神の不祥事に巻き込まれた

お子様

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005 ウサギと会話

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この状態で5分。

さすがに俺でも気づいた。
この兎が神獣だろ。
まさか俺を小兎だと勘違いして保護してる、なんて事はありえないと思うし。

では神獣兎を意思疎通をしようと思う。
異世界なら念話とかありそうだけど、どうやって使うのか不明だし、そもそも俺は貰ってないんだよな。
さっき対峙した時に話しかけたけど、聞いてる感じは無かったのが不安要素だ。

「な、なぁ。お前って神獣なの?」

耳に向かって言ってみたが返事は無い。
耳は動いてるので聞こえてはいるようなんだけどなぁ。

「なぁ、返事してくれよ」

……返事が無い。
どうやら念話とかそういう魔法や超能力は無いようだ。

そうなると会話しか無いんだけど…………兎って発声器官あったっけ?
鳴いてるのを見た事無いなぁ。

犬ならまだ態度で分かる気がするけど、兎だもんな。
聞いてるけど聞こえてないフリをしてるような感じは、どっちかというと猫っぽいか?

俺の見える範囲では耳くらい。顔が見えないので表情も分からない。
手足は伸ばして投げ出しているような姿勢なんだけど、俺が動こうとするとギュっと腹に押し当てられる。

こうなったら駄目で元々!

「俺の言ってる事が理解出来るなら右耳だけ動かしてくれないか?!」

おおっ!! 片耳だけ動いた!!
……えっと、それは右耳だよね。ちょっと見づらいんだよな。

って、よく考えたら、動かしてくれたんだから、右左関係無く理解してるって事じゃないか!

「どうやら理解出来るみたいだな。じゃあこれからは、『はい』なら右耳を、『いいえ』なら左耳を動かしてくれるか?」

また右耳だけ動いた。理解してくれてる……よな? 右耳だけ痒くて動かしてるって事は無いよな?
左耳を動かしてもらって、確認しておいた方がよさそうだ。

「ここは地球か?」

左耳が動いた。うん、完全に意思疎通が出来ているね。




ここから俺と神獣兎との会話は1時間以上続いた。

お陰である程度の情報が集まった。

まずキャンプ道具だけど、神獣が預かってきたそうでチラッと出して見せてくれた。
見た感じ、押入れに入れておく収納カラーBOX。アレに全部入っているのか。
インベントリみたいな事になってるのかもね。だとしたら色々入れたいけど、神の口ぶりから多分キャンプ用具以外は入らないっぽい。
しかし、アレ、前足の付け根辺りから出てきたんだよ。あんな所にポケットあるのか。
ここでキャンプをする訳じゃないから出さないようだ。

次に助ける親子の事。
どうやらここから遠い所に居るらしい。
移動したのか?と質問したけど、どうやら俺が離れた場所に出ただけのようだ。
神獣は慌ててこっちに来たのだとか。これは神がやらかしたな。

最後に、生きるのに必要な金。
少しだけ期待したけど、神獣は金を持ってなかった。うん、そうだろうね。
どうすんだよと訪ねたら、神獣が獣を狩るから、それを売って金にすれば良いとの事。
俺には狩る能力なんか無いからね!

で、これからどうするかと聞いたら親子を迎えに行くとの事。
まぁそれが目的だからね。でも遠いって言ってたよね?
あぁ、自分に乗れば良いと。助かります。

「しかしずっと神獣とか兎と呼ぶのもアレだから、名前をつけても良いか?」

良いようだ。
まぁ、名前はある!と言われても知る方法が無いので困るんだけどさ。

「じゃあポチってのはどうだ?」

前足で横っ面を叩かれた。モフっとしてそれほど痛くは無かった。
くそっ、親にも叩かれた事は無いのに!

「じょ、冗談だよ。兎は英語でラビットだから、ラビってのは?」

首を横に振られた。前足まで動かして。まるで「ヤレヤレだぜ、こいつ」みたいな顔で。
ムカつく。ってか首動かせるなら耳じゃなくても良いじゃないか!

これから色々な名前を言ってみたが、どれもピンと来ないようでOKが出ない。
段々と疲れて来て、最後に適当に言った名前が「シロ」。
なのにこれが採用された。しかも喜んでる。納得いかん!

これからは神獣兎はシロとして俺に同行する事になった。

では出発しようか。
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