お馬鹿な子ほどかわいいものです

葉月彩香

文字の大きさ
2 / 2

百年たっても無理

しおりを挟む
 くっそぉ、笹川健吾め…。
 また人の体で好き勝手しやがって。

 先日の寝顔激写大作戦も失敗に終わり、俺は新たな復讐に決意を燃やしていた。

 絶対に笹川健吾の弱みを握ってやるんだから。

  

「裕ちゃんどうしたの?」

「先輩…」

「眉間にしわ寄せて…可愛い顔が台無しだぞ」

 そういって、テニス部、副部長の青山先輩は俺の眉の間をつんと突いた。

「あ…はい」

 なんていうか、青山先輩はかっこいい。

 あの目で見られちゃうとぽわんとしてしまう。

「ホント、どうした?」

 くすくすと笑いながら、青山先輩が俺を見る。

「あ、あの…青山先輩は…弱味を知りませんか?」

「健吾の?」

 俺の言葉に、青山先輩は面白いことを見つけたような顔をする。

「はいっ」

 俺が勢いよく言うと、青山先輩はさらに笑みを深めた。

「おもしろいな…。それは知っとるけど…」

「ほんとうですか?教えてください」

「ん~可愛い目で見られてもなぁ…なんつーか」

 そう言って、青山先輩は困ったように空を仰ぎ、ちらりと俺を見た…。

 …ん?

「弱味をお前に教えても意味ないからなぁ」

「どういうことです?」

「裕が知っても健吾には痛くもないってもこと。お前以外に有効やから」

 俺以外に有効って…使えないじゃん…でもそれってどういうこと?

 よくわからなくて、俺は首を傾げた。

 

「俺が何だって?あ?」

 出たな…笹川健吾!

 聞きなれた声に俺の体が思わずびくりと震える。

 俺と青山先輩の時間を邪魔しに来たのか…?

「青山、てめぇ何、人のモンに手を出してやがる」

 笹川健吾は俺の背後にいるようで俺は振り向こうとした。

 が、できなかった。

 というのも、笹川健吾の腕が俺の首に巻きついたからだ。

 きつ…だんだん力入ってません?…つーか…苦しいんですけど…うぐ…。

「健ちゃん…しまってるぜ」

 呆れたような青山先輩の声が聞こえると同時に、ふっとその力が抜けた。

 助かった…やっぱり青山先輩は天使です。

 死ぬかと思った…絞め殺す気か笹川健吾!

 俺が弱味を握ろうと動いていることを知っているのか!恐るべし…笹川健吾。

 俺はあまりの苦しさに涙目になっているが、それにかまわず後ろでまだ首をホールドしている笹川健吾をにらみつけた。

「何するんですか!」

 俺が首だけ後ろを振り向くと、笹川健吾はそのまま俺に顔を近づけてそのままキスされた。

 むぐ…ふぁ…

 息苦しさにあえぐと、近いところでふっと笑われそのまま抱き上げられた。

 俺の体はふわりと上に。

 へ?…もしかして…いつもの展開?

「お、降ろしてください」

「裕が誘ってんのが悪い」

 あのぅ…この人は何を言っているのでしょう。俺にはさっぱり判らないんですけど…。

 そして、俺があまりのことに目を回している隙にさっさと、俺を抱き上げながら歩き出した。

 

「やっぱり健吾は裕に弱いなぁ」

 のほほんと後ろから青山先輩の声が聞こえてきた。

 意味不明です…。

 

 
 もしかして、俺って100年たっても笹川健吾には敵わないのかな…。 

 

  2004/06/11
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

処理中です...