カードゲームを持たされて異世界に送られた

お子様

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074 サクスの怖さ

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拘束されてないのに逃げ出そうとしない。
震えるほど怖いなら逃げれば良いのに、何で逃げないんだろう。
その答えはすぐに判明した。

「触覚と味覚、どうすれば治るのか。そればかり考えていますね?
 簡単です。質問に答えれば良いのですよ。勿論真実を、ですがね」

そういう事か。
盗られた感覚を取り戻さないといけないから、逃げない。いや、逃げられないのか。

そういえば、どうやって連れてこられたかも判ってないみたいだったな。
って事は、逃げてもまた捕まると思ってるかも。

「先程のは、まぁ、無かった事にしてあげましょう。
 では、再度質問します。貴方は聖王国のスパイですね?」
「…………」
「嗅覚を頂きましょう」
「や、止めてくれ!! りょ、領主様!! 止めて下さい!!」
「…………せ、聖人様」

俺に言われても……。
確かに俺しか止められないと思うけど!
でもなぁ、俺に害を与えるとか言われているし。

それに、見た感じでは拷問になってないんだよね。一切傷つけてないし。
この考えが一番大きいんだよねぇ。
目の前で爪を剥ぐとか始まってたら速攻で止めたと思うけど、見た目では外傷が無いんだもん。

ついでに言えば、領主さんも迷っているように見える。
悪魔の言っている事は事実なのか?
本当に五感を奪っているのか? 幻覚では?
こんな事を考えているんじゃないかな?

俺が悩んでいる内にも、見えない拷問は続いていた。

「触覚・味覚・嗅覚が無くなりました。
 貴方が抵抗出来るのは後2問だけですね。視覚と聴覚の2つ。
 そうだ! 視覚は片目づつにしましょう。 そうすれば3回は抵抗出来ますよ」
「や、止めてくれ!! 判った!! 喋る!!」
「貴方は聖王国のスパイですね?」
「俺はスパイじゃない! 金を貰って、情報を流してただけだ!!」

それをスパイと言うのでは? 違うのかな? 内通者?

「ふむ。それは正しい答えですね。では嗅覚を返してあげましょう。
 次の質問です。
 あなたが首謀者で、隣の商人アッタクが繋ぎ役。商人の立場を利用して行き来していた。
 そちらの衛兵ガドーはアッタクから借金をしており、無しにする代わりに計画に参加している。
 計画は、主殿の能力を調べる事。そして本当に神に呼ばれた使徒ならば、聖王国に連れてくる事。
 もし違うなら、神を語る愚か者として殺す事。それは衛兵にやらせて自身は傍観し、後にアッタクが遺体を処分する予定だった。
 合っていますか?」
「……ど、どうして、それを」
「ふむ。まぁ肯定としてあげましょう。触覚を返してあげます。
 そこの領主。とりあえず家探しでもしてみたらどうです?」
「ああ……そ、そうだな。……そうしよう」

さすがに領主さんも疑い出したようだ。
衛兵に指示を出している。

「これらもそちらに引き渡しましょう」
「待ってくれ! 味覚! 味覚を返してくれ!!」
「何故です? こちらからの質問は以上ですよ?
 質問に答えたら返すと言ったでしょう?」
「そ、そんな……!」
「主殿に害をなそうとしたその罪、一生かけて償うが良い。
 ああ、心配するな。100年後には自動的に返却されますよ」

怖い! あの温厚っぽいアンドロマリウスが怖い!!
ちょっとサクス、こっち来て!
モフらせて!



家令と商人と内通してた衛兵は連れて行かれた。
ここに残っているのは俺達3人と、悪魔が3体、それに領主さんだけ。
護衛まで行かせて良いのかと思ったけど、「聖人様の近くが一番安全と判りました」と言われてしまった。

「そ、そう言えば、水利の話でしたね」
「は、はい……。穏便にお願いします」

思い出したので領主さんに言ったら、丁寧な言葉が返ってきた。
ヘイ、領主ビビってる! ご、ゴメン。和ませたかったんだ。

「とりあえずこのカードを登録して、悪魔本人に聞きたいと思うんですけど……どうでしょう?」
「聖人様の思うようにしてください」

丸投げされた。
反対されてたと思うんだが、もう良いんだろうか?
大丈夫ですよ。怖くないですよ。
ほらサクスなんて俺がずっとモフってるから、よだれ垂らして弛緩してますよ。
……鳩ってよだれ垂らすんだな。

カードを指輪に接触して登録する。
そしてそのまま呼び出す。この場に4体目だ。

次の瞬間! ペタっと地面にヒトデが落ちてきた。

「デカラビアでっす! ヨロシクです、マイマスター!」

サイズも色もヒトデだ。直径15cmくらい?
違うのは上部の中央に口があって、そこで喋るくらい。

「すみませんがマイマスター! 私、地上では動けないので運んでもらえますか!」
「あっ、うん」

悩んだけど、フォルネウスの上にペトッて貼っておいた。
海の中の方が良いかな~と思っただけで、フォルネウスへの嫌がらせじゃないからね?

「ちょっと、デカラビア! そこは噴気孔だから塞ぐな! ズレろって!」
「おおっと! これは失礼! では背びれの方に行かせて頂きます!」

水の中だと移動出来るようだ。
だけど、すごく遅い。カメの地上移動速度よりも格段に遅い。
その移動を見るだけで10分くらい経ってしまった。
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