アプロディーテの大殺界

佐藤ののり

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シオンと私のこれから。

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「リリーシア嬢のことを心から慕っています。15歳になったら求婚したいと思っています。」
私達が13歳になったとき、父とシオンが初めて対面したときにシオンが言った言葉だった。
「シアのことが好きだ。」と彼は出会って2回目に会ったときから何度も何度も好意を伝えてくれたが、父に改めて宣言したときには驚いた。
シオン・ワイマールは物語に出てくる王子様を実写化したような人だ。世界屈指の富豪であり、世界で指折りの大国で皇家と同等の権力を持つ公爵の跡取りという富と権力が約束された立場にある。彼と私が出会った頃には既にサルニア帝国立大学の模試はほぼ満点で常にA判定をもらっていた。運動神経も良くって、フェンシングをしている姿は王子様そのものだ。容姿も美しいアッシュシルバーの銀髪と切れ長の目には美しいアイスブルーの瞳が煌めいていて、薄くて形の良い唇と形の良い鼻梁は顔に完璧に配置されている。ミルクのような透明感のある美しい肌は女性から見ても羨ましい。
こんな完璧な人がここまでまっすぐ想ってくれるなんて、物語の主人公になったような気持ちになる。
でも、彼から愛を囁かれるたびに私は焦燥していく。
時々、彼と居ると自分に対するコンプレックスで黒い気持ちが湧き上がってくる。
私は彼に見合うような立派な女の子ではないと。

私の容姿は、帝国一の美女と言われた母に似ていて見目は麗しいのだと思う。でも、彼の家に役立つような才覚もないし、聖女のように心優しく彼を癒せるわけでもない。
勉強はできるほうだが、一つ年上の兄と励まし合って何とか受験を乗り越えられただけ。努力するという才能はあるけれど、天才的なひらめきなどできない凡人だ。
見た目だけしか私に美点がないのであれば、それはつまり時が経って若さと美しさが無くなったら私の良いところなんてなくなってしまうということだ。

以前、シオンに聞いてみたことがある。
「シオンは私の見た目だけじゃなくて中身も好きになってくれるの?」
そう言うとシオンは即答した。
「好きだよ。シアの全てが可愛いと思っている。そもそも好きになるのに理由は要らないだろう。理由が必要なのは嫌いになるときだけだ。」

”好きになるのに理由はいらない”
その言葉の意味を実感するまで随分と時間がかかった。シオンではない別の人を好きになったあの時まで。
いつだって完璧にかっこよくて、いつも私を優先してくれる王子様のことを彼が想ってくれるのと同じように愛せずに別の人に心を奪われてしまったことに私は罪悪感を抱えている。

”君と一緒にいるとただの23歳の男になれる。”
レオンハルト殿下に言われて痺れるほど嬉しかった言葉を思い出してしまった。見た目だけが好きなのではなくて私の価値を見出してくれたことが嬉しかった。
でも、私は心のままに自分の身を好きな人に差し出せるわけではない。
私達家族は背中に240万人の領民、15000人の従業員とその家族の生活を背負っているのだ。
私はシオンと結婚して、体だけではなくて心も彼に捧げようと決めた。
だからレオンハルト殿下に向けた気持ちを少しずつシオンへと塗り替えていくのだ。
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