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「若葉さんっ!」
昼休みももう終わりという頃、若葉聡の前に息を切らして走ってきたのは、後輩の榊長太郎だった。
「どうした?」
「ちょっと来て下さい」
首を傾げる聡に、長太郎は問答無用でその腕を掴むと、どこかへと引っ張っていく。
「お、おい…もうすぐ昼休み終わるって…長太郎…」
慌てる聡にも長太郎はお構いなしだ。
連れられた先は、部室。部屋で二人きりになった。
「こんなところに連れてきて、どう…」
部室に入って、長太郎の行動の意味を問いただそうと振り返った途端、その言葉は長太郎の唇によって奪われた。
「んっんん…ぁ…」
突然の事に目を白黒させ、聡は抗うことすら出来なかった。
長いキスがゆっくりと終わり、名残惜しげに長太郎の唇が離れていく。
だが、身体全てが聡から離れるわけではない、ぎゅうっと抱きしめたままで、そのまま聡の髪に顔を埋めるように抱きついた。
長太郎にしがみつかれるように抱きしめられて、聡には、その顔を見ることが出来ない。
「…どうしたんだ?」
いつもと様子の違う長太郎に、聡がゆっくり声をかける。
何も言わずに、ただただ聡の身体を抱きしめ続ける長太郎の柔らかな髪を撫でてやる。
「……若葉さんってもてるんですね?」
ぽつりと長太郎が呟いた。
「さっき…若葉さん、告白されてたでしょ…」
「なっ、お前…見てっ…」
告白されてる場面なんか人に見られるのはこっぱずかしい…聡が顔を赤くする。
長太郎は、そんな聡の様子を顔を上げなくてもわかるのか、ぎゅっと少しだけ力を込めた。
「それ見てたら…どうしようもなく、苦しくて…悲しくて…俺、若葉さんのこと好きだから…好きだから…誰かに奪われたくなくて…若葉さんがもてるのって…つらい…」
ぽつりぽつりと長太郎が語る。
「あ?何言ってんだ?お前のほうがもてんだろうが」
いつだって、長太郎は、後輩の女の子に囲まれていた。
嬉しいような困ったような顔で、頭に手をやりながら…。
聡は面白くなくて、そんなときはすぐに顔を背け、その場を後にする。
「だって…若葉さんは…」
その先を長太郎は飲み込んだ。
『若葉さんは…若葉さんは、気持ちを言ってくれないから…俺がどんなに好きだって言っても、何も言ってくれない。俺のこと好きですかと聞けば、「ああ」とか返ってくるけど…。一度だって、若葉さんの口から聞いたことがない。』
聡は、何も言ってくれないけれど、ちゃんと受け止めてくれるから、いままで長太郎は満足でいられたけれど、あんな場面を見たら…不安になる。
だから、どうしようもなくなって、長太郎は聡をこの手で抱きしめてたくて、確かめたくて、部室まで連れ込んだのだ。
この人は…俺のものだ…この人は、俺だけのものだ…。
長太郎の中に、強い思いがわきあがった。
「…俺が何だ?」
聡の問いに、長太郎は顔を上げた。
不安なんかよりも、もっと強い思い。
「あなたが欲しいです」
「なっ…」
さきほどの項垂れた姿から一転して、オスの顔になった長太郎の変わりように、聡は戸惑った。
そんな聡の様子に長太郎は、悲しくなる。
「あなたを欲しいと思うことは、そんなにいけない事ですか」
「長太郎?」
「そんなに困ることですか」
「どうした、長太郎」
「俺は若葉さんが大好きです。若葉さんをほしいと思うのはどうしようもないです。あなたを手に入れたくて手に入れたくて…」
暴走した長太郎が、聡を部室にあるソファーに押し倒した。
「長っ…た…ろ…っ…」
聡の制止は、長太郎を止めることは出来なかった。
「若葉さん、若葉さん、若葉さんっ…!」
それしか言葉を知らない子供のように、長太郎は何度も聡の名前を呼ぶ。
そして、何度も角度を変えて、上から圧し掛かるようにして深く深く聡の唇を吸った。
「んぁ…ふ…む…ん……っ……」
呼吸困難になりそうなほどの強く激しい口付け。
舌を絡ませ、互いの唾液を交じらせ、二人の距離はゼロに等しい。息も魂も何もかも奪ってしまいそうなキス。
そのキスが終わったとき、聡の頭は真っ白になっていて、息を整えるために肩で大きく息をつく。
身体から力も抜けて、呆然と長太郎を見る。
とてつもなく真剣な顔をしている…。
「どんなに嫌われても…あなたを放さないっ、離してなんかやらないっ!」
「なっ…」
長太郎の言葉に、聡が止まった。そして長太郎を怒鳴りつけた。
「なんで…俺がお前を嫌うんだよっ!」
「わ、わかばさん?」
今度は長太郎が止まる。
「なんで…俺が、俺がお前を嫌うなんてことがあるんだよ…」
幾分、落ち着いたような声で聡が若葉を見つめた。
「…だって、だって…若葉さん、俺に何も言ってくれないじゃない…俺…俺、こんなに好きなのに…」
拗ねたような顔をして、長太郎が聡を責める。
「…言えるかよ…」
「言ってよ…若葉さん…聞きたい…」
顔を背ける聡を、長太郎が追う。
「……お前と同じ気持ちだ…」
「ちゃんと言ってください。お願いします」
「……………………………すきだ………」
観念したのか、聡は長太郎の視線に耐え切れなくなって、ぼそりと言う。
長太郎は、嬉しそうに笑った。
そっと横たえた身体を抱きしめて、長太郎は願望を口にする。
「若葉さんを束縛したい…」
「お前なら、いい」
聡が長太郎を見ずに言った。
長太郎が驚いたように、聡の顔を覗き込んだ。
「俺、本気で束縛しますよ?」
「いいって…」
「…例えば、痕つけてもいいんですか?」
「…ああ…」
「若葉さん寛容すぎです。俺、つけあがりますよ?」
「いいんだよ…」
お許しをいただいて、長太郎はそっと、ワイシャツを開くと、聡の身体に唇をつける。
ちゅ…
「んっ…」
ちゅうぅ…
「ぁ…」
ちゅっ…
「ふぁ…ん」
キスを胸元に落とすたびに、吸い付くたびに、聡の口からこらえきれないような甘い声が聞こえてくる。
長太郎は、その声が聞きたくて、調子に乗ってどんどん数を増やしていく。
はっと気づいたときには、すごいことになっていた。
「痕いっぱいつけちゃいました…」
快感に酔っていた聡の耳に、すまなそうな長太郎の声が聞こえた。
聡が自分の身体を見ると身体いっぱいに赤い痕ができていた。
「なんかの病気みたいだな…」
怒るよりも呆れて、若葉が呟いた。
「すみません…」
しょぼんと項垂れる長太郎。聡の目には、長太郎の犬耳が見える。
なんだか、情けない長太郎がおかしくて、そして何よりいとおしくて、聡の口元には自然に優しい笑みが浮かぶ。
「いったろ?お前ならいいって」
聡は腕を広げて、自分よりも大きな長太郎の頭を包み込んだ。腕にサラサラとした長太郎の髪が当たる。
長太郎は聡に包まれて、幸せな気分になりながら、自分の目の前にある胸の突起に舌を這わせた。
びくっと聡の身体が揺れた。
「ふっ…ぅ…」
漏れ聞えてくる声が快感を伝えてきて、嬉しい。
舌をすうっと肌に這わせて…長太郎は自分がつけた痕をひとつずつ舌でなぞった。
それはまるで自分のものであることを確かめるかのように…。
「ちょ…ぁ…やめ…ん…ぁ…」
聡の制止の声から、長太郎はどうしようもないほど高まった熱を知る。
そっと手を下におろして、聡の熱の元に触れると、驚いたような、それでいてほっとしたような声が聞こえた。
聡の滾る熱を着衣から解放させると、長太郎は身体をずらしてキスを落とした。
「ひぃっ…」
びくんと揺れる身体と、それが、愛しい。
キスだけじゃ収まらなくて、唇の中に招き入れる。
舌に絡めて先端を吸い上げると、聡の腰が浮き上がった。ぐるりと聡の腰に手を回して支えると、もう片方の手で秘部をなぞる。
乾いた手ではただ入り口をなぞるだけ。でも、欲しがってひくひくと強請るので、少しだけ中へと入れると、浅いところを刺激する。
「んっ…ちょ…たろ……」
「すみません、若葉さん…何も用意してないので…」
長太郎はそう言うと、聡の足を上げさせて、奥まったところへと舌を入れた。
「ばっ…」
「こうやると濡れますから…」
自分の唾液で、聡の場所を解きほぐそうと、舌を動かす。
「ひぃぁ…っ…ひ…」
まるで軟体動物のようなソレは、何度も何度も出入りを繰り返した。
「若葉さん…」
じっと快感に耐えていた聡が目を開けると、目の前に、真剣にこちらを見つめてくる長太郎が見えた。
「…こい…よ」
聡は笑って長太郎を迎え入れる。
長太郎は、ほっとしたように、自分のものをあてがうと、ゆっくりと身体を繋げた。
「若葉さん、大好きです」
2005/05/10
THE END
昼休みももう終わりという頃、若葉聡の前に息を切らして走ってきたのは、後輩の榊長太郎だった。
「どうした?」
「ちょっと来て下さい」
首を傾げる聡に、長太郎は問答無用でその腕を掴むと、どこかへと引っ張っていく。
「お、おい…もうすぐ昼休み終わるって…長太郎…」
慌てる聡にも長太郎はお構いなしだ。
連れられた先は、部室。部屋で二人きりになった。
「こんなところに連れてきて、どう…」
部室に入って、長太郎の行動の意味を問いただそうと振り返った途端、その言葉は長太郎の唇によって奪われた。
「んっんん…ぁ…」
突然の事に目を白黒させ、聡は抗うことすら出来なかった。
長いキスがゆっくりと終わり、名残惜しげに長太郎の唇が離れていく。
だが、身体全てが聡から離れるわけではない、ぎゅうっと抱きしめたままで、そのまま聡の髪に顔を埋めるように抱きついた。
長太郎にしがみつかれるように抱きしめられて、聡には、その顔を見ることが出来ない。
「…どうしたんだ?」
いつもと様子の違う長太郎に、聡がゆっくり声をかける。
何も言わずに、ただただ聡の身体を抱きしめ続ける長太郎の柔らかな髪を撫でてやる。
「……若葉さんってもてるんですね?」
ぽつりと長太郎が呟いた。
「さっき…若葉さん、告白されてたでしょ…」
「なっ、お前…見てっ…」
告白されてる場面なんか人に見られるのはこっぱずかしい…聡が顔を赤くする。
長太郎は、そんな聡の様子を顔を上げなくてもわかるのか、ぎゅっと少しだけ力を込めた。
「それ見てたら…どうしようもなく、苦しくて…悲しくて…俺、若葉さんのこと好きだから…好きだから…誰かに奪われたくなくて…若葉さんがもてるのって…つらい…」
ぽつりぽつりと長太郎が語る。
「あ?何言ってんだ?お前のほうがもてんだろうが」
いつだって、長太郎は、後輩の女の子に囲まれていた。
嬉しいような困ったような顔で、頭に手をやりながら…。
聡は面白くなくて、そんなときはすぐに顔を背け、その場を後にする。
「だって…若葉さんは…」
その先を長太郎は飲み込んだ。
『若葉さんは…若葉さんは、気持ちを言ってくれないから…俺がどんなに好きだって言っても、何も言ってくれない。俺のこと好きですかと聞けば、「ああ」とか返ってくるけど…。一度だって、若葉さんの口から聞いたことがない。』
聡は、何も言ってくれないけれど、ちゃんと受け止めてくれるから、いままで長太郎は満足でいられたけれど、あんな場面を見たら…不安になる。
だから、どうしようもなくなって、長太郎は聡をこの手で抱きしめてたくて、確かめたくて、部室まで連れ込んだのだ。
この人は…俺のものだ…この人は、俺だけのものだ…。
長太郎の中に、強い思いがわきあがった。
「…俺が何だ?」
聡の問いに、長太郎は顔を上げた。
不安なんかよりも、もっと強い思い。
「あなたが欲しいです」
「なっ…」
さきほどの項垂れた姿から一転して、オスの顔になった長太郎の変わりように、聡は戸惑った。
そんな聡の様子に長太郎は、悲しくなる。
「あなたを欲しいと思うことは、そんなにいけない事ですか」
「長太郎?」
「そんなに困ることですか」
「どうした、長太郎」
「俺は若葉さんが大好きです。若葉さんをほしいと思うのはどうしようもないです。あなたを手に入れたくて手に入れたくて…」
暴走した長太郎が、聡を部室にあるソファーに押し倒した。
「長っ…た…ろ…っ…」
聡の制止は、長太郎を止めることは出来なかった。
「若葉さん、若葉さん、若葉さんっ…!」
それしか言葉を知らない子供のように、長太郎は何度も聡の名前を呼ぶ。
そして、何度も角度を変えて、上から圧し掛かるようにして深く深く聡の唇を吸った。
「んぁ…ふ…む…ん……っ……」
呼吸困難になりそうなほどの強く激しい口付け。
舌を絡ませ、互いの唾液を交じらせ、二人の距離はゼロに等しい。息も魂も何もかも奪ってしまいそうなキス。
そのキスが終わったとき、聡の頭は真っ白になっていて、息を整えるために肩で大きく息をつく。
身体から力も抜けて、呆然と長太郎を見る。
とてつもなく真剣な顔をしている…。
「どんなに嫌われても…あなたを放さないっ、離してなんかやらないっ!」
「なっ…」
長太郎の言葉に、聡が止まった。そして長太郎を怒鳴りつけた。
「なんで…俺がお前を嫌うんだよっ!」
「わ、わかばさん?」
今度は長太郎が止まる。
「なんで…俺が、俺がお前を嫌うなんてことがあるんだよ…」
幾分、落ち着いたような声で聡が若葉を見つめた。
「…だって、だって…若葉さん、俺に何も言ってくれないじゃない…俺…俺、こんなに好きなのに…」
拗ねたような顔をして、長太郎が聡を責める。
「…言えるかよ…」
「言ってよ…若葉さん…聞きたい…」
顔を背ける聡を、長太郎が追う。
「……お前と同じ気持ちだ…」
「ちゃんと言ってください。お願いします」
「……………………………すきだ………」
観念したのか、聡は長太郎の視線に耐え切れなくなって、ぼそりと言う。
長太郎は、嬉しそうに笑った。
そっと横たえた身体を抱きしめて、長太郎は願望を口にする。
「若葉さんを束縛したい…」
「お前なら、いい」
聡が長太郎を見ずに言った。
長太郎が驚いたように、聡の顔を覗き込んだ。
「俺、本気で束縛しますよ?」
「いいって…」
「…例えば、痕つけてもいいんですか?」
「…ああ…」
「若葉さん寛容すぎです。俺、つけあがりますよ?」
「いいんだよ…」
お許しをいただいて、長太郎はそっと、ワイシャツを開くと、聡の身体に唇をつける。
ちゅ…
「んっ…」
ちゅうぅ…
「ぁ…」
ちゅっ…
「ふぁ…ん」
キスを胸元に落とすたびに、吸い付くたびに、聡の口からこらえきれないような甘い声が聞こえてくる。
長太郎は、その声が聞きたくて、調子に乗ってどんどん数を増やしていく。
はっと気づいたときには、すごいことになっていた。
「痕いっぱいつけちゃいました…」
快感に酔っていた聡の耳に、すまなそうな長太郎の声が聞こえた。
聡が自分の身体を見ると身体いっぱいに赤い痕ができていた。
「なんかの病気みたいだな…」
怒るよりも呆れて、若葉が呟いた。
「すみません…」
しょぼんと項垂れる長太郎。聡の目には、長太郎の犬耳が見える。
なんだか、情けない長太郎がおかしくて、そして何よりいとおしくて、聡の口元には自然に優しい笑みが浮かぶ。
「いったろ?お前ならいいって」
聡は腕を広げて、自分よりも大きな長太郎の頭を包み込んだ。腕にサラサラとした長太郎の髪が当たる。
長太郎は聡に包まれて、幸せな気分になりながら、自分の目の前にある胸の突起に舌を這わせた。
びくっと聡の身体が揺れた。
「ふっ…ぅ…」
漏れ聞えてくる声が快感を伝えてきて、嬉しい。
舌をすうっと肌に這わせて…長太郎は自分がつけた痕をひとつずつ舌でなぞった。
それはまるで自分のものであることを確かめるかのように…。
「ちょ…ぁ…やめ…ん…ぁ…」
聡の制止の声から、長太郎はどうしようもないほど高まった熱を知る。
そっと手を下におろして、聡の熱の元に触れると、驚いたような、それでいてほっとしたような声が聞こえた。
聡の滾る熱を着衣から解放させると、長太郎は身体をずらしてキスを落とした。
「ひぃっ…」
びくんと揺れる身体と、それが、愛しい。
キスだけじゃ収まらなくて、唇の中に招き入れる。
舌に絡めて先端を吸い上げると、聡の腰が浮き上がった。ぐるりと聡の腰に手を回して支えると、もう片方の手で秘部をなぞる。
乾いた手ではただ入り口をなぞるだけ。でも、欲しがってひくひくと強請るので、少しだけ中へと入れると、浅いところを刺激する。
「んっ…ちょ…たろ……」
「すみません、若葉さん…何も用意してないので…」
長太郎はそう言うと、聡の足を上げさせて、奥まったところへと舌を入れた。
「ばっ…」
「こうやると濡れますから…」
自分の唾液で、聡の場所を解きほぐそうと、舌を動かす。
「ひぃぁ…っ…ひ…」
まるで軟体動物のようなソレは、何度も何度も出入りを繰り返した。
「若葉さん…」
じっと快感に耐えていた聡が目を開けると、目の前に、真剣にこちらを見つめてくる長太郎が見えた。
「…こい…よ」
聡は笑って長太郎を迎え入れる。
長太郎は、ほっとしたように、自分のものをあてがうと、ゆっくりと身体を繋げた。
「若葉さん、大好きです」
2005/05/10
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