50 / 72
アマニール侯爵の罪(2/3)
しおりを挟む
アマニール邸から帰城し、関係者が集まったのは夜の9時過ぎだった。私は図書館から持ってきた医薬大全を手に皇帝の居住するシリウス宮の会議室に行った。今日、アマニールに行った5人だけではなくて、両陛下、宰相、主要な7人の大臣達、警察庁長官、宮内庁長官、ウィローブロッグ公爵、マーキュリー侯爵そしてワイマール公爵がいた。
新聞でしか見たことない人たちばかりで、緊張で吐きそうだ。一介の子爵令嬢兼新人官僚の私がここにいるのは場違いだ。
証拠品の持ち帰りは正しい選択だとあの時は疑わなかったが、今はその選択の正否に自信がなくなってきている。
「基本的には俺がしゃべるから大丈夫だよ。」
心臓が縮みそうな思いでいるとレオンハルト殿下が私の背中をなでながら優しい声で言った。
「本日、アマニール侯爵邸に非公式で潜入を行いました。侯爵邸にはアマニール当主のみが入り方を知っている部屋があり、先代侯爵から入室方法とパスワードを教わっていたマクレガー子爵から嫡出子であるリリーシアが入室方法を引き継ぎました。潜入した者たちは現アマニール侯爵の罪の証拠を掴んできました。また、現アマニール当主のジャスティンは正当に爵位継承をされなかったと推定されます。」
「先代の日記と爵位譲位証書ですね。現アマニール当主が正当に爵位継承されなかったと推定した根拠は何でしょうか。」
宰相の質問にレオンハルト殿下が答えようとしていたが、ここは私が話したほうが良いと思ったので制止する。
「ここは私がお話します。」
「いや、しかし・・・」
彼は今回の件の総責任者だ。全責任は自分にあるがゆえ、発言も自らが全て行おうとしている。その姿勢は正しいのだが実際に現場に行った者が受け答えしたほうが良い。
「全責任がレオンハルトにあるのは分かっている。ただ、正確に話を進めたいので発言者は適宜変えてほしい。」
皇帝陛下の言葉を受けて、レオンハルト殿下は「はい」と答えて私に発言を促した。
「リリーシア・マクレガーが答えさせていただきます。現アマニール当主が当該の部屋に入ることができないと推定した理由は、まず、当主と後継者のみが入室方法を知る部屋と部屋までの隠し通路への入り口の存在を知らなかった、もしくは知っていてもパスワードが分からずに入れなかった様子だったからです。」
「その入り口がある部屋を長い期間使用した形跡がなかったということですか?」
「そうです。そして、当該の部屋にはアマニール侯爵が保管していてデメリットになるものが破棄されずに保管されていました。また、長いこと使用された形跡がない象牙製の印章が一切の破損もなく保管されていました。以上の点から現アマニール侯爵はアマニール家の当主として必要な情報を引き継がれていないのではないかと考えました。」
象牙は50年ほど前から国際条約で殺生目的での生きた象の捕獲は禁じられており、サルニア帝国では例え死んだ象の象牙であっても新規の購入が禁止されている。象牙の印章を使っているということは50年以上前に作られたものということになる。
「つまり、正当な当主になるはずだったテオドール・マクレガー”だけ”が入室方法を知っていたということですね。」
「その通りです。」
「パスワードの件を補足すると、アマニール家は警備システムのシステム管理者パスワードを20年以上変更していない。担当者の話ではWBMではパスワード変更を90日ごとに変更することを勧めているのだが、あんなに長く変更しない顧客は他にいないそうだ。」
シオンの父であるワイマール公爵が補足する。
「システム管理者パスワードも知らないということですか?」
「いや、システム管理者パスワードはメンテナンスやシステム更新時に必要だからアマニール家の警備部が知っている。パスワード変更するには、最上位のアカウントであるrootアカウントでログインしてパスワードを変更するか、変更届をWBMに出して変更してもらうかのどちらかだ。rootのパスワードはごく一部しか知らないというのは企業でも貴族家門でも定石だから先代から現当主に引き継がれていない可能性はある。」
「印章を押した変更届も出せなかったということか。」
「WBMでは電子化を進めていて紙の契約書もスキャンして保管している。監査対応で印章の偽造チェックもしているから契約時の印章と違うものを使っていればすぐに分かるようになっている。印章の紛失届を出していたとしてもrootパスワードが分からず、印章も変わったと言われれば不審に思われて調査が入ることは想像に難くない。だからシステム管理者パスワードが変更できなかったのだろう。」
「担当者を買収しようとした形跡がないか調べられるか?」
「はい。しかし見つけられる可能性は低いです。IT化された分野はログという改ざんが難しく、迅速に容易く見つかる記録が残るのでリスクを犯して犯罪に協力する者はよほどの馬鹿でない限りいないでしょう。アマニールの策士もわかっていると思います。」
シオンの父の説明でワイマールがこの国で得られる情報が多いことを改めて実感した。サルニア帝国内の情報という無形資産を彼らは掌握しているわけだ。
「リッカード、法務省が管理している印章登録はどのようになっているか調べてくれ。あと、50年ほど前から今現在までの印章を押したアマニール家の書類を鑑定士に見せて印章が変わったタイミングを調べさせてほしい。」
「承知しました。印章が変わったタイミングで担当していた職員も洗い出します。」
法務大臣のリッカード・マキシム伯爵はメモをして答えた。
「レオンハルト、日記から分かったことを説明してくれ。」
レオンハルト殿下はお祖父様の日記に記載されていたことを説明する。
<叔父に関して>
・現アマニール侯爵であるジャスティンはお祖父様の姉セシリアの私生児である
・ジャスティンの父は妻子ある音楽家でセシリアは出産後に自死した
・ジャスティンの戸籍上の実父は先々代ピロットノブ男爵の三男である
・ジャスティンが生まれたとき先代アマニール侯爵夫妻は婚姻して半年が経っており、ジャスティンを2人の養子として迎えて戸籍上は祖父母の子と登記されている
<爵位に関して>
・先代アマニール侯爵夫妻は血筋と才覚の両面から次期侯爵をテオナードに継承者に選んだ
・テオナードは13歳の時に製薬会社立ち上げのビジネスプランを立て、サルニア帝国大学経営学部への入学を条件に先代アマニール侯爵は4つある爵位のうちマクレガー子爵位と領地を与えた
・アスラーダは60歳までに隠居してアマニール侯爵位をテオナードに継承する予定だった
<前侯爵夫人アナスタシアの死亡に関して>
・死亡する半年ほど前から肩こりと腰痛で筋弛緩剤を処方されていた
・死亡の診断で原因は心筋梗塞だった
・死亡後に当日打ったと思われる注射の跡を見つけた
・注射跡について質問すると担当医師は死亡当日にんにく注射を打ったと回答した
・担当医師はジャスティンが採用したアマニール公爵家専属医師だった
以上の点よりジャスティンが前侯爵夫人の死に関与しているのではないかと前侯爵は疑っていた。
レオンハルト殿下の報告を聞き、皆沈黙して考え込む。静寂を破ったのは皇帝陛下だった。
「罪という切り口で見た場合、前当主の決定をもみ消して爵位を奪取したことと前当主夫妻の殺害容疑は別で考えるべきだ。今の証拠でアマニール侯爵位の奪取については立件できる。前当主の死因については余罪の捜査として別の捜査班を立てるべきだと考える。」
「マーキュリー侯爵夫人殺害事件とウィローブロッグ公爵夫人殺害未遂事件と同時に立件するということで良いでしょうか。今回の証拠は確実なものですが入手方法が違法となりますがどうしましょうか。」
うっ・・・。泥棒したことをまた思い出す。
「バンク・オブ・ブルマンの貸金庫に入っていた。貸金庫の存在を忘れていたが荷物を整理していたら鍵が見つかった。・・・ということでどうかしら?12,3歳の頃にテオが前侯爵から貸金庫のカギをもらったって言ってたわ。」
だいぶグレーだけど皆、頷いて同意した。私は居た堪れない気持ちになってきた。こんな後処理を皆様にさせなくてはいけないとは。
「前侯爵夫人の死因は筋弛緩剤の投与によるものと前侯爵は疑っていたのだね?」
「数年前、パリシナ国の終末医療病棟で大量殺人に使われて話題になった方法だな。」
医薬大全は持ってきたがこれなら説明は不要なようだ。この後の捜査で本職の人が証明してくれるだろう。
新聞でしか見たことない人たちばかりで、緊張で吐きそうだ。一介の子爵令嬢兼新人官僚の私がここにいるのは場違いだ。
証拠品の持ち帰りは正しい選択だとあの時は疑わなかったが、今はその選択の正否に自信がなくなってきている。
「基本的には俺がしゃべるから大丈夫だよ。」
心臓が縮みそうな思いでいるとレオンハルト殿下が私の背中をなでながら優しい声で言った。
「本日、アマニール侯爵邸に非公式で潜入を行いました。侯爵邸にはアマニール当主のみが入り方を知っている部屋があり、先代侯爵から入室方法とパスワードを教わっていたマクレガー子爵から嫡出子であるリリーシアが入室方法を引き継ぎました。潜入した者たちは現アマニール侯爵の罪の証拠を掴んできました。また、現アマニール当主のジャスティンは正当に爵位継承をされなかったと推定されます。」
「先代の日記と爵位譲位証書ですね。現アマニール当主が正当に爵位継承されなかったと推定した根拠は何でしょうか。」
宰相の質問にレオンハルト殿下が答えようとしていたが、ここは私が話したほうが良いと思ったので制止する。
「ここは私がお話します。」
「いや、しかし・・・」
彼は今回の件の総責任者だ。全責任は自分にあるがゆえ、発言も自らが全て行おうとしている。その姿勢は正しいのだが実際に現場に行った者が受け答えしたほうが良い。
「全責任がレオンハルトにあるのは分かっている。ただ、正確に話を進めたいので発言者は適宜変えてほしい。」
皇帝陛下の言葉を受けて、レオンハルト殿下は「はい」と答えて私に発言を促した。
「リリーシア・マクレガーが答えさせていただきます。現アマニール当主が当該の部屋に入ることができないと推定した理由は、まず、当主と後継者のみが入室方法を知る部屋と部屋までの隠し通路への入り口の存在を知らなかった、もしくは知っていてもパスワードが分からずに入れなかった様子だったからです。」
「その入り口がある部屋を長い期間使用した形跡がなかったということですか?」
「そうです。そして、当該の部屋にはアマニール侯爵が保管していてデメリットになるものが破棄されずに保管されていました。また、長いこと使用された形跡がない象牙製の印章が一切の破損もなく保管されていました。以上の点から現アマニール侯爵はアマニール家の当主として必要な情報を引き継がれていないのではないかと考えました。」
象牙は50年ほど前から国際条約で殺生目的での生きた象の捕獲は禁じられており、サルニア帝国では例え死んだ象の象牙であっても新規の購入が禁止されている。象牙の印章を使っているということは50年以上前に作られたものということになる。
「つまり、正当な当主になるはずだったテオドール・マクレガー”だけ”が入室方法を知っていたということですね。」
「その通りです。」
「パスワードの件を補足すると、アマニール家は警備システムのシステム管理者パスワードを20年以上変更していない。担当者の話ではWBMではパスワード変更を90日ごとに変更することを勧めているのだが、あんなに長く変更しない顧客は他にいないそうだ。」
シオンの父であるワイマール公爵が補足する。
「システム管理者パスワードも知らないということですか?」
「いや、システム管理者パスワードはメンテナンスやシステム更新時に必要だからアマニール家の警備部が知っている。パスワード変更するには、最上位のアカウントであるrootアカウントでログインしてパスワードを変更するか、変更届をWBMに出して変更してもらうかのどちらかだ。rootのパスワードはごく一部しか知らないというのは企業でも貴族家門でも定石だから先代から現当主に引き継がれていない可能性はある。」
「印章を押した変更届も出せなかったということか。」
「WBMでは電子化を進めていて紙の契約書もスキャンして保管している。監査対応で印章の偽造チェックもしているから契約時の印章と違うものを使っていればすぐに分かるようになっている。印章の紛失届を出していたとしてもrootパスワードが分からず、印章も変わったと言われれば不審に思われて調査が入ることは想像に難くない。だからシステム管理者パスワードが変更できなかったのだろう。」
「担当者を買収しようとした形跡がないか調べられるか?」
「はい。しかし見つけられる可能性は低いです。IT化された分野はログという改ざんが難しく、迅速に容易く見つかる記録が残るのでリスクを犯して犯罪に協力する者はよほどの馬鹿でない限りいないでしょう。アマニールの策士もわかっていると思います。」
シオンの父の説明でワイマールがこの国で得られる情報が多いことを改めて実感した。サルニア帝国内の情報という無形資産を彼らは掌握しているわけだ。
「リッカード、法務省が管理している印章登録はどのようになっているか調べてくれ。あと、50年ほど前から今現在までの印章を押したアマニール家の書類を鑑定士に見せて印章が変わったタイミングを調べさせてほしい。」
「承知しました。印章が変わったタイミングで担当していた職員も洗い出します。」
法務大臣のリッカード・マキシム伯爵はメモをして答えた。
「レオンハルト、日記から分かったことを説明してくれ。」
レオンハルト殿下はお祖父様の日記に記載されていたことを説明する。
<叔父に関して>
・現アマニール侯爵であるジャスティンはお祖父様の姉セシリアの私生児である
・ジャスティンの父は妻子ある音楽家でセシリアは出産後に自死した
・ジャスティンの戸籍上の実父は先々代ピロットノブ男爵の三男である
・ジャスティンが生まれたとき先代アマニール侯爵夫妻は婚姻して半年が経っており、ジャスティンを2人の養子として迎えて戸籍上は祖父母の子と登記されている
<爵位に関して>
・先代アマニール侯爵夫妻は血筋と才覚の両面から次期侯爵をテオナードに継承者に選んだ
・テオナードは13歳の時に製薬会社立ち上げのビジネスプランを立て、サルニア帝国大学経営学部への入学を条件に先代アマニール侯爵は4つある爵位のうちマクレガー子爵位と領地を与えた
・アスラーダは60歳までに隠居してアマニール侯爵位をテオナードに継承する予定だった
<前侯爵夫人アナスタシアの死亡に関して>
・死亡する半年ほど前から肩こりと腰痛で筋弛緩剤を処方されていた
・死亡の診断で原因は心筋梗塞だった
・死亡後に当日打ったと思われる注射の跡を見つけた
・注射跡について質問すると担当医師は死亡当日にんにく注射を打ったと回答した
・担当医師はジャスティンが採用したアマニール公爵家専属医師だった
以上の点よりジャスティンが前侯爵夫人の死に関与しているのではないかと前侯爵は疑っていた。
レオンハルト殿下の報告を聞き、皆沈黙して考え込む。静寂を破ったのは皇帝陛下だった。
「罪という切り口で見た場合、前当主の決定をもみ消して爵位を奪取したことと前当主夫妻の殺害容疑は別で考えるべきだ。今の証拠でアマニール侯爵位の奪取については立件できる。前当主の死因については余罪の捜査として別の捜査班を立てるべきだと考える。」
「マーキュリー侯爵夫人殺害事件とウィローブロッグ公爵夫人殺害未遂事件と同時に立件するということで良いでしょうか。今回の証拠は確実なものですが入手方法が違法となりますがどうしましょうか。」
うっ・・・。泥棒したことをまた思い出す。
「バンク・オブ・ブルマンの貸金庫に入っていた。貸金庫の存在を忘れていたが荷物を整理していたら鍵が見つかった。・・・ということでどうかしら?12,3歳の頃にテオが前侯爵から貸金庫のカギをもらったって言ってたわ。」
だいぶグレーだけど皆、頷いて同意した。私は居た堪れない気持ちになってきた。こんな後処理を皆様にさせなくてはいけないとは。
「前侯爵夫人の死因は筋弛緩剤の投与によるものと前侯爵は疑っていたのだね?」
「数年前、パリシナ国の終末医療病棟で大量殺人に使われて話題になった方法だな。」
医薬大全は持ってきたがこれなら説明は不要なようだ。この後の捜査で本職の人が証明してくれるだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる