3 / 11
3
しおりを挟む
坂井修史と山崎桂は、小学校以来の幼なじみだった。たまたま住んでいた場所が近く、たまたま頭の出来も同じくらいだったから、たまたま中・高と同じ学校へ進んだ。
修史の記憶するかぎり、中学校時代の桂はいたってごく普通の少年だった。容貌が容貌だけに女子からはよくもてたし、つきあっていた彼女もいた。
それが何だって、男を相手にするようになったのか。確かに二人の通っているのは男子高だが、近隣の女子校との交流はあったし、事実桂も修史も休日によくでかけるガールフレンドは多い。
「なあ、今日おまえん家寄っていい? ウチ、親戚が来てんだよね」
「……相変わらずだな、おまえの親戚嫌い」
「……おまえん家が駄目なら、藤元先輩んとこ行くけど?」
「馬鹿。あいつの家には2度と行くな」
学ランを着込んだ細い体。すっきりと澄んだ瞳に、やわらかく弧を描く唇。
何か頼まれれば、いいよって言ってやりたくなる。素直に謝られれば、つい許してしまう。ずっと昔からそうだ。生意気で我が儘な桂に、修史はどうしても逆らえない。
「……いいよ、ウチで。その代わり、リーダーの訳写させろよ。おまえのクラス、進んでるだろ?」
「今日リーダーなかったからノート持ってないって。修史がうちに取りに行ってくれるなら、写してもいいよ」
「あのなー……」
「……夕飯おごるからさ」
誰もが桂に惹かれる訳は、わかる。わからないのは桂の心だ。
「デザートつきで」
にっこりと笑顔で付け加えられた一言に、修史はぎょっとする。
「……言っとくけど、オレをけしかけるなよ?」
「さあ。どうしよっか?」
艶やかに笑んで、修史の家の玄関へ先に駆け込んで行く。
桂と二人になるのが、本当は怖い。きっと、ほんのちょっとしたきっかけで理性なんて突き崩される。それがわかりきっていたから。
二階の修史の部屋へ先にたどり着いていた桂が、昨日買ったばかりの雑誌をめざとく見つけてパラパラめくっている。
「……頼むからそこに寝るな」
ベッドにうつ伏せてほお杖をついている桂を、修史は床へ引きずり下ろす。くすくす笑うところを見ると、どうもわざとやっているらしい。
「おまえ、誰ん家行ってもこうなわけ?」
「んんー? まあベッドかソファは占領するね」
「おまえさ。誘ってるって思われても仕方ねーよ、それ?」
「別に俺にそういうつもりはないんだけど、なんでか相手がその気になっちゃうんだよね」
「あのなー」
「密室に二人でいて俺に手ぇ出さないの、修史くらいだよ」
「はあー。……って、中山とか、小暮とかもかよ」
「最後までやってないけど」
「……う、そ。あいつらは普通に友達やってんのかと思ってた。信じらんねー」
「……あんまり追求するなって。大したことしてない」
「ホントいい加減にしろ、おまえ」
「怒るなよ。何でおまえが目くじら立てるんだ?」
楽しそうに聞かれて、逆に答えに詰まる。
「……おまえが、大事だから」
言ってしまってから、何だかすごく後悔した。それは、別に嘘ではなかったのだけれど。
「やっぱさあ。こんなこと……誰にでも体許して、何もかも許すの、おまえにとって良くねーよ。女みたいなリスクはないかもしれないけどさ。もっと大事にしろって、自分のこと」
「おまえが俺を抱かないのは、俺が大事だから?」
「……そうだよ。自分のことしか考えてなかったら、おまえなんかとっくの昔にどうにかしてる」
「してくれて、良かったのに」
「は?」
「なーんてね」
ウソ、と呟いて雑誌に目を戻す。何とかしてくれと、修史は天を仰いだ。
修史の記憶するかぎり、中学校時代の桂はいたってごく普通の少年だった。容貌が容貌だけに女子からはよくもてたし、つきあっていた彼女もいた。
それが何だって、男を相手にするようになったのか。確かに二人の通っているのは男子高だが、近隣の女子校との交流はあったし、事実桂も修史も休日によくでかけるガールフレンドは多い。
「なあ、今日おまえん家寄っていい? ウチ、親戚が来てんだよね」
「……相変わらずだな、おまえの親戚嫌い」
「……おまえん家が駄目なら、藤元先輩んとこ行くけど?」
「馬鹿。あいつの家には2度と行くな」
学ランを着込んだ細い体。すっきりと澄んだ瞳に、やわらかく弧を描く唇。
何か頼まれれば、いいよって言ってやりたくなる。素直に謝られれば、つい許してしまう。ずっと昔からそうだ。生意気で我が儘な桂に、修史はどうしても逆らえない。
「……いいよ、ウチで。その代わり、リーダーの訳写させろよ。おまえのクラス、進んでるだろ?」
「今日リーダーなかったからノート持ってないって。修史がうちに取りに行ってくれるなら、写してもいいよ」
「あのなー……」
「……夕飯おごるからさ」
誰もが桂に惹かれる訳は、わかる。わからないのは桂の心だ。
「デザートつきで」
にっこりと笑顔で付け加えられた一言に、修史はぎょっとする。
「……言っとくけど、オレをけしかけるなよ?」
「さあ。どうしよっか?」
艶やかに笑んで、修史の家の玄関へ先に駆け込んで行く。
桂と二人になるのが、本当は怖い。きっと、ほんのちょっとしたきっかけで理性なんて突き崩される。それがわかりきっていたから。
二階の修史の部屋へ先にたどり着いていた桂が、昨日買ったばかりの雑誌をめざとく見つけてパラパラめくっている。
「……頼むからそこに寝るな」
ベッドにうつ伏せてほお杖をついている桂を、修史は床へ引きずり下ろす。くすくす笑うところを見ると、どうもわざとやっているらしい。
「おまえ、誰ん家行ってもこうなわけ?」
「んんー? まあベッドかソファは占領するね」
「おまえさ。誘ってるって思われても仕方ねーよ、それ?」
「別に俺にそういうつもりはないんだけど、なんでか相手がその気になっちゃうんだよね」
「あのなー」
「密室に二人でいて俺に手ぇ出さないの、修史くらいだよ」
「はあー。……って、中山とか、小暮とかもかよ」
「最後までやってないけど」
「……う、そ。あいつらは普通に友達やってんのかと思ってた。信じらんねー」
「……あんまり追求するなって。大したことしてない」
「ホントいい加減にしろ、おまえ」
「怒るなよ。何でおまえが目くじら立てるんだ?」
楽しそうに聞かれて、逆に答えに詰まる。
「……おまえが、大事だから」
言ってしまってから、何だかすごく後悔した。それは、別に嘘ではなかったのだけれど。
「やっぱさあ。こんなこと……誰にでも体許して、何もかも許すの、おまえにとって良くねーよ。女みたいなリスクはないかもしれないけどさ。もっと大事にしろって、自分のこと」
「おまえが俺を抱かないのは、俺が大事だから?」
「……そうだよ。自分のことしか考えてなかったら、おまえなんかとっくの昔にどうにかしてる」
「してくれて、良かったのに」
「は?」
「なーんてね」
ウソ、と呟いて雑誌に目を戻す。何とかしてくれと、修史は天を仰いだ。
0
あなたにおすすめの小説
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)
推し変なんて絶対しない!
toki
BL
ごくごく平凡な男子高校生、相沢時雨には“推し”がいる。
それは、超人気男性アイドルユニット『CiEL(シエル)』の「太陽くん」である。
太陽くん単推しガチ恋勢の時雨に、しつこく「俺を推せ!」と言ってつきまとい続けるのは、幼馴染で太陽くんの相方でもある美月(みづき)だった。
➤➤➤
読み切り短編、アイドルものです! 地味に高校生BLを初めて書きました。
推しへの愛情と恋愛感情の境界線がまだちょっとあやふやな発展途上の17歳。そんな感じのお話。
【2025/11/15追記】
一年半ぶりに続編書きました。第二話として掲載しておきます。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/97035517)
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる