秘密の扉 短編【R】

葉月彩香

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繰り広げられる駆け引き

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 大きな窓。眼科には光の海。
 高層階であることがわかる一室に、河村景と沢木薫がいた。


「どうだ?S社の見込みはあるのか」


「前年度の実績は話になりません。成長も伸び悩んでいるようですし、仕事を持ち込んだとしても…これでは成果は期待できませんね」

「そうか。なら、早めに切るか」

 そこまで言って、河村はにやりと笑う。

「で?どこならいーんだ?薫のことだから見つけてあるんだろ?代わりを」

「ええ。まだそれほど有名ではありませんが、T社ですね。データは揃っています」

 沢木が差し出した数枚の紙をぱらぱらとめくると、不敵な笑みが浮かぶ。

「まあまあだな」

「では決まりですね」

「ああ」

 二人が目を合わせる。

 二人の顔には同じ種類の笑みがあった。

 

「これからはやっとプライベートだ」

 書類を全部しまい、パソコンも落として河村はぐうっと伸びをする。

「まったく…家に帰ってまで仕事ですか」

 沢木も秘書としての堅苦しい言葉遣いを普段のものに直して毒づく。

「普通、仕事を家に持ち込まないのが美徳ですよね?
美を追求する河村景様としては毎度毎度よろしくないんじゃありませんか?」

 厭味をこめて笑うと、河村はにっこりと笑う。

「社長が会社で仕事してたら部下はいつまでも帰れなくなるだろ」

「だからといって家で…もう日付変わってます。残業代は…出ても良いはずですよね」

 沢木が壁にかけられた時計を指して河村を睨む。

「はっ、薫の給料にはもう上乗せしてあるぜ」

 ただでさえ高給取りなのに…と河村が悪態をつく。

 だが、沢木は諦めない。

「景が会食に行っている間にデータ集めたりと…今日は俺のほうが忙しかったんですから…」

 そこまで沢木が言うと、河村はやれやれ、と首を振った。それを見て沢木はにやりと笑い、びしっと河村を指差す。

「…ということで景が奉仕決定です」

「あ~ん?いい度胸だな」

「さ、そうと決まれば風呂に入ってきます」

 河村の抗議の言葉に一切耳を貸さず、さっさと風呂場へ行ってしまう。

 後姿を見送って、河村はふうっと息を吐く。

 理性を飛ばしてしまえる受け手はある意味楽。

 苦痛や負担を考え、自分より相手を第一に考えなければならないため、快楽だけを追うとはできない。疲れたから受けでも良いと思っていた河村だが、先を越されてしまった。

 しかし、無理やり沢木が決定させたのは、それだけ本当に大変だったということだろう。

 河村はため息一つで諦める。

 だが、自分の思い通りで、自分の下で誰にも見せたことのない薫の顔を見るのは楽しいかもしれない。

 考え方を変換させると、河村も薫を追って風呂場へ向かった。

   END
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