36 / 72
共闘することにした1(1/3)
しおりを挟む
ワイマール邸での夕食後、皇城に連絡してから帰城した。私たちはそれぞれ、私たちが導き出したアマニールの陰謀に関する推理の答え合わせをすることにした。シオンはワイマール公爵に、私はまずレオンハルト殿下に。本当は先にお父様と話して情報の整合性を取りたかったのだけど、申請から帰宅まで警衛の調整が必要になるので、来週末にアマニール家に行くまでの時間を考えるとレオンハルト殿下に先に話を聞くことにしたのだ。
ということで、シオンは公爵が今夜泊まっている皇城カペラ宮に向かい、今夜は皇城に泊まることにしたらしい。
シオンがアークトゥルス宮まで送ってくれることになった。シオンとレオンハルト殿下は仲が悪いので鉢合わせしないことを願う。
もう遅い時間なので、さすがにレオンハルト殿下を訪ねるのは失礼になる。明日の夜、時間をとってもらえるように明日の朝食でお願いしてみよう。
「レオンハルト殿下?」
アークトゥルス宮のドアを開けるとエントランスロビーでレオンハルト殿下が本を読んでいた。
殿下はこちらに気付くとゆっくりとドアまで歩いてくる。
シオンは美麗なボウアンドスクレープの姿勢をとる。
「アルネの綺麗な夜だな、ワイマール公子。このような遅い時間に皇太子宮に何か用事か?」
「帝国の若き光にご挨拶します。本日はマクレガー令嬢を送りに参りました。」
丁寧に挨拶しているんだけど棘がある声だ。
「そうか。足労感謝する。」
朗らかな微笑みでレオンハルト殿下はシオンに声をかけた。
「おかえり、リリーシア。」
レオンハルト殿下は優しい声で私に言った。シオンから発する空気が重くなる。
「ただいま帰りました。遅くなってしまいご心配をおかけしました。シオン、今日はどうもありがとう。また来週ね。」
このままピリピリしていても良いことはないので2人を離すためにシオンに礼をいって帰ってもらうことにした。どのみち申請をしていない者はアークトゥルス宮には入れない。シオンは不服そうな顔をしたものの「ああ。」と言い私の手をとって体を引き寄せようとした。
(レオンハルト殿下の前で口づけするの?)
そう思った瞬間、後ろから引っ張られた。
「・・・・」
「・・・・」
シオンは小さくため息をついてから握った手の甲にキスをした。
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
「レオンハルト殿下、私はこれで失礼いたします。」
レオンハルト殿下は黙って頷いた。シオンを見送ってから意を決してレオンハルト殿下に声をかける。
「殿下、お話をしたいのですがお時間をいただけますか?」
「いいよ。今夜はアルネが満ちていて明るいし散歩しようか。」
作った微笑みのレオンハルト殿下は私に手を差し出した。護衛に断りを入れて私の手をとって歩き始めた。
この上なく気まずい。
繋いだ手に意識が行き、シオンの告白を受けて気持ちを切り替え始められていたと思っていたのに昨日よりもレオンハルト殿下のことを愛しく想っていることを自覚して自分にがっかりする。
そして、激しい罪悪感に見舞われた。それがレオンハルト殿下のことが好きなのにシオンと結婚することに対する不誠実さなのか、シオンと結婚するのにレオンハルト殿下を諦められない不誠実さなのか・・・。
手を引かれてやってきたのは、先日来た温室だった。今夜は衛星アルネが満ちているので灯りがなくても良く見える。百合の花々は衛星アルネの明かりに照らされて薄っすらと光っているようにも見える。レオンハルト殿下がスイッチを入れると通路が足元の間接照明で明るくなった。
「きれい。」
思わず呟いてしまった。レオンハルト殿下は私の方を見て少し目を細めて微笑む。
「百合の花粉って服につくとどんなに洗っても取れないんだって」
「??」
何かを比喩しているのか視覚に入ったものから思いついた雑談なのか判断できない。私は曖昧に笑って繋がれていた手を離して話題を変える。
「レオンハルト殿下、私はどうしてパリシナ国行きを延長して皇城で保護してもらえるようになったのか疑問でした。私が考えた自分なりの見解を申し上げてもいいでしょうか。」
答え合わせね。以前殿下が言ったように私はこの答えを聞いたら真の意味で皇太子殿下の臣下になる。
今までレオンハルト殿下が何を意図して行動してきたのかわからなかったので完全に信用できないでいた。しかし、レオンハルト殿下もマクレガー家のことを完全に信用しているわけではないのかもしれない。シオンが言っていたように事態を動かすならこちらから腹を割って話したほうがいい。
レオンハルト殿下は私の言葉を聞いて、皇太子の面持ちに変わった。
私はアダルベルト様への疑念を起点として、調べたことと自分が知っている事実、そしてシオンと推測した内容を話した。私たちの理解はほぼ正解だったそうだ。
リンド聖皇国が関わっているであろうこと、黎へ再度麻薬を蔓延させてから大麻を輸出しようとしていることまでは把握していないようだった。
「リンド聖皇国の使者がアマニール侯爵家に出入りしているとどうやって気付いたの?容姿がシノ大陸の中部の人だと目立つだろうし、もっと気づいている人がいそうだけど。」
アマニール家に他国の人が度々出入りしているのは把握していたが、リンド聖王国との繋がりは掴めていなかったそうだ。
私が見たリンド聖王国の使者は容姿が黒髪黒目で、我が国でも南東部地域には割と多い容姿だから見た目だけではリンドの人とは気付けない。
「最初に違和感を感じたのは食事の時の彼らのフォークとナイフの持ち方です。」
「ナイフの持ち方?」
「はい、私達は物心付いたときから手の一部のように操作しているからあまり意識しないと思うのですが、ナイフって右手で人差し指以外で上から握ってナイフの背に人差し指を乗せて切りますよね?私が見た人達は親指と中指でナイフの柄の部分を持って人差し指をナイフの背に添えていたんですよ。ペンを持つみたいに。」
「ああ、シノ大陸中央部は右手で直に食べるのだよな。カトラリーの使い方か・・・」
シノ大陸の国ではナイフはあまり使われない。アルーノの国に統治されていた国や深い交流を持っている国はフォークとスプーンを使う。でも、理由は不明だがナイフを食事のカトラリーとして使用する国は少ない。
「それにしてもそれだけで良く気付いたな。」
「いえいえ、カトラリーの使い方に違和感を覚えたので子供の時にマナーを教えていただいていた方にお会いした時に聞いたのです。最初はマナーの流派の違いなのかと思ったのですが・・・」
「それがリンドの人の特徴なの?」
「いえ、その時点ではまだわかりませんでした。一度違和感を持ってからは彼らのことに目が行くようになりました。リンドの人達だと確信したのは別のアマニールのパーティでリンド聖皇国の国紋がある指輪をして南東方向に頭を垂れて手を胸で組んでいたからです。その行動が気になって屋敷に帰ってから調べたらリディアム教のお祈りだったんです。」
「ああ、祈りの時間を守らないのはリディアムの教義に反するからね。」
レオンハルト殿下は納得できたようで頷いた。
敬虔なリディアム教信者が多いリンドではどんな状態であってもお祈りを最優先するそうだ。リディアム教を国教としている国は多いがそこまで信心深い国は片手で数えるほどだ。
その信心深い国々は他の宗教を認めていない。リディアム教の国家で国際問題が起きるときは、たいてい宗教の相違が絡んでくる。
ということで、シオンは公爵が今夜泊まっている皇城カペラ宮に向かい、今夜は皇城に泊まることにしたらしい。
シオンがアークトゥルス宮まで送ってくれることになった。シオンとレオンハルト殿下は仲が悪いので鉢合わせしないことを願う。
もう遅い時間なので、さすがにレオンハルト殿下を訪ねるのは失礼になる。明日の夜、時間をとってもらえるように明日の朝食でお願いしてみよう。
「レオンハルト殿下?」
アークトゥルス宮のドアを開けるとエントランスロビーでレオンハルト殿下が本を読んでいた。
殿下はこちらに気付くとゆっくりとドアまで歩いてくる。
シオンは美麗なボウアンドスクレープの姿勢をとる。
「アルネの綺麗な夜だな、ワイマール公子。このような遅い時間に皇太子宮に何か用事か?」
「帝国の若き光にご挨拶します。本日はマクレガー令嬢を送りに参りました。」
丁寧に挨拶しているんだけど棘がある声だ。
「そうか。足労感謝する。」
朗らかな微笑みでレオンハルト殿下はシオンに声をかけた。
「おかえり、リリーシア。」
レオンハルト殿下は優しい声で私に言った。シオンから発する空気が重くなる。
「ただいま帰りました。遅くなってしまいご心配をおかけしました。シオン、今日はどうもありがとう。また来週ね。」
このままピリピリしていても良いことはないので2人を離すためにシオンに礼をいって帰ってもらうことにした。どのみち申請をしていない者はアークトゥルス宮には入れない。シオンは不服そうな顔をしたものの「ああ。」と言い私の手をとって体を引き寄せようとした。
(レオンハルト殿下の前で口づけするの?)
そう思った瞬間、後ろから引っ張られた。
「・・・・」
「・・・・」
シオンは小さくため息をついてから握った手の甲にキスをした。
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
「レオンハルト殿下、私はこれで失礼いたします。」
レオンハルト殿下は黙って頷いた。シオンを見送ってから意を決してレオンハルト殿下に声をかける。
「殿下、お話をしたいのですがお時間をいただけますか?」
「いいよ。今夜はアルネが満ちていて明るいし散歩しようか。」
作った微笑みのレオンハルト殿下は私に手を差し出した。護衛に断りを入れて私の手をとって歩き始めた。
この上なく気まずい。
繋いだ手に意識が行き、シオンの告白を受けて気持ちを切り替え始められていたと思っていたのに昨日よりもレオンハルト殿下のことを愛しく想っていることを自覚して自分にがっかりする。
そして、激しい罪悪感に見舞われた。それがレオンハルト殿下のことが好きなのにシオンと結婚することに対する不誠実さなのか、シオンと結婚するのにレオンハルト殿下を諦められない不誠実さなのか・・・。
手を引かれてやってきたのは、先日来た温室だった。今夜は衛星アルネが満ちているので灯りがなくても良く見える。百合の花々は衛星アルネの明かりに照らされて薄っすらと光っているようにも見える。レオンハルト殿下がスイッチを入れると通路が足元の間接照明で明るくなった。
「きれい。」
思わず呟いてしまった。レオンハルト殿下は私の方を見て少し目を細めて微笑む。
「百合の花粉って服につくとどんなに洗っても取れないんだって」
「??」
何かを比喩しているのか視覚に入ったものから思いついた雑談なのか判断できない。私は曖昧に笑って繋がれていた手を離して話題を変える。
「レオンハルト殿下、私はどうしてパリシナ国行きを延長して皇城で保護してもらえるようになったのか疑問でした。私が考えた自分なりの見解を申し上げてもいいでしょうか。」
答え合わせね。以前殿下が言ったように私はこの答えを聞いたら真の意味で皇太子殿下の臣下になる。
今までレオンハルト殿下が何を意図して行動してきたのかわからなかったので完全に信用できないでいた。しかし、レオンハルト殿下もマクレガー家のことを完全に信用しているわけではないのかもしれない。シオンが言っていたように事態を動かすならこちらから腹を割って話したほうがいい。
レオンハルト殿下は私の言葉を聞いて、皇太子の面持ちに変わった。
私はアダルベルト様への疑念を起点として、調べたことと自分が知っている事実、そしてシオンと推測した内容を話した。私たちの理解はほぼ正解だったそうだ。
リンド聖皇国が関わっているであろうこと、黎へ再度麻薬を蔓延させてから大麻を輸出しようとしていることまでは把握していないようだった。
「リンド聖皇国の使者がアマニール侯爵家に出入りしているとどうやって気付いたの?容姿がシノ大陸の中部の人だと目立つだろうし、もっと気づいている人がいそうだけど。」
アマニール家に他国の人が度々出入りしているのは把握していたが、リンド聖王国との繋がりは掴めていなかったそうだ。
私が見たリンド聖王国の使者は容姿が黒髪黒目で、我が国でも南東部地域には割と多い容姿だから見た目だけではリンドの人とは気付けない。
「最初に違和感を感じたのは食事の時の彼らのフォークとナイフの持ち方です。」
「ナイフの持ち方?」
「はい、私達は物心付いたときから手の一部のように操作しているからあまり意識しないと思うのですが、ナイフって右手で人差し指以外で上から握ってナイフの背に人差し指を乗せて切りますよね?私が見た人達は親指と中指でナイフの柄の部分を持って人差し指をナイフの背に添えていたんですよ。ペンを持つみたいに。」
「ああ、シノ大陸中央部は右手で直に食べるのだよな。カトラリーの使い方か・・・」
シノ大陸の国ではナイフはあまり使われない。アルーノの国に統治されていた国や深い交流を持っている国はフォークとスプーンを使う。でも、理由は不明だがナイフを食事のカトラリーとして使用する国は少ない。
「それにしてもそれだけで良く気付いたな。」
「いえいえ、カトラリーの使い方に違和感を覚えたので子供の時にマナーを教えていただいていた方にお会いした時に聞いたのです。最初はマナーの流派の違いなのかと思ったのですが・・・」
「それがリンドの人の特徴なの?」
「いえ、その時点ではまだわかりませんでした。一度違和感を持ってからは彼らのことに目が行くようになりました。リンドの人達だと確信したのは別のアマニールのパーティでリンド聖皇国の国紋がある指輪をして南東方向に頭を垂れて手を胸で組んでいたからです。その行動が気になって屋敷に帰ってから調べたらリディアム教のお祈りだったんです。」
「ああ、祈りの時間を守らないのはリディアムの教義に反するからね。」
レオンハルト殿下は納得できたようで頷いた。
敬虔なリディアム教信者が多いリンドではどんな状態であってもお祈りを最優先するそうだ。リディアム教を国教としている国は多いがそこまで信心深い国は片手で数えるほどだ。
その信心深い国々は他の宗教を認めていない。リディアム教の国家で国際問題が起きるときは、たいてい宗教の相違が絡んでくる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる