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160 俺は違うよ!

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そんなに悪い人では無さそうだし、王様に紹介してもらう事にした。

謁見の間で待っていると、近衛騎士2人が誰かを連れてやってきた。
あの人が例の人かな?

「この者がアザミだ」

女性だったのかよ!
ずっと男性だと思ってたわ!

いやいや、待て待て。
これは朗報だ。
だって女性アイドルの中に放り込まれるんだ。
男性の場合、恋に落ちる可能性もある。
アイドルに手を出すのはご法度だけど、この世界ではまだそれは浸透していない考えだ。
そう考えると、女性なのはラッキーかも。

「アザミよ、そなたの処分が決まった」
「そうですか。陛下自ら光栄でございます」
「そこに居るのは聖人様だ。そなたも聞いた事があるだろう?」
「はい。存じております」
「そなたは聖人様の元で働いてもらう。強制労働の刑と処す。期間は5年だ」

強制労働って……。
ま、職業選択の自由が無いなら強制労働とも言えるかもしれないけど、外聞が悪いなぁ。

「判りました。それでどのような仕事でしょうか? 行脚される時の肉壁でしょうか?」

肉壁って!!
アレだろ、自らが盾となって、敵から守るヤツ。
そんな人は必要無いよ!
そんな危険な所に行かないし!
って言うか、そんな仕事があるのか?!

「そうではない。そなたの仕事は、聖人様より説明される。
 拒否権は無い。言われるままに全てを受け入れる事。良いな」
「はい。了承しました」
「うむ。では聖人様。お願いしますぞ」

はい、つまりは丸投げですね。
と言っても頼んだのは俺なので、しょうがない。

「えっと、もう連れて行っても?」
「構わんぞ」
「私をこのまま、ですか? 何か束縛する物を付けないのですか?」
「イヤですよ、束縛して連れて行くなんて。
 他人から見たら、ドSに見えるじゃないですか」

どんな変態プレイなんだよ。
そんな事したら、もうこの国に居られないわ。

「逃げるかもしれませんよ?」
「逃げるの?」
「……いえ、逃げませんけど」
「じゃあ、問題無いね」
「そういう事では無くてですね……」

逃げるような人なら自首して来ないでしょ。
それに、逃げられても許せるな~と思っているし。

「貴方に危害を与えるとは思わないのですか?」
「筋肉ムキムキの男性なら、それも考えますが。
 大丈夫じゃないんですか? 危害、加えます?」
「……いえ、しませんけど」
「じゃあ、問題無いね」
「だからそういう事では無くてですね……もう、良いです」

よく考えたら、筋肉ムキッムキの男性を束縛して連れて行く方が、変態度が高い気がする。
ド変態の、ドS野郎だ。
そうなったら、この国どころかこの世界から逃げなきゃいけなくなるな。


納得してもらえたので、付いてきてもらう。
勿論王太子・姫様・アイザックさんも一緒だ。
近衛騎士からは1人だけ付いてきた。他国に行った時の隊長さんだね。

「王太子様や姫様と一緒に歩いて移動ですか……。
 私を連れているのは問題があると思いますが」
「無い無い。それよりもこれからも会う事になるんだから、慣れておいてね」
「これからも?! ……なんか普通に罰を受けるよりも精神的に辛い気がしてきました…………」
「気の所為、気の所為。そう気の所為だよ」

大事な事なので三度言っておいた。

そんな話をしつつ移動し、俺達はまた劇場に戻ってきた。
あ~、勇者に丸投げしたい。
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