アプロディーテの大殺界

佐藤ののり

文字の大きさ
47 / 72

アマニール侯爵邸への潜入(4/5)

しおりを挟む
Lilycia, McGregor/*
アダルベルト様達と別れた私とシオンは当主だけが入れる秘密の部屋へ向かう。秘密の部屋にもパスコードがあり、こちらは大文字小文字と数字で20文字のパスコードだ。
お父様から教えてもらったパスコードを入力して部屋へ入る。
心なしか空気が薄い気がする。
「他家の人間が入っちゃいけない場所だよな。」
シオンは苦笑いしてつぶやいた。この部屋の棚は引き出しになっていない。ここに保管されているものは一目瞭然になっている。
「アマニールの印章だわ・・・でもしばらく使った形跡がないわね。」
【蘭の間】と同様に埃をかぶっている。

お父様からアマニール家のパスワードを教えてもらってから違和感があった。
30年近くパスワードをアマニール侯爵が変えないのだろうか、と。
しかし、実際、監視システムのパスワードも部屋の鍵のパスコードも変わっていなかった。
潜入前にパスワードが変更されていないという確信を得たのは、監視システムのパスワード変更申請が出ていないことをWBMで確認したからだ。
WBMではパスワードは守秘義務で教えてくれないが、捜査令状を出したので変更申請の有無は回答してくれた。
アマニールの監視システムは導入した35年前から祖父が亡くなった20年前まで90日に一度、root(最上位の管理者)とSA(システム管理者)のパスワードを変更していた。それが、現侯爵になってから一度も変えていない。

アマニール侯爵はパスワードの変更をしたかったはずだ。でもできなかった。
rootのパスワードを知っていれば自分たちでパスワード変更ができるが、パスワードを紛失してWBMにパスワード変更申請をするには、契約時の印章と同じ印章を押した申請書が必要なのだ。
そして、【蘭の間】も隠し通路もこの秘密の部屋も人がしばらく入った形跡がない。

”「マクレガー子爵と妹のランチェット侯爵夫人は髪の色も瞳の色も顔だちも似ているけど、アマニール侯爵は全く似ていないよね。」”
先日の陛下の言葉を思い出す。陛下は私に心の準備をさせるためにあのように言ったのね。
そして父が私を捜査から遠ざけようと苦心していたであろうことも理解した。

シオンは置いてあった日記帳を手に持ち、開いてペラペラとページを捲った。
「あーーーもう!やっぱりか。」
「どうしたの?」
ため息をついたシオンが見つけたページを胸元で抑えて隠した。
「シア・・・一回深呼吸してから見たほうが良い。」
シオンの声で私は思考の渦から引っ張り上げられた。シオンは漆の箱に入った書類と日記を指さしている。
「私は大丈夫。騒いでも事態は変わらないし、想像していたことが現実だったとわかったわ。」
「そう、シアも予想していたんだね。」
私は努めて冷静に言った。逡巡してからシオンに伝える。
「これは・・・アマニール家の縁者として・・・持ち帰るわ。」
声が震えているのに気付いてシオンは一度私を抱きしめてくれた。
魂が外に抜けたみたいにボーっとしてしまいそうになるけれど、時間がないのだから気丈にしなくては。
私は持ってきたバッグから本を取り出し、ブックカバーを外して日記につけた。そしてスカートを捲る。
「え・・・ちょっと!何?」
シオンは戸惑っているけど私は余裕がないのでスルーした。太ももにしていたベルトから筒を外す。証明書を丸めて筒に入れスカートの下に戻す。ちなみに筒の中には注射型の麻酔を用意していた。
「戻りましょう。」
私は混乱しながら怒りと恐怖と不安で押しつぶされそうだった。
(レオンハルト殿下に・・・)
会いたい。私はレオンハルト殿下に会いたくなった。今、私は不安で仕方ない。いつもちょっとふざけていて、でもいつも私の欲しい言葉をくれるレオンハルト殿下に「大丈夫だ」と言ってほしいと思った。

******
待ち合わせ場所にはまだアダルベルト様とフィリーナ様は来ていなかった。どうせ【蘭の間】には誰も入ってこれないのだから書棚の入り口は開けておいても良いかもしれないけれど、アダルベルト様達が戻ってきて慌てるかもしれないので閉めた状態で待っていた。シオンは私の手を握っていてくれた。
5分ほど待っているとアダルベルト様とフィリーナ様が戻ってきた。
色々と話したいことがありそうだが、ここで話だすと緊張が解けた状態でお互いにハイになってしまいそうなのでアマニール侯爵邸を出るまで宝物庫の中でのことは聞かないことにする。
鍵をそっと開けてアダルベルト様が外を確認し、私たちは【蘭の間】を出た。
歩いて戻りながら私とフィリーナ様は指紋をつけないように嵌めていた手袋をとってバッグにしまった。
もう少しでパーティの控え室にたどり着くというところで後ろの方から話し声が聞こえた。
アマニール侯爵がレオンハルト殿下に屋敷の中を案内しているらしい。
隠れる場所といえば胸像の後ろくらいしかない。4人で隠れるのは無理だ。
アダルベルト様とフィリーナ様を胸像の後ろに隠した。
「抱き合って2人を隠すわ。」
恋人同士が廊下で抱き合っていれば、大概は遠慮して場を離れてくれるはずだ。
私たちは抱き合った、と思ったらシオンは私にキスをしてきた。
*/
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...