秘密の扉 短編【R】

葉月彩香

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恋情

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 朝、登校する二人。かなり目立つ。
 二人は兄弟である。兄の方は母親似の整った顔立ち。身長が180弱、細身で色白でキツイ目をしているが綺麗。名前は梶原純也。高2。バスケをやっていて、3年が引退した今、そのキャプテンを務めている。頭も良く、学年の5本の指に入る。
 弟の方は兄より背が高く、185ある。サッカーをやっているため、色が黒く体つきがしっかりしている。スポーツならなんでも好きで得意だが、室内のバスケよりも、もっと広範囲で時間の長い動きができるサッカーを選んだ。一年ながら強豪の2.3年生を押し退けてレギュラー入りをしている。しかし、それで恨まれたりしないのは人受けしやすく、誰とでも仲良くできるからだ。彼の名前は梶原勇介。
 二人とも違ったタイプの美形で人目を引いた。兄は綺麗。弟は格好いい。二人とも女の憧れの的であるが、しかし誰とも付き合ってはいない。
 
 
 バスケをする純也がいた。そして、それを見つめる勇介が。
 誰よりも輝いていて、綺麗な兄。純也よりも綺麗で、美しい人間を今まで勇介は見たことがなかった。
 自分の兄を好きだと自覚したのは中3のとき。
 兄が高校へと進学し、一日の中で顔を合わせる機会が極端に減って、そしてようやく気づいた。
 兄への独占欲。
 高校で生活する兄の交友関係が気になり、かかってくる電話には片っ端から出るようになったりした。
 抑えきれない想いに恋い焦がれて、もう何カ月もまともに眠れた日はない。  
 
 
 サッカーをしている勇介。
 日の光を身体中にいっぱいに浴びて傍目で見ていても本当に楽しそうにサッカーをしている。
 女が騒ぐのも無理はない。誰にでも笑顔でこたえる。自分のように素っ気ない態度なんてできないのだから。
 純也はじっと勇介を見ていた。
 何にでも気後れすることなく、立ち向かっていく強さと、一見無鉄砲とも思われる好奇心と勇気、どんなことにもめげない明るさ。全て自分にはないものだ。自分無いものに人は憧れ、熱望する。
「ばかみたいだな」
 純也は独り言を呟いた。
 弟を欲しいと思う心なんてどうかしてる。
 これ以上おかしな感情に捕らわれないようにと純也は勇介の姿を視界から無くし、体育館へと向かう。
 誰もいない体育館で、一人無心にボールを扱う。バスケをしている時だけが何も考えずにいられる。
 純也は怖かった。自分の感情に気づいたとき、自分は壊れてしまう。だから純也は敢えていつも感情に気づきそうになる手前で逃げてきた。深く考えないこと、気持ちから目を背けること、それを無意識にしてきた。
 
 
 
 その日、純也は気分が悪くて、部活を早退して帰った。家につき、扉を開けようとすると、カギが開いているのに気づいた。
今の時間母親がいることはない。ということは勇介?
 なぜか少し気分が軽くなったようだった。
 が、そんな純也を衝撃が襲った。玄関に女物のサンダルが並べられていた。そして、リビングから声が漏れてくる。
「もう~。くすくすくす…あ、もう帰るよ。また明日ね。勇介」
「ああ」
 リビングのドアが開き、純也と目があった。
「あ、先輩…。おじゃましました」
 明るく無邪気に笑ってぺこりと純也に頭を下げてすれ違い、帰っていく。
 純也がリビングに行くと、驚いた顔をした勇介がいた。
「どうしたの、純也」
「…気分悪くて抜けてきた」
 そう言いながら、ずしんと再び体が重く、つらくなってきたのを感じた。
「大丈夫かよっ…」
 勇介が思わずソファーから立ち上がった。構わず純也が聞く。
「勇介は?」
 ドアのところの壁に身体を寄りかからせて純也は勇介を見た。
「俺?今日は休みだったんだ」
「だから女連れ込んだのか…」
 勇介には聞こえないくらいの声でぽつりと呟いた。
「え?」
 勇介が聞き返すと同時に純也の身体がぐらりと傾いた。慌てて、勇介が飛び出してきて純也を受け止めた。身体が熱い。
「おいっ。純也や。しっかりしろよ」
 既に純也の意識はない。勇介は純也の身体を抱きかかえると、2階の部屋へと運んだ。
 純也の半開きの唇から苦しげな吐息が漏れる。
 勇介は思わず、状況も忘れごくりと息をのんだ。
 熱のため頬が上気し、きつさのある瞳も閉じられ、そればかりか目元に涙が光っている。何とも色っぽい。そして、肩のところをかすめる純也の柔らかな髪。これで純也が病気でなかったら間違いなく勇介は理性を飛ばして襲いかかっていることだろう。
 こんなに近くに純也の傍にいるのは久しぶりだった。
 綺麗な兄。
 これが自分のものだったらよかったのに。
 そう思うと勇介の胸の奥がちりりと痛んだ。
 聡明で、誰よりも潔く、そして気高く美しい兄が自分の歪んだ欲望に応えるわけがないのだ。
 きっと想いを告げたら、兄弟の均衡は崩れてしまう。誰よりも一番近くにいられる場所を失ってしまう。それでも…。
 それでも…勇介は純也の顔を見て告げずにはいられない。
「純也…愛してる」
 意識のない純也に囁いて、腕の中の純也を見つめた…。    
END


これはまたもや兄弟モノ。年下攻め。タイトル・内容未定の空きスペースに書いてある作品のことです。ホントは中編にしたかったんだけど、そこまで長くないので短編。もしかしたらもしかしての続きがこの先更新できるかも。もちHアリで(爆)どんなもんでしょう。
  
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