佐藤くんは覗きたい

喜多朱里

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通学路を覗きたい(4)

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 豊満な体付きに反して軽やかな身体を抱き留める。肉付きの良い胸や尻、太腿以外はほっそりと引き締められていた。激しい運動によるスポーティな身体ではなく、美貌を意識した日々の適度な運動と適切な食事によって作り上げられた努力の結晶だ。

「はぁはぁ、はふぅ」

 有村さんは爪先立ちになって首に手を回してくる。
 熱い吐息が首元をなぞった。

 快楽に緩んだ顔が目の前まで迫っており、艶やかな赤い唇に視線が吸い寄せられる。
 瞼を閉じてキスを誘っていた。
 首を傾けて唇を重ねようとして、不意に有村さんが崩れ落ちた。

「おっと、大丈夫?」

 後ろに倒れ込みそうになる有村さんの身体に左腕を回す。踏ん張りをきかせてなんとか支え切った。

「ありがとう、佐藤くん。急に緊張しちゃって力が入らなくなっちゃった」

 座り込んだ有村さんが汗で額に貼り付いた前髪を掻き上げた。
 立ち上がるのを手助けするために、右手を差し出そうとして途中で左手に切り替えた。有村さんを愛撫した指は、愛液に塗れて夕日の光でいやらしく輝いていた。
 図書室で倒れた有村さんを引き起こそうとしたやり取りを思い出す。あの時とよく似た状況だけど、愛液に濡れているのは僕の手になっていた。

「こっちの玄関なら寄り掛かっても制服が汚れたりしないよ」

 有村さんの手を引いて、一軒家の玄関前に移動する。
 建物自体は古いのだが、玄関はリフォームしてからそこまで経っていないようで、木製の扉の塗料は剥がれておらず綺麗な状態だった。

「……続き、するよね?」

 有村さんは玄関扉に背中を預けて、スカートをちょこりと摘んだ。
 中身を見せるつもりはなかったようだが、風の悪戯でスカートがふわりと膨らんだ。僅かに覗き見えた一瞬を僕は見逃さない。股間のぱっくりと開いた赤貝は、水揚げされたばかりのようにびしょびしょに濡れていた。

「もうっ、佐藤くんの目、すごくえっちだよ」
「否定しない」
「力強く言わないでよぉ」
「それだけ有村さんが魅力的だってことだから」
「むぅぅ、禁止だって言ったのに……ん、あっ、いきなり、やぁっ」

 スカートの中に手を突っ込んで、触診をするように秘部の形を探る。
 赤いビラビラが興奮に誘われて男根を受け入れようと広がり、舟型のくぼみを作り上げていた。
 二本の指――中指と人差し指を立てる。くぼみの中心にある膣口に沈み込ませた。

「んくぅ、だめ、ゆっくりぃ」

 有村さんは苦しそうに眉を寄せる。
 膣道が異物である僕の指をぎゅうぎゅうに締め付けた。
 誰も受け入れられたことのない純潔の穴は、大人の準備を整えている最中だった。

 僕はすぐ膣前庭まで指を引き抜いた。
 幼い膣壁は硬く狭い。膣口の周りをマッサージするように捏ね繰り回して快楽と愛撫に馴染ませる。

「んぃう、そこ、こそばゆい」
「気持ち良くないかな?」
「もうちょっと、続けてっ……あっ、上に、ああっ、少し上……そこっ」

 ぎゅっと内腿に力が入る。
 左右の赤いヒダ肉が重なり合う隙間を指でこじ開ける。貝柱のようにぷくりとむくれ勃つクリトリスが、隠れ潜んでいたのを探り当てた。

「んぁあっ!」

 指先で突いただけで悲鳴のような嬌声が上がった。

「もうここは触らない方が――」
「ううん、やさしく……さわってみて」

 クリトリスの近くをトントンと叩いてみると、有村さんはもどかしそうに腰をくねらせる。徐々に快楽の中心部へと近付けていき、膨れ上がった突起にそっと触れた。

「あう、あぁぅ、うんっ、きもちぃよぉ……もっと、さわって、お願いっ」

 とろとろに溶け切った微笑みを向けられて、ぱんぱんに膨らんだ亀頭がズボンを突き破ろうと暴れ出した。
 前屈みになる僕に有村さんが心配そうに顔を寄せる。

「苦しいの?」

 有村さんの手がズボンのチャックを開く。

「きゃっ……!」

 トランクスを引き下ろすと、馬の首がブルンといななきを上げるように肉棒が飛び出した。

「ひゃー……前に見た時より、おっきくなってる」
「すぐ近くで有村さんを見て、更に触ってるからね」
「そ、そうなんだ、前より喜んでるってこと?」

 男根を擬人化する台詞がなんだか可笑しかった。

「興奮してるってことだから、まあそうなるのかな」
「えへへ、そっか、もっと喜んでもらえるように頑張るね」

 有村さんの細い手が陰茎の根本をそっと包み込んだ。遠慮がちに皮の表面を撫で上げる。
 未知の快楽に腰が震えた。自分で触るのと、他人に触られるのではここまで違うものなのか。

「えっと、これでいいのかな? 合ってる?」
「もうちょっと力を入れて大丈夫」
「こうかな?」
「うっ、そう、そうやって握って前後に扱くの……ん、くっ」
「んしょ、んっしょ」

 有村さんは僕の指示と触れた時の反応で、気持ちの良い触り方を探っていく。どんどん上手くなり僕は思わず喘いでしまっていた。

「んふぅ、佐藤くんのえっちな声、可愛い」

 まさかの感想を聞いて戸惑ってしまう。
 女子の言う可愛いは『ヤバい』並みに広義的で意味を捉えるのが難しい。
 有村さんの反撃で、手マンが止まっていたことに気付く。このまま手コキを続けてもらえるのは嬉しいが、僕だって有村さんを悦ばせたい。

「もっと佐藤くんの声を――ひゃぅっ、だ、だめっ」

 クリトリスを刺激したお陰で、緩んだ膣口は二本の指が差し込めるようになっていた。まだ奥まではきつくて挿れられないが、入口近くを二本の指で掻き混ぜるように動かした。

「わたしが、んにぅっ、気持ち良くさせるのぉ……ああ、ああっ、だめぇ、手、止めて、んあっ……あんっ、あんっ、ああんっ」

 ぐちゅじゅぷ、ぐぷぷ、じゅくじゅくじゅく、じゅぽっ!
 暴れ回る指先に愛液が泡立ち淫らな水音を奏でる。

「はぁはぁはぁ……佐藤くんは、やっぱりいじわる――うぅぅっ、ああ、あう、まだぁ、喋って、ひゃぁう、んにっ、激しく、しないでっ、さとーくんに……おかえし、できな……んあっ!」
「良いよ、今は有村さんが気持ちよくなって、たくさん声を聞かせて」
「んーっあっ、声聞かれるのっ、あんっ……ああっ! わたしも恥ずかしいんだからねっ……あ、あぁうっ、ふぁっ、だめ、だめぇ、足に力、入らなく、なっちゃぅ、からぁっ!」

 有村さんが次々と注ぎ込まれる快楽から逃れようと足を開いた。
 背中が扉に押し付けられて腰が突き出される。

「あん、あんっ、んあぁっ、あっ! あーっ、あああ、ああーッ!」

 がに股で大きく開かれたスカートの中から、ぽたぽたと愛液が零れ落ちていた。
 有村さんには似合わない下品な格好と、朽ち果てた家々に囲まれた路地裏というアングラ感が噛み合って、より興奮を掻き立てられる。

「さとうくんっ……もう、だめっ、イッちゃう、イッちゃうよぉっ」

 有村さんが首を振って興奮に悶える。
 男根に見立てた二本指の挿送をより激しくさせた。

「ああ、あああ、ああああっ!」

 もう自力では立てない有村さんの腰を腕で支えて、ラストスパートを掛ける。
 じゅぽじゅぽじゅぽじゅぽん、ジュプジュプジュプ! ぐちゅぐちゅぐっちゅぐっちゅグチュグチュグチュ――ッ!!

「ああんっ、あんっ! あんっ!! イクぅ、イクイク、イクイクイクイクイクイク、イックぅぅ――――ッ!!!!」

 有村さんの腰が仰け反ってびくんびくんと大きく震えた。

「あ……ああ……あっ…………」

 心ここにあらずといった様子で、くたりと全身から力が抜けていく。
 僕はへたり込む有村さんを支えて、なんとか地面に倒れるのを防いだ。

「はぁはぁっ、はぁはぁはぁ」

 乱れた呼吸を整えた有村さんが、絶頂の余韻にまどろんだまま僕を見詰めてくる。

「さとーくん……あっ、手を、汚しちゃった、ごめんね……」

 とろんと焦点の定まらない目が、愛液で濡れた僕の右手に向けられた。
 膝立ちになって、両手で僕の右手を引き寄せると指先からぺろぺろと舐めていく。余りにも官能的な姿にぞくぞくとしてくる。
 手の平まで丹念に舐め取り終わると、有村さんは満足そうに微笑んだ。

「えへへ、きれーになったよ」
「うん、ありがとう」

 唾液塗れになっただけなのだが、それを言うのは野暮だ。

「すごく、きもちよかった」
「それなら良かった」
「……でも、さとうくんは、まだだよね」
「それは……」
「いっしょに、きもちよくなろう?」

 有村さんの意識が徐々にまどろみから戻ってくる。
 可愛らしく淫靡に誘惑の言葉を紡いだ口が小刻みに震え出した。

「あわ、あわわわ……佐藤くん、その、頭がふわふわになってて……」
「可愛かったよ」

 有村さん史上ナンバーワンと言っても過言ではない。

「き、きんしーっ! いわないでぇぇ!」

 ペタリと座り込んだまま涙目で見上げてくる。

「ひゃうっ!?」

 視線が顔から腰に下がっていき、僕も有村さんにつられて下を見る。
 ヤンキーな息子が社会の窓から飛び出したままだった。

「……お返しに、わたしもがんばってみるね」

 有村さんの手が肉棒を掴んだ。
 恐る恐る感触を確かめるように触れるのでむず痒い。

「ううっ」

 両手に支えられた肉棒に、有村さんの顔が近付けられた。
 熱のこもった吐息が亀頭を撫でる。

(もしかして手じゃなくて、口でやってくれようと……?)

 有村さんの口が開かれる。
 その時を今か今かと待ち望み、僕は股間に神経を集中させて瞼を閉じた。

 ――くしゅんと可愛らしいくしゃみが聞こえた。

 目を開けると、有村さんが鼻と口を覆い隠すように手を当てていた。

「風邪を引いちゃうから、ここまでにしようか」

 僕はポケットティッシュを差し出して背中を向ける。

「うぅぅ、ごめんね」
「大丈夫だよ」

 背中に衣擦れの音を聞きながら、僕は反抗期の息子を無理矢理にズボンの中へと押し込んだ。勃起は収まらないのでなんとかチンポジを調整した。

「佐藤くん、もう大丈夫だよ」

 振り返ると、足首に引っ掛けてあったパンツが穿き終えていた。乱れていた制服も整えられており、汗ばんだ肌だけがさっきまでの行為が妄想ではない証明だった。

「なんだか着替えの時に背中を向けているの新鮮な感じだね」
「それが普通なのにね」
「えへへ、本当にね」
「……有村さん」
「んー? どうしたの?」
「ええと、さっきの続きは、その……次の楽しみにしておくね」
「分かった! たくさん勉強しておくからねっ!」

 健気な宣言を聞いて、僕は安堵していた。
 次の楽しみと言ってみたが、曖昧な僕たちの関係に次があるかどうかなんて確定していなかった。でもどうやら次を期待して良さそうだ。

「ああ、そうだった」

 ぼっちになる前はこういう喜怒哀楽に振り回されるのが当たり前の筈だった。他人の感情を考えることの苦しみと幸せを思い出せた気がする。
 自転車のもとに戻る途中、前を歩く有村さんからくぅくぅと幼気な空腹の鳴き声が聞こえてきた。
 耳まで赤くした有村さんがあたふたしている。

「きょ、今日は! 適当に作って先に食べちゃおうかなー!」
「それなら僕の家に来て一緒に食べる?」
「えっ?」
「帰りが遅いって話だからさ、もう少しぐらい寄り道していかない?」
「いいの……?」
「僕も独りだしね、大歓迎だよ」

 有村さんがクラスメイトには見せない柔らかい笑顔を浮かべた。
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