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アマニール侯爵の罪(1/3)
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アマニール侯爵がすぐに去っていったので事なきを得た私たち4人は、足早にパーティで用意されている休憩室に戻る。幸い休憩室には私たち以外、誰もいなかった。
「予定外に持ち帰るべきものができてしまったので私は早く皇城に戻りたいです。」
「私もなるべく早く帰城して写真を確認したいと思います。レオもあらかたの挨拶もできたと思うのでもう退出可能でしょう。今日はスイフィル局長が出張から戻られるのでその報告を受けるということにしましょう。パーティはこれから盛り上がっていく時間ですが、局長との打ち合わせを理由にすれば秘書であるリリーシア嬢も護衛の私も自然に帰城できます。」
アダルベルト様の提案に私は頷いた。
「わたくしは少しパーティーの様子を確認してから戻るわ。シオン様はどうされますか?」
シオンはフィリーナ様が残るといったのが意外だったようで少し驚いていた。
「そうですね、パートナーが仕事で帰るので友人に挨拶をしてから帰宅することにしておきますか。今夜は私もカペラ宮に泊まって明日はそのまま大学院に行きます。」
私とシオンが先に休憩室を出て、アダルベルト様とフィリーナ様はタイミングをずらして退出した。
会場の中でアダルベルト様と私は落ち合ったふりをして、レオンハルト殿下の元へ向かった。
途中、給仕からシャンパンをもらってゴクリと飲んだ。
「ふぅ。私、顔が強張ってますか?」
途中でアダルベルト様に聞いてみる。
「いいえ、立派な笑顔の仮面を被れています。」
アダルベルト様は微笑んで答えてくれた。
立派か・・・良かった。動揺も気落ちしているのも隠せているみたいだ。
レオンハルト殿下は若い貴族たちに囲まれて楽しそうに歓談していた。私とアダルベルト様は話の区切りがつくまで待機する。
「ご歓談中失礼します。レオンハルト殿下、次の予定がございますので名残惜しいとは存じますが帰城いただけると幸いでございます。」
私は恭しく進言した。
「今日は公務が無いと伺ったのですが?」
リーズ男爵が口を挟む。なかなか鋭い。
「スイフィル局長が予定を前倒しして、出張から戻られるのです。明日から代休を取得されますので報告を聞く予定です。」
私は不快感を抑え込んで淡々とリーズ男爵に返答した。これ以上は何も言ってこないだろう。
「分かった。それでは侯爵夫妻と小侯爵に挨拶して帰ろう。」
******
「あーーーもう、捜査って大変すぎ!もう二度とやりたくないぜ。」
3人で車に乗り込むとアダルベルト様は一気に力が抜けたようで軽口を叩く。
「「・・・」」
「無視しないで突っ込んでよ。お前、警察庁の官僚だろって」
アダルベルト様は私とレオンハルト殿下の重い雰囲気を察してそこから何も言わなくなった。
「リリーシア?」
レオンハルト殿下に顔を覗き込まれて、私はビクッとする。彼の心配そうな眼差しを受けると思わず目に涙が浮かんできた。
泣いてはダメだと思って涙が溢れてこないように軽く唇を噛んだ。
「皇・・・帝・・陛下と父に・・・報告を・・・」
「リリーシア、大丈夫か?」
「・・・すみません。整理して順に話さないと・・・いけませんね。」
レオンハルト殿下は私の両頬に手を当てて彼の目を見るように顔を上に向ける。
「ちがう。そうじゃなくて、リリーシアの心は大丈夫なのかってこと。って、大丈夫じゃ・・・ないよな。」
そう言うと私の頬を触っていた手は私の頭と背中にまわし、優しく抱きしめてくれた。子供のころ母に抱きしめてもらったような慈愛の抱擁に私は我慢していた涙が溢れてきた。私は彼の背中に手を回して声を殺して泣いた。
車の中はしばらく静寂が流れる。
規則正しく脈打つ心臓の音が心地よくて私は少しずつ落ち着いていった。
「実は朝からとても不安で怖くて。でも迷惑にならないようにって気を張っていたのですが・・・。今日知った事実に直面して恐怖と怒りで耐えられなくて。」
私が言葉を止めると車の走行音だけが聞こえる。
「先ほどは申し訳ありませんでした。殿下の顔を見たら気持ちが抑えられなくて・・・」
レオンハルト殿下は今度はギュッと抱きしめて「うん」と言い、指で私の涙を拭う。
「お取り込み中申し訳ありませんが、私がいることを忘れていませんかね?」
はっとしてお互い抱きしめている手を離し、アダルベルト様と向き合った。
(そうだ、早くあれを見せないと。)
「私の判断で泥棒をしてしまったのですが・・・。」
二人とも解せない顔をしていたけど私は持ち帰ってきた証書を見せた。
「アマニール侯爵譲位証書です。」
「”第47代アマニール侯爵位を第46代当主アスラーダ・アマニール嫡子 テオナードに指名する”と明記されているな。」
私はアダルベルト様と席を代わり、証書と一緒に保管してあった日記を渡した。
「お祖父様・・・先代アマニール侯爵夫妻はアマニール侯爵に殺された可能性があります。祖父は祖母の死に疑問を持って調べていたようです。」
彼らはさほど驚いていない。
(ああ、そうか。つまり・・・)
「お二人もほぼ確信していたんですね。」
「すまない・・・」
車内は再び静寂に包まれる。
「予定外に持ち帰るべきものができてしまったので私は早く皇城に戻りたいです。」
「私もなるべく早く帰城して写真を確認したいと思います。レオもあらかたの挨拶もできたと思うのでもう退出可能でしょう。今日はスイフィル局長が出張から戻られるのでその報告を受けるということにしましょう。パーティはこれから盛り上がっていく時間ですが、局長との打ち合わせを理由にすれば秘書であるリリーシア嬢も護衛の私も自然に帰城できます。」
アダルベルト様の提案に私は頷いた。
「わたくしは少しパーティーの様子を確認してから戻るわ。シオン様はどうされますか?」
シオンはフィリーナ様が残るといったのが意外だったようで少し驚いていた。
「そうですね、パートナーが仕事で帰るので友人に挨拶をしてから帰宅することにしておきますか。今夜は私もカペラ宮に泊まって明日はそのまま大学院に行きます。」
私とシオンが先に休憩室を出て、アダルベルト様とフィリーナ様はタイミングをずらして退出した。
会場の中でアダルベルト様と私は落ち合ったふりをして、レオンハルト殿下の元へ向かった。
途中、給仕からシャンパンをもらってゴクリと飲んだ。
「ふぅ。私、顔が強張ってますか?」
途中でアダルベルト様に聞いてみる。
「いいえ、立派な笑顔の仮面を被れています。」
アダルベルト様は微笑んで答えてくれた。
立派か・・・良かった。動揺も気落ちしているのも隠せているみたいだ。
レオンハルト殿下は若い貴族たちに囲まれて楽しそうに歓談していた。私とアダルベルト様は話の区切りがつくまで待機する。
「ご歓談中失礼します。レオンハルト殿下、次の予定がございますので名残惜しいとは存じますが帰城いただけると幸いでございます。」
私は恭しく進言した。
「今日は公務が無いと伺ったのですが?」
リーズ男爵が口を挟む。なかなか鋭い。
「スイフィル局長が予定を前倒しして、出張から戻られるのです。明日から代休を取得されますので報告を聞く予定です。」
私は不快感を抑え込んで淡々とリーズ男爵に返答した。これ以上は何も言ってこないだろう。
「分かった。それでは侯爵夫妻と小侯爵に挨拶して帰ろう。」
******
「あーーーもう、捜査って大変すぎ!もう二度とやりたくないぜ。」
3人で車に乗り込むとアダルベルト様は一気に力が抜けたようで軽口を叩く。
「「・・・」」
「無視しないで突っ込んでよ。お前、警察庁の官僚だろって」
アダルベルト様は私とレオンハルト殿下の重い雰囲気を察してそこから何も言わなくなった。
「リリーシア?」
レオンハルト殿下に顔を覗き込まれて、私はビクッとする。彼の心配そうな眼差しを受けると思わず目に涙が浮かんできた。
泣いてはダメだと思って涙が溢れてこないように軽く唇を噛んだ。
「皇・・・帝・・陛下と父に・・・報告を・・・」
「リリーシア、大丈夫か?」
「・・・すみません。整理して順に話さないと・・・いけませんね。」
レオンハルト殿下は私の両頬に手を当てて彼の目を見るように顔を上に向ける。
「ちがう。そうじゃなくて、リリーシアの心は大丈夫なのかってこと。って、大丈夫じゃ・・・ないよな。」
そう言うと私の頬を触っていた手は私の頭と背中にまわし、優しく抱きしめてくれた。子供のころ母に抱きしめてもらったような慈愛の抱擁に私は我慢していた涙が溢れてきた。私は彼の背中に手を回して声を殺して泣いた。
車の中はしばらく静寂が流れる。
規則正しく脈打つ心臓の音が心地よくて私は少しずつ落ち着いていった。
「実は朝からとても不安で怖くて。でも迷惑にならないようにって気を張っていたのですが・・・。今日知った事実に直面して恐怖と怒りで耐えられなくて。」
私が言葉を止めると車の走行音だけが聞こえる。
「先ほどは申し訳ありませんでした。殿下の顔を見たら気持ちが抑えられなくて・・・」
レオンハルト殿下は今度はギュッと抱きしめて「うん」と言い、指で私の涙を拭う。
「お取り込み中申し訳ありませんが、私がいることを忘れていませんかね?」
はっとしてお互い抱きしめている手を離し、アダルベルト様と向き合った。
(そうだ、早くあれを見せないと。)
「私の判断で泥棒をしてしまったのですが・・・。」
二人とも解せない顔をしていたけど私は持ち帰ってきた証書を見せた。
「アマニール侯爵譲位証書です。」
「”第47代アマニール侯爵位を第46代当主アスラーダ・アマニール嫡子 テオナードに指名する”と明記されているな。」
私はアダルベルト様と席を代わり、証書と一緒に保管してあった日記を渡した。
「お祖父様・・・先代アマニール侯爵夫妻はアマニール侯爵に殺された可能性があります。祖父は祖母の死に疑問を持って調べていたようです。」
彼らはさほど驚いていない。
(ああ、そうか。つまり・・・)
「お二人もほぼ確信していたんですね。」
「すまない・・・」
車内は再び静寂に包まれる。
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