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最終章
最終章-7 神の武器、国際会議
しおりを挟むサウセント王国の王城の一室にて、他国から来賓を招き会議が執り行われている。
とはいえ既に大詰めも大詰めだ。
滞りなく議題は取り纏められた。
「・・・以上をもちまして条案は締結とさせて頂きます・・・他にご提案、ご質問等は御座いますか?」
その声に手が上がる。
それを見て、さも気に食わんと言わんばかりに獣王が舌打ちをする。
「魔人国、ドゥエムル卿」
いつもなら食ってかかるところだが、今日はそんな事どうでも良い。
駄猫など気にもならない。
それ程に気分が良かったのだ。
「オリハ様から非営利財団設立の許可を頂きました・・・活動内容と致しましては、物品の販売を主として、その利益により基金の設立、運用目的は孤児院や学院の設立、奨学金制度などを予定しております」
その言葉にこの場にいる全員が何らかの反応を示す。
ただ反応の意味が異なるのは二人。
獣王レオンパルドとサウセント王国アルベルト子爵だ。
周りは今度は何を仕出かす気か、二人はまた抜け駆けか、である。
これは得意分野の差なのかも知れない。
オリハの元で、何かしらの商売の種を見つけるのはエインだ。
元々の才覚と嗅覚、その上で献身をモットーにしているのだから致し方ないと言える。
オリハへの貢献度をポイント化すればダントツで一位エイン、二位オーウェン、三位レオンパルドとなるだろう。
面白くないのは自国の長であるオリバー国王だが、何の為にサテライトの街に孤児院を作ったと・・・とはならない。
そこはエインがサウセント王国主導の元に切り替えたりなどの調整をしているからだ。
エインは自分が儲けたいからやったのではない。
あくまでオリハの懐を温めるのが目的でやった事なのだから。
とはいえオーウェンが大きく貢献した事もある。
この5年で遠慮をしないと決めたオリハが最もやらかしたのは新国家の設立だった。
原因は樹老院と呼ばれるエルフ族の旧族長集団の暴走。
それはオリハの運営する孤児院に、まだ乳飲み子であったユグルドを捨てた所から始まった。
エルフ族内では巨乳派、貧乳派の醜い争いは未だ収まる気配はない。
その中で巨乳派であった、とある族長とその息子が巨乳エルフ計画を実行したのだ。
まずヒト族の巨乳の娘を見つける。
巨乳のハーフエルフの娘を産ませる。
ハーフでもそこからエルフの血を濃くしていけば寿命も延びるんじゃね?
ハーフとかどうせ穢血だしそういう扱いで問題ないよね?
などのくだらない選民意識が過ちを引き起こしたのだ。
尚、この段階で天に座する美の柱と、悦楽と酒の柱は頭を抱えていた。
そして産まれたのが男のユグルドだった。
するとそこに不可思議な感情が発生した。
巨乳の血の濃いエルフを作る為には、穢血と蔑ずむユグルドに純血の巨乳エルフを充てがう必要がある。
希少な巨乳の血族を犠牲に?
何て勿体ない!それなら儂(俺)がry!となったのだ。
そうなると生じたのはユグルドの処遇だった。
何せハーフとはいえ族長一族の血を引いているのだ。
アキのように争いの元にすらなりうる存在だ。
そして相談を持ちかけられたのが樹老院である。
中には貧乳派もいる為、巨乳エルフ計画までは明らかにはしていない。
当然、亡き者として扱う案もあったが最終的に落ち着いたのが捨てるという行為だ。
では何処に?
世俗で名を挙げたエルフ族の女がいるらしい。
何でも他種族の子まで連れて聖母などと呼ばれているらしいぞ。
おお私も聞いた、何でも孤児院を開いているとか。
そしてユグルドはサテライトの孤児院に置き捨てられる事になった。
そこには一枚の手紙があった。
エルフ族長老会樹老院より、オリハなるエルフに命じる。
その一文から始まる。
腑が煮えくり返るような文章が続き、最後にはこれはエルフ族の総意である、と締め括られていた。
「ふ、ふふふ・・・エルフ・・・滅ぼすか・・・」
その発言から一週間後、乳飲み子を抱えたまま樹老院の存在を物理的に壊滅させ、オリハ独裁政権を樹立させた。
そして三ヶ月後には民主政権を誕生。
短い期間で終わらせたのは「子らの元に早く帰りたい」と呟くオリハが原因だ。
その時に公務放ったらかしで、参謀として参画したのがオーウェンである。
普段からしっかりと公務をこなし、尚且つ頼りになる家令がいたお陰でもある。
逆に普段から公務をサボりがちなレオンパルドでは、こうはいかなかっただろう。
だが民主政権として確立させ、国家として認めさせる為にレオンパルドに協力を依頼したのは言うまでもない。
一部の女性からの妬みや僻みに配慮し、何故か独裁政権に参画させられたシャルが一番可哀想だったとか。
尚、ユグルドの処遇に関して、樹老院に相談する、殺処分ではなく廃棄、になるようにそれとなく仕向けたのは、美と酒のニ柱による夢枕であった。
この件でオリハを明らかに利用した件に対しては、それはそれは深く反省をしていたとの事。
閑話休題
「・・・この度は何を販売されるのでしょうか?」
非営利団体と言った事と目的は理解した。
目的と各国の恩恵はリンクする。
この場にドゥエムル卿が態々持ち出したのだ。
各国に一枚噛ませるつもりなのも明らかである。
ならば問題は販売品だ。
それにより雇用は生まれるのか?
消費は?経済の活性化は?
その問いが大いにその一文に含まれる。
その意図を正しく理解するエインはこう答えるしかない。
「ご期待には添えそうにありません・・・販売品は絵本に御座います」
ニコニコとしながらそう答えた。
安堵と落胆の溜息が会議場に響く。
だがオリハもエインの事もスキルを通して理解しているオリバー国王は首を傾げる。
それだけな訳がない。
それだけでこの狸が、ここまで尻尾を隠さずに喜ぶ筈がない。
何より非営利とはいえ、オリハちゃんが財団を設立?そんな馬鹿な話はない。
アレが名誉を求めるか?
「あのオリハちゃんが絵本・・・ねぇ」
老齢の王は自室での癖なのか、椅子ごと回りながら考えを巡らせる。
ならばその目的は?
あの娘が我が子の為以外に動く訳がない。
なら絵本は・・・当然、我が子の為だ。
ならば財団は・・・無関係の筈だ。
「ねえドゥエムル卿、その絵本はどんなお話なの?」
ならば狸の皮を剥がせば良い。
「まだ未完成でしたが・・・私めが目を通したのはギルの槌が題話の童話に御座います」
・・・ありふれた童話だ。
「他はまだ描きかけに御座いましたが、バルドムクの爪やグニグの槍、なども御座いましたね」
「・・・武器のお話ばかりだねぇ?」
各国の首脳陣もそれに呑まれる。
ただの絵本ではないのか?と。
「他にも確かな共通項が御座いましたよ?・・・例え「いちいち回りくどいんだよ、テメエは」
発表会の演奏を邪魔された気分で御座います、全くこの駄猫は・・・
「財団の目的はハッキリしてんだ、大事なのは非営利財団?なら頓挫した場合の責任、それと物品の製造場所と販売経路だろうが」
・・・ただの駄猫でないだけ、本当にタチが悪う御座います。
「コホン・・・失礼致しました、買取は各種国家、製造も各地で行い、雇用も各地で行うつもりで御座います・・・それに扱うのは消耗品ですので複製品の「Copy」で問題はないかと、あくまで絵本で御座いますれば価格もそこまでの物ではありません」
・・・なら何の問題もねえ。
学園や孤児院に充てている予算の一部をそっちに回せば反対もねえだろ。
「当座の資金と頓挫の保証は、私めの個人資産で充当致します・・・数年あれば財団の予算に余裕が出来ます、そうなればオリハ様のご子様の誰かにでも引き継いで頂く所存で御座います」
「あん?責任者はオリハじゃねえのか?」
「・・・そういう事か、エインくんも人が悪いねぇ・・・」
蓋を開ければ・・・いつもの献身じゃないか。
本当に諦めの悪い男だよ。
「絵本の販売権利と発生した利益の用途、その為の財団設立、オリハ様が認めて下さったのはそこまでで御座います」
愛しい女の名を世界に轟かせる、ねぇ・・・報われるの?コレ。
「財団の名は聖母オリハ財団!基金は聖母オリハ基金と致します!」
ククク・・・ああ、オリハちゃんの嫌がる姿が目に浮かぶよ・・・
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