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第三章
10話
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「ほらほら!カバン持って!行くよ~!」
そんなこと言いながら、機嫌良さげに肩を揺らして歩いていく玲央。俺は深く溜め息を吐いて、帰ってきてから置きっぱなしにしてたカバンを引っ掴んで玄関に向かう。
玄関先では、自分のカバンを背負って靴を履いた玲央が俺を待っていた。
「栞季くん、忘れ物ない?」
「多分、大丈夫なはず」
「じゃ!れっつご~」
軽快に玄関の扉を開けた玲央は、まるで散歩に出る子犬のような軽やかな足取りで、エントランスのほうへと歩き出していく。
俺は扉を閉めて鍵をかけ、玲央の背中を追って歩き出す。俺を待ってる彼は、エントランスの扉を開けて、早く早くと手招いている。
「そんなに急がなくてもいいだろ」
「やだ!栞季くんとの時間は一分一秒たりとも無駄にはできないからね!」
そんな台詞に、俺は苦笑しながらマンションを出た。
エントランスを出ると、日差しが少し柔らかくなってて、昨日の雨の影響か風は少しひんやりしてる。
さっき選んだニットがちょうどいい。
「今日の栞季くんも可愛くてとてもいいですねぇ」
玲央が俺の顔を覗き込んで、にこにこしながら言う。
視線が袖口で半分暗い覆われた指先に止まってるのが分かって、俺は思わず袖を引っ張って手を隠した。
「なんだよ……」
「さっき言いそびれたけど、白のニットめっちゃ似合ってる……いつも暗い色だし、明るい色も似合うのが新しい発見すぎる」
玲央は、俺の服を上から下まで眺めて、満足げに頷く。
「うんうん、いい。めっちゃいい。今日の栞季くん、俺の好みにドンピシャだわ。今度一緒に服買いに行こうよ」
「いや、遠慮する……」
小さく呟くと、玲央は「えーっ!」って大げさに声を上げて、俺の腕を揺らす。
「なんで!絶対似合う服いっぱいあるって!俺が選ぶから、それ着てくれるだけでいいんだよ!?」
玲央はわざとらしく唇を尖らせて、俺の肩に頭を乗せてくる。
「おい、あんまり外でくっつくな」
「やだ!栞季くんが一緒に行ってもいいよって言うまでくっついてやる!」
駄々をこねる子供みたいに腕を引っ掴んでくる玲央に俺は思わず小さく笑った。
「まぁ、服買いに行くのは別にいいけど」
「ほんと!?」
割り込むように響いた声が、鼓膜をぶち破る勢いで俺の耳に刺さる。
「うわ、うるさ……」
思わず肩をすくめて、玲央の頭を軽く押しのける。
「耳元で叫ぶなよ、びっくりした」
「ごめん、ごめん……ていうか、ほんとに?ほんとにいいの!?」
キラッキラの目で見つめてくるのが腹立たしい。嬉しすぎて語尾の音程すら上がっていやがる。
「でも高いのは嫌だぞ?お前結構いいもんばっか着てるだろ」
「わーい!別になんでもいいよ~!栞季くんとおでかけの口実にしたかっただけだし!!最近、栞季くんガード緩くて嬉し~!」
玲央はそう言って、俺の腰に手を回してくる。
「お前、本人がいる前で言うか?それ……」
「だってそうじゃん!言ってるでしょ?栞季くんとご飯を食べることでさえ、こちとら苦労してたんだから!!こんな感じで引っ付くのも、前は『離れろ』って本気で振り払ってたのに、最近は許してくれるもんね~」
「もしかして好感度めっちゃ高くなってる?」と、ニヤニヤしながら、玲央は俺の頬を指でつついて笑ってくる。
「別に……許してるとかじゃなくて、振り払うのが面倒なだけだ」
「ふ~ん?じゃあそういうことにしといてあげる!」
玲央はそう言って、俺の頬をもう一度指でつついてくる。思わず顔をしかめると、彼はくくっと肩を揺らして笑っていた。
なんだろうな。振り払う気力が薄れてきてるのは事実だしなぁ。
けど、それを口に出すのはなんか負けた気がして、俺はそっぽを向いたまま無言を貫いた。
当の本人は得意げに笑ったまま、俺から離れようとしない。視線を感じてちらりと見れば、案の定、口角は上がりっぱなし。
「ねぇねぇ、今どんな気持ち~?ガードゆるゆるにされて、俺に懐かれて、骨抜きにされてる気分は~?」
こいつ、調子に乗りやがって
ふざけた調子の玲央の声を、俺は無視してくっついていた玲央を乱暴に引き剥がす。
わざとらしく舌打ちして前を向いた俺の背後で、玲央が「あ~~~!」と情けない声を上げたのが聞こえる。
「え~~~、今の無視!?」
文句たらたらのその声も聞こえてないふりをして、俺は無言で歩みを進めた。
ちょうどそのとき、視界に駅の入り口が見えてくる。足を止めて振り返ると、少しだけ不満そうに口を尖らせた玲央が、のんびり歩いてきていた。
「……それで?ここまで来たはいいが、電車乗るのか?」
俺の問いに、玲央はパッと顔を明るくして指をさす。
「です!!あっち方面の電車~」
「了解」
改札口を通り、言われた方面の発車案内を見てみると、もう少しで電車が到着するようだった。
「どこまで行くんだ?」
「ちょっと行ったところ!また降りる時言うね!」
「ん、わかった」
階段を登って、俺は押し寄せる電車の風を感じながら、ホームに入ってくる車体に目を向けた。
「じゃあ、あとは案内よろしくな」
「まっかせて!!」
そう言って玲央は満面の笑みを浮かべて胸を張った。
そんなこと言いながら、機嫌良さげに肩を揺らして歩いていく玲央。俺は深く溜め息を吐いて、帰ってきてから置きっぱなしにしてたカバンを引っ掴んで玄関に向かう。
玄関先では、自分のカバンを背負って靴を履いた玲央が俺を待っていた。
「栞季くん、忘れ物ない?」
「多分、大丈夫なはず」
「じゃ!れっつご~」
軽快に玄関の扉を開けた玲央は、まるで散歩に出る子犬のような軽やかな足取りで、エントランスのほうへと歩き出していく。
俺は扉を閉めて鍵をかけ、玲央の背中を追って歩き出す。俺を待ってる彼は、エントランスの扉を開けて、早く早くと手招いている。
「そんなに急がなくてもいいだろ」
「やだ!栞季くんとの時間は一分一秒たりとも無駄にはできないからね!」
そんな台詞に、俺は苦笑しながらマンションを出た。
エントランスを出ると、日差しが少し柔らかくなってて、昨日の雨の影響か風は少しひんやりしてる。
さっき選んだニットがちょうどいい。
「今日の栞季くんも可愛くてとてもいいですねぇ」
玲央が俺の顔を覗き込んで、にこにこしながら言う。
視線が袖口で半分暗い覆われた指先に止まってるのが分かって、俺は思わず袖を引っ張って手を隠した。
「なんだよ……」
「さっき言いそびれたけど、白のニットめっちゃ似合ってる……いつも暗い色だし、明るい色も似合うのが新しい発見すぎる」
玲央は、俺の服を上から下まで眺めて、満足げに頷く。
「うんうん、いい。めっちゃいい。今日の栞季くん、俺の好みにドンピシャだわ。今度一緒に服買いに行こうよ」
「いや、遠慮する……」
小さく呟くと、玲央は「えーっ!」って大げさに声を上げて、俺の腕を揺らす。
「なんで!絶対似合う服いっぱいあるって!俺が選ぶから、それ着てくれるだけでいいんだよ!?」
玲央はわざとらしく唇を尖らせて、俺の肩に頭を乗せてくる。
「おい、あんまり外でくっつくな」
「やだ!栞季くんが一緒に行ってもいいよって言うまでくっついてやる!」
駄々をこねる子供みたいに腕を引っ掴んでくる玲央に俺は思わず小さく笑った。
「まぁ、服買いに行くのは別にいいけど」
「ほんと!?」
割り込むように響いた声が、鼓膜をぶち破る勢いで俺の耳に刺さる。
「うわ、うるさ……」
思わず肩をすくめて、玲央の頭を軽く押しのける。
「耳元で叫ぶなよ、びっくりした」
「ごめん、ごめん……ていうか、ほんとに?ほんとにいいの!?」
キラッキラの目で見つめてくるのが腹立たしい。嬉しすぎて語尾の音程すら上がっていやがる。
「でも高いのは嫌だぞ?お前結構いいもんばっか着てるだろ」
「わーい!別になんでもいいよ~!栞季くんとおでかけの口実にしたかっただけだし!!最近、栞季くんガード緩くて嬉し~!」
玲央はそう言って、俺の腰に手を回してくる。
「お前、本人がいる前で言うか?それ……」
「だってそうじゃん!言ってるでしょ?栞季くんとご飯を食べることでさえ、こちとら苦労してたんだから!!こんな感じで引っ付くのも、前は『離れろ』って本気で振り払ってたのに、最近は許してくれるもんね~」
「もしかして好感度めっちゃ高くなってる?」と、ニヤニヤしながら、玲央は俺の頬を指でつついて笑ってくる。
「別に……許してるとかじゃなくて、振り払うのが面倒なだけだ」
「ふ~ん?じゃあそういうことにしといてあげる!」
玲央はそう言って、俺の頬をもう一度指でつついてくる。思わず顔をしかめると、彼はくくっと肩を揺らして笑っていた。
なんだろうな。振り払う気力が薄れてきてるのは事実だしなぁ。
けど、それを口に出すのはなんか負けた気がして、俺はそっぽを向いたまま無言を貫いた。
当の本人は得意げに笑ったまま、俺から離れようとしない。視線を感じてちらりと見れば、案の定、口角は上がりっぱなし。
「ねぇねぇ、今どんな気持ち~?ガードゆるゆるにされて、俺に懐かれて、骨抜きにされてる気分は~?」
こいつ、調子に乗りやがって
ふざけた調子の玲央の声を、俺は無視してくっついていた玲央を乱暴に引き剥がす。
わざとらしく舌打ちして前を向いた俺の背後で、玲央が「あ~~~!」と情けない声を上げたのが聞こえる。
「え~~~、今の無視!?」
文句たらたらのその声も聞こえてないふりをして、俺は無言で歩みを進めた。
ちょうどそのとき、視界に駅の入り口が見えてくる。足を止めて振り返ると、少しだけ不満そうに口を尖らせた玲央が、のんびり歩いてきていた。
「……それで?ここまで来たはいいが、電車乗るのか?」
俺の問いに、玲央はパッと顔を明るくして指をさす。
「です!!あっち方面の電車~」
「了解」
改札口を通り、言われた方面の発車案内を見てみると、もう少しで電車が到着するようだった。
「どこまで行くんだ?」
「ちょっと行ったところ!また降りる時言うね!」
「ん、わかった」
階段を登って、俺は押し寄せる電車の風を感じながら、ホームに入ってくる車体に目を向けた。
「じゃあ、あとは案内よろしくな」
「まっかせて!!」
そう言って玲央は満面の笑みを浮かべて胸を張った。
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