい妹さんですね」
「なんでも、人を巻き込むのが得意な子で。お手間を取らせました」

 頭を下げるが、千隼さんは一向に気にしてない様子で、ほがらかに微笑んでいる。

 おおらかで、懐の深い人だろう。少しばかり、対人において神経質になりすぎる私は、いつも彼の柔軟な態度に救われている。

「ちょうど、つゆりに会いに行くところだったんです。もしかしたら、駅につゆりがいるかもって伊吹さんが言うので、それならと。手間ではないんですよ」
「私に会いにきたと、伊吹にお話になったの?」
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