悪役令嬢の異世界終焉戦争~一人の少女が巻き起こす悲劇の物語~

偽りの箱

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学園編第一章 始まる世界の物語

新たな街、王都ペルメシア

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「リンメル、王都に着いたよー」

「ふぁー…何?もう着いたの?」

 メルの呼びかけによって目を覚ました私は、虚ろな脳を動かしながら、馬車から顔を覗かる。 

「ここが王都ペルメシア…すごい景色ね!」

 私の目の前に広がっていたのは、この世界で初めて見る大都市だった。都市の中心に行けば行くほど、建物が長く、そして大きくなっている。その中央に堂々と構えている建物は今の私達がいる場所からでも軽々と見えているくらいだ。

「私たちが住んでいたところとは大違いね……。私の家も爵位をもらってはいるけど、ほとんど田舎貴族みたいなものだし、こうやって大きい建物を眺める機会ってあんまりないから新鮮」


 年甲斐もなく騒ぐ私にメルが冷たい視線を浴びせてくる。
 その視線はジッとこちらを見つめたまま、微動だにしなかった。

「メル?なんで私がそんな視線を浴びせられているのか聞いてもいいかしら?」

 私の問いかけにメルは答えない。
 ただ冷たい視線をこちらに向けてくるだけで、反応を一切示さなかった。

「お~い、聞いてる?もしも~し?あれれ?これって、もしかしなくても寝てる?」

 このきれいな景色はこの瞬間しか見られないというのに残念なやつだ。

「あれ?じゃあ私は今誰に起こされたの?」

 当然の疑問が頭をよぎる。
 私は、メルの声が聞こえたから起きたのだ。
 ただ、当の本人は寝ているようだし、眠りを覚ます世界能力があるとも聞いていない。
 そもそもそんな世界能力があったところで、いつどこで使うのかが疑問だ。

「リンメルー。僕ならさっきから起きてるよー」

 色々な考えを巡らせている中、横から気の抜けた声が聞こえてくる。
 それは、紛れもなくメルの声だった。

「え…でもさっき私が声を掛けても返事しなかったし、寝てたんじゃないの?」

「違うよー。僕はずっと起きていたし、君の思っている通り冷たい視線で君を観ていたんだよー」

 それに対して反論を試みようとしたとき、御者を運転している老人から声を掛けられる。

「お嬢様、そろそろゲートに入る頃なんで防御陣プレシキルを展開しますよ」

「わかりました!」

 防御陣……指定された馬車に刻印されているゲート通過用の構築式であり、各主要都市のゲートを通る時に必ず通らなければならない門といったものだ。
 各ゲートには防御陣を付与していない馬車をはじき出す機能が備わっており、それぞれのゲートが一つの結界としての役割を有しているらしい。そして、防御陣を付与していない馬車がゲートを通ると亜空間に飛ばされるという伝説が残っている。

 王都ぺルメシアのゲートの場合は、亜空間に潜む守護獣という魔物に食べられるという伝承が残っているが、そもそも実際に守護獣という魔物が存在しているかどうかは誰にもわかっていない。
 伝承とはいえ、死ぬことがわかっていて付与せずに入る様なバカはいない。つまり、余程のことがない限り安全というのは確かだ。

「お嬢様そろそろゲートを抜けますよ」

 御者を運転している老人からその様に声を掛けてもらうと再度窓の外を覗き景色を眺める。

「ようやく着いた!これから始まるんだよね!第二の学園生活が!」

 第二の学園生活に胸を膨らます私に対して、メルは少し元気が無いように思える。

「メル…?大丈夫?どこかで休憩できる場所でも探そうか?」

「いや…大丈夫だよー。少し気分が良くないだけで、すぐに落ち着くと思うからー」

 ほんとに大丈夫だろうか?馬車酔い?もしくはゲート酔いだとしたら少し心配だ。できるだけ早めに終わらして、寮の手続きをした方がよさそうだ。

「そう?でも心配だから早く終わらしてくるね」

 そして今日やるべきことは、王都のスイーツ巡り!だよね~。

「違うでしょー。スイーツ巡りじゃないでしょー!」

「へっ!?」

 何でだろ……今、私の考えを読まれた?

「顔に書いてあるよー。王都のスイーツが食べたいってー」

「あぅ…わかったわよ。今日のスイーツはやめておくよ…」

 そう今回は、スイーツを食べに来たわけではない。
 学園の先生方にあいさつ回りと制服の受け取り、それと寮の申請をしに行かなければならない。

「んじゃあ~、先に先生方の挨拶周りに行きましょう!」

 学園は王都ペルメシアの中央都市コルレアという都市に建設されている。
 この王都は五つの巨大な都市で構成されており、今私達がいる中央都市コルレア。
 北都市メルビア。
 東都市ハイビア。
 南都市サベビア。
 西都市アメビアという風な括りになっている。
 各都市の名前は初代四大貴族の名前が使われているのだそうだ。

 そして――

「ここが、中央学園アルハルビス!外からみたときも思ったけどすごく大きいのねー」

 その建物はゲートを通る前にも見えていた巨大な建物。
 学園の建物は代々受け継がれてきた王城を再建築して使われているため、そこらの貴族たちの屋敷よりも大きく、先生方もそれに見合った人数が配備されている。

「先生方への挨拶…ここに通う人みんなやっているっていうのだから驚きよね。私も頑張らなくちゃ……」

 そこから、先生方の挨拶回りにはざっと三時間ぐらいのかかり、寮の入校手続きは夜になるのだった。

「やっと終わった……」

 先生方の挨拶を終わらせ、ようやく寮に帰ってきたときには、私の顔はげっそりとしたいた。

「先生の人数多すぎでしょ!なによ、二百人って!しかも話が長い人もいるし…三時間もかかちゃったじゃん!」

 挨拶回りに三時間もかかったのは先生方を探す時間が一番かかっているだろう。
 先生方の話を合計した時間は約三十分。
 それに対し、先生方を探し回った時間が二時間と三十分……。
 馬鹿じゃないのか?とも、思ったが、これでも早い方らしい。
 挨拶回りに五時間もかかった生徒がいると聞いたときは、流石に引いてしまった。

「 こうなるんだったら先に寮をとってメルを休ませてあげればよかったよー。ごめんねメル?」

「大丈夫だよ、誰も擬態した僕に気が付かなかったようだし。それに、僕も王都を見て回れたから色々と楽しかったよ」

 メルがそういう言うのなら、私はこれ以上何も言うことはない。
 それに、明日は入学式が控えている。雑談はこのくらいにしてそろそろ寝るとしよう。

「今日はありがとね、色々助かったよ」

「リンメルの助けになれたのならよかったよー。じゃあそろそろ寝よっかー」

「そうだね、お休み~」

「お休みー……」

 ん?
 また何か忘れているような気がするのだけど何だったかな?
 まぁ大丈夫か、明日の私がどうにかしてくれているだろう。

「お休み、メル……」

 そう言い残し、何を忘れたのか忘れたまま、明日の私に全責任を押し付け、深い眠りについたのだった。
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