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アマニール侯爵邸への潜入(4/5)
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Lilycia, McGregor/*
アダルベルト様達と別れた私とシオンは当主だけが入れる秘密の部屋へ向かう。秘密の部屋にもパスコードがあり、こちらは大文字小文字と数字で20文字のパスコードだ。
お父様から教えてもらったパスコードを入力して部屋へ入る。
心なしか空気が薄い気がする。
「他家の人間が入っちゃいけない場所だよな。」
シオンは苦笑いしてつぶやいた。この部屋の棚は引き出しになっていない。ここに保管されているものは一目瞭然になっている。
「アマニールの印章だわ・・・でもしばらく使った形跡がないわね。」
【蘭の間】と同様に埃をかぶっている。
お父様からアマニール家のパスワードを教えてもらってから違和感があった。
30年近くパスワードをアマニール侯爵が変えないのだろうか、と。
しかし、実際、監視システムのパスワードも部屋の鍵のパスコードも変わっていなかった。
潜入前にパスワードが変更されていないという確信を得たのは、監視システムのパスワード変更申請が出ていないことをWBMで確認したからだ。
WBMではパスワードは守秘義務で教えてくれないが、捜査令状を出したので変更申請の有無は回答してくれた。
アマニールの監視システムは導入した35年前から祖父が亡くなった20年前まで90日に一度、root(最上位の管理者)とSA(システム管理者)のパスワードを変更していた。それが、現侯爵になってから一度も変えていない。
アマニール侯爵はパスワードの変更をしたかったはずだ。でもできなかった。
rootのパスワードを知っていれば自分たちでパスワード変更ができるが、パスワードを紛失してWBMにパスワード変更申請をするには、契約時の印章と同じ印章を押した申請書が必要なのだ。
そして、【蘭の間】も隠し通路もこの秘密の部屋も人がしばらく入った形跡がない。
”「マクレガー子爵と妹のランチェット侯爵夫人は髪の色も瞳の色も顔だちも似ているけど、アマニール侯爵は全く似ていないよね。」”
先日の陛下の言葉を思い出す。陛下は私に心の準備をさせるためにあのように言ったのね。
そして父が私を捜査から遠ざけようと苦心していたであろうことも理解した。
シオンは置いてあった日記帳を手に持ち、開いてペラペラとページを捲った。
「あーーーもう!やっぱりか。」
「どうしたの?」
ため息をついたシオンが見つけたページを胸元で抑えて隠した。
「シア・・・一回深呼吸してから見たほうが良い。」
シオンの声で私は思考の渦から引っ張り上げられた。シオンは漆の箱に入った書類と日記を指さしている。
「私は大丈夫。騒いでも事態は変わらないし、想像していたことが現実だったとわかったわ。」
「そう、シアも予想していたんだね。」
私は努めて冷静に言った。逡巡してからシオンに伝える。
「これは・・・アマニール家の縁者として・・・持ち帰るわ。」
声が震えているのに気付いてシオンは一度私を抱きしめてくれた。
魂が外に抜けたみたいにボーっとしてしまいそうになるけれど、時間がないのだから気丈にしなくては。
私は持ってきたバッグから本を取り出し、ブックカバーを外して日記につけた。そしてスカートを捲る。
「え・・・ちょっと!何?」
シオンは戸惑っているけど私は余裕がないのでスルーした。太ももにしていたベルトから筒を外す。証明書を丸めて筒に入れスカートの下に戻す。ちなみに筒の中には注射型の麻酔を用意していた。
「戻りましょう。」
私は混乱しながら怒りと恐怖と不安で押しつぶされそうだった。
(レオンハルト殿下に・・・)
会いたい。私はレオンハルト殿下に会いたくなった。今、私は不安で仕方ない。いつもちょっとふざけていて、でもいつも私の欲しい言葉をくれるレオンハルト殿下に「大丈夫だ」と言ってほしいと思った。
******
待ち合わせ場所にはまだアダルベルト様とフィリーナ様は来ていなかった。どうせ【蘭の間】には誰も入ってこれないのだから書棚の入り口は開けておいても良いかもしれないけれど、アダルベルト様達が戻ってきて慌てるかもしれないので閉めた状態で待っていた。シオンは私の手を握っていてくれた。
5分ほど待っているとアダルベルト様とフィリーナ様が戻ってきた。
色々と話したいことがありそうだが、ここで話だすと緊張が解けた状態でお互いにハイになってしまいそうなのでアマニール侯爵邸を出るまで宝物庫の中でのことは聞かないことにする。
鍵をそっと開けてアダルベルト様が外を確認し、私たちは【蘭の間】を出た。
歩いて戻りながら私とフィリーナ様は指紋をつけないように嵌めていた手袋をとってバッグにしまった。
もう少しでパーティの控え室にたどり着くというところで後ろの方から話し声が聞こえた。
アマニール侯爵がレオンハルト殿下に屋敷の中を案内しているらしい。
隠れる場所といえば胸像の後ろくらいしかない。4人で隠れるのは無理だ。
アダルベルト様とフィリーナ様を胸像の後ろに隠した。
「抱き合って2人を隠すわ。」
恋人同士が廊下で抱き合っていれば、大概は遠慮して場を離れてくれるはずだ。
私たちは抱き合った、と思ったらシオンは私にキスをしてきた。
*/
アダルベルト様達と別れた私とシオンは当主だけが入れる秘密の部屋へ向かう。秘密の部屋にもパスコードがあり、こちらは大文字小文字と数字で20文字のパスコードだ。
お父様から教えてもらったパスコードを入力して部屋へ入る。
心なしか空気が薄い気がする。
「他家の人間が入っちゃいけない場所だよな。」
シオンは苦笑いしてつぶやいた。この部屋の棚は引き出しになっていない。ここに保管されているものは一目瞭然になっている。
「アマニールの印章だわ・・・でもしばらく使った形跡がないわね。」
【蘭の間】と同様に埃をかぶっている。
お父様からアマニール家のパスワードを教えてもらってから違和感があった。
30年近くパスワードをアマニール侯爵が変えないのだろうか、と。
しかし、実際、監視システムのパスワードも部屋の鍵のパスコードも変わっていなかった。
潜入前にパスワードが変更されていないという確信を得たのは、監視システムのパスワード変更申請が出ていないことをWBMで確認したからだ。
WBMではパスワードは守秘義務で教えてくれないが、捜査令状を出したので変更申請の有無は回答してくれた。
アマニールの監視システムは導入した35年前から祖父が亡くなった20年前まで90日に一度、root(最上位の管理者)とSA(システム管理者)のパスワードを変更していた。それが、現侯爵になってから一度も変えていない。
アマニール侯爵はパスワードの変更をしたかったはずだ。でもできなかった。
rootのパスワードを知っていれば自分たちでパスワード変更ができるが、パスワードを紛失してWBMにパスワード変更申請をするには、契約時の印章と同じ印章を押した申請書が必要なのだ。
そして、【蘭の間】も隠し通路もこの秘密の部屋も人がしばらく入った形跡がない。
”「マクレガー子爵と妹のランチェット侯爵夫人は髪の色も瞳の色も顔だちも似ているけど、アマニール侯爵は全く似ていないよね。」”
先日の陛下の言葉を思い出す。陛下は私に心の準備をさせるためにあのように言ったのね。
そして父が私を捜査から遠ざけようと苦心していたであろうことも理解した。
シオンは置いてあった日記帳を手に持ち、開いてペラペラとページを捲った。
「あーーーもう!やっぱりか。」
「どうしたの?」
ため息をついたシオンが見つけたページを胸元で抑えて隠した。
「シア・・・一回深呼吸してから見たほうが良い。」
シオンの声で私は思考の渦から引っ張り上げられた。シオンは漆の箱に入った書類と日記を指さしている。
「私は大丈夫。騒いでも事態は変わらないし、想像していたことが現実だったとわかったわ。」
「そう、シアも予想していたんだね。」
私は努めて冷静に言った。逡巡してからシオンに伝える。
「これは・・・アマニール家の縁者として・・・持ち帰るわ。」
声が震えているのに気付いてシオンは一度私を抱きしめてくれた。
魂が外に抜けたみたいにボーっとしてしまいそうになるけれど、時間がないのだから気丈にしなくては。
私は持ってきたバッグから本を取り出し、ブックカバーを外して日記につけた。そしてスカートを捲る。
「え・・・ちょっと!何?」
シオンは戸惑っているけど私は余裕がないのでスルーした。太ももにしていたベルトから筒を外す。証明書を丸めて筒に入れスカートの下に戻す。ちなみに筒の中には注射型の麻酔を用意していた。
「戻りましょう。」
私は混乱しながら怒りと恐怖と不安で押しつぶされそうだった。
(レオンハルト殿下に・・・)
会いたい。私はレオンハルト殿下に会いたくなった。今、私は不安で仕方ない。いつもちょっとふざけていて、でもいつも私の欲しい言葉をくれるレオンハルト殿下に「大丈夫だ」と言ってほしいと思った。
******
待ち合わせ場所にはまだアダルベルト様とフィリーナ様は来ていなかった。どうせ【蘭の間】には誰も入ってこれないのだから書棚の入り口は開けておいても良いかもしれないけれど、アダルベルト様達が戻ってきて慌てるかもしれないので閉めた状態で待っていた。シオンは私の手を握っていてくれた。
5分ほど待っているとアダルベルト様とフィリーナ様が戻ってきた。
色々と話したいことがありそうだが、ここで話だすと緊張が解けた状態でお互いにハイになってしまいそうなのでアマニール侯爵邸を出るまで宝物庫の中でのことは聞かないことにする。
鍵をそっと開けてアダルベルト様が外を確認し、私たちは【蘭の間】を出た。
歩いて戻りながら私とフィリーナ様は指紋をつけないように嵌めていた手袋をとってバッグにしまった。
もう少しでパーティの控え室にたどり着くというところで後ろの方から話し声が聞こえた。
アマニール侯爵がレオンハルト殿下に屋敷の中を案内しているらしい。
隠れる場所といえば胸像の後ろくらいしかない。4人で隠れるのは無理だ。
アダルベルト様とフィリーナ様を胸像の後ろに隠した。
「抱き合って2人を隠すわ。」
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