秘密の扉 短編【R】

葉月彩香

文字の大きさ
4 / 23

Rein

しおりを挟む
 雨…流れるような冷たい雨。

 俺はその中で見つけてしまった。バス停で雨にうたれてたたずむ…篤史。
 すぐにわかってしまった。それが篤史であると…。篤史は傘も持たないで、ただ車を見送るばかり。
 雨に濡れて…でも、俺にはわかった。あいつは泣いている。

 いつもこんな時に出会ってしまう。

 俺が近づくと篤史は顔を上げ、濡れた頬で微笑んだ。
 心がきゅうっと締め付けられる気分になって、俺はバス停近くにある屋根のあるベンチへと誘った。
 篤史が座ると、部活で使うために持ってきたスポーツタオルを篤史の頭に掛けた。
「ごめん。」
 そう呟く篤史を無視して、俺は乱暴に篤史の頭を拭いた。
 あいつのことで泣く篤史なんて見たくなかった。見ていてつらい。言わなくてもわかるから。あいつも今日は一日どこか不自然だった。
 いつもこんな時に出会ってしまうな…。俺は自嘲気味にそっと呟いた。 

 篤史は小学校の時からずっと一緒だった。背が低く、髪がさらさらで、明るくて、ちょっとドジで、弟みたいなヤツだ。
 そして、あいつ…誠は高校でできた友人で、今、篤史の恋人だ。
 誠と知り合ってからいつも三人でつるんでいた。
 それが去年、誠と篤史が付き合いだした。それは俺にとって大きな衝撃だった。そしてその時初めて、俺は篤史への気持ちに気づいた。それまで俺は、これから先いつも篤史と一緒だと思っていた。だが、篤史は、誠とともに…。

 気づくのが遅すぎた。

 男同士…世間は冷たいから、だから俺が守ってやる。俺はそう言った。
 俺が守ってやる。応援してやる。俺は篤史への想いを強制的に封じ込めた。
 とても好きだなんて言えなかった。答えはわかっているから。

 だが、こんな風に誠のことを思って泣く篤史を見て、閉じこめたはずの想いが溢れてくる。終わった恋だと思っていたのに。

 もうすぐ、誠がここに…篤史を追ってくるだろう。そんな二人の姿を見たくなくて、誠が来る前に俺はやってきたバスへと向かう。雨に濡れた窓から、傘を差さずに走ってくる姿がちらりと映った。
 誠だ。
 
 俺には二人の姿は…痛すぎる…。

 雨は…嫌いだ。
 
 

END 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...